上半分が損失したモネの「睡蓮、柳の反映」(写真:凸版印刷の発表資料より)

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 国立西洋美術館(東京都台東区)と印刷大手の凸版印刷(東京都千代田区)は5日、印象派を代表するフランスの画家、クロード・モネが描いた油彩画で、上半分が失われた「睡蓮、柳の反映」を、デジタル技術を用いて復元すると発表した。デジタル復元された絵は、今年6月から西洋美術館で開催される企画展にて公開するという。

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 同美術館が所有する「睡蓮、柳の反映」はモネの晩年の大作で、代表的な連作「睡蓮」の中の1作。川崎造船所(現・川崎重工業)の初代社長などを務め、西洋美術品の収集家だった松方幸次郎がモネから直接購入したが、第二次世界大戦中、戦火を逃れるためにフランス国内で疎開させられた後、行方不明となっていた。

 2016年になって、パリのルーブル美術館で約60年ぶりに発見されたが、そのとき、絵は既に上半分が欠損した状態だった。湿気か水によって木枠も失われており、疎開時に劣悪な環境に置かれたのが破損の原因だとみられている。

 西洋美術館は、戦後、松方が収集した美術品「松方コレクション」を保管・展示するために設立されたが、「睡蓮、柳の反映」はコレクションの中でも重要な作品の一つ。またモネが、パリのオランジュリー美術館の「睡蓮」の大装飾画を構想する過程で描かれたとされ、モネの制作プロセスを考えるうえでも、貴重な作品だとされる。破損前に撮影された白黒写真が残されていることから、今回、この写真をもとに絵を復元することになった。

 復元作業では、写真と絵の画像を重ね合わせたうえで、最新のデジタル技術を使って、当時の色を解析。凸版印刷は、これまでも白黒写真をもとにした絵画など文化財の復元に取り組んでおり、同社がこれまで培ってきた高いデジタル解析技術と、美術館が持つ絵画に関する研究成果を融合させて実際の色使いや筆のタッチなどを再現していくという。

 復元された絵は、6月11日から西洋美術館で開かれる企画展「開館60周年記念 松方コレクション展」で公開される予定。企画展は9月23日まで。