写真・朝日新聞

「当時の東映関係者で、A組長のことを知らない人はいないよ。もちろん、ヤクザだってことも知ってる」

 本誌にこう話すのは、俳優の火野正平(69)だ。近年は『にっぽん縦断 こころ旅』(NHK BSプレミアム)でお茶の間を和ませる火野。だが、火野といえば、かつて「最大11股」と報じられた、昭和を代表する色男である。

 1月末に『週刊新潮』(2月7日号)が、元宝塚歌劇団男役トップスター・鳳蘭のマネージャーを務めていた火野の内縁の妻が、金銭トラブルによって鳳の事務所を解雇されたと報じた。火野は『週刊新潮』の取材に、「うちのかあちゃんは絶対に、横領なんて大それたことはしていない」と反論している。

 真相はいまだに明らかになっていないが、本誌は火野の「ヤクザからの借金」についての証言を得た。関西の暴力団組長・A氏(現在は引退)と親しいB氏がこう明かす。

「組長と火野さんのお金の貸し借りが始まったのは、1983年のことでした。組長は東映の役者や関係者と親しく、その関係で火野さんと知り合っていました」

 1983年ごろといえば、内縁の妻との間にできた2人の娘を、火野が認知した後のことだ。交わした複数の借用書を手に、B氏は解説する。

「借用書には貸し主が書かれていません。当時でも、現役の暴力団組長からお金を借りた形にはできなかったので。だから、貸し主の欄は空けてあるのです」

 借用書には、火野の本名である二瓶康一に、「(火野正平)」と併記されている。B氏は、「ニヘイコウイチ」名義の口座から、A組長側の人物への、振込受領書も持っていた。

 金額は、20万円から50万円。貸付金の返済に使われたものだという。火野の本名の名義で債務者となっているほか、火野に近い芸能事務所関係者名義で、火野が連帯保証人になったのものもあった。

「いずれも、火野さんとA組長との間で貸し借りを繰り返していた期間のもの。ピーク時には、火野さんの借入額は1000万円を超えていました」(B氏、以下同)

 本誌が入手した借用書には、100万円を借り、利息が「一カ月に付金六萬円也」と書かれている。年利72パーセントという法外な金利だが、B氏は「善意でお貸ししていましたし、金利はいっさい取っていません」と語る

 A組長やB氏は、『週刊新潮』の報道で、貸付金の未返済分に気づいたという。

「もろもろ返済は進んでいましたが、まだ50万円ほど残債があります。誠意を見せてもらえるといいのですが」

 そして2月7日、本誌記者が火野宅を訪れると、記者を家に上げ、訥々と語り始めた。

--借用書などは、火野さんのもので間違いありませんか?

「カネの貸し借りをした覚えはないけど……。でも、署名は俺の字だ。間違いないよ」

 そして、冒頭に述べた当時のA組長についての話をし、こう続けた。

「ヤクザ映画を撮影していたし、昔はプロデューサーや興行関係者には本職(ヤクザ)と二足の草鞋の人もいた。そのころは撮影所にも、いっぱいヤクザが来ていた。今はダメかもわからんけど、昔は普通のことだったんだ。でも、カネは借りてない」

--(連帯保証人となっている)債務者は、知人ですか?

「借用書にある俺以外の名前は、東映の関係者だ。当時、保証人になってくれと言われれば、断わらないよ。もう引退している俺の個人事務所にいた人の名前もあるし、これは事務所のカネだろう。いずれにしろ、これらのカネには、俺は手をつけてないよ」

--ピーク時には1000万円以上の額になっていた?

「女の問題とかがあって、仕事がない時期もあった。でも、人からカネを引っ張らなくても、なんとかやってた。だから、俺の知らないカネなんだ」

 だが筆跡は、火野は自分のものと認めている。なお、借用書にあった「東映の関係者」について、本誌が東映広報室に確認すると、「弊社としては承知しておりません」との回答があった。

 最後に火野はけろりと、こう話すのだった。

「覚えはないけど、まだ返しきれてないなら、俺が返さなきゃいけないよな」

(週刊FLASH 2019年2月26日号)