白金の夜に波瑠を誘い出したら、洗練された大人の空気と透明感に目が離せなくなった!
きちんとした経験値をもち、地に足ついた大人たちこそ足を踏み入れられる白金。この街に相応しい大人は、と考えた時、ふと知性を感じさせるある女優の顔が浮かんだ。
その人こそ、本誌12月号で表紙を飾った女優・波瑠さんだ。『サバイバル・ウェディング』で3クール連続の連ドラ出演を果たし、忙しい日々を送っている彼女を、白金で注目の新店にお連れすることに。
大人の女性として艶やかさや、凛とした表情を見せる波瑠さんが纏う空気は、間違いなく白金の街に寄り添っていた。

「大人の女性として、白金の夜は経験しておきたい」
しんと静まり返ったレストランの店内には、カメラのシャッター音が響き、かすかにカトラリーの触れ合う音も聞こえた。
撮影したカットをチェックするため、時折、セッションが中断されるのだが、被写体である波瑠さんの手は止まらない。
美しいロゼ色の鴨肉にナイフを入れ、口に運び、顔を綻ばせる。

彼女のプライベートな食事シーンを覗き見していると錯覚しそうになるほど、その一連の動作はあまりに自然なものだった。
「白金の街は、独特の品があって、絵になりますよね。ドラマのロケで来たりしますが、今日のようにお洒落して、本格的なフレンチをいただくことはなかなか……。だから、今がチャンスと、つい夢中になってしまって。とても幸せな時間でした」
波瑠さんは声を弾ませ、屈託のない笑顔を見せてくれたが、無理もない。
2015年放送のNHK連続テレビ小説『あさが来た』でヒロインに抜擢されて以来、彼女は走り続けてきた。今年に関して言えば、3クール連続で連ドラに出演。いわゆる?売れっ子〞だ。
でも、その快進撃は、デビューしてからすぐに始まったわけではない。過去にはオーディションで200連敗。苦しい日々を経験した。

「同期の子が頭角を現す一方、私がいただくのは台詞のない役が多く、始発で現場に行って終電で帰る生活を送りながら、このままでやっていけるのか不安に感じていました。
特に10代後半から20代に向かう時期は、大学にも行かない私は何者かになれるのだろうかと、胸が締め付けられそうになったりして。でも、前を向くしか能がないから、少しでも演技の足しにしようとレンタルショップに通い、月30本のペースで映画を観続けました」
演劇のレッスンを受けたことがない波瑠さんは必死だった。そして、たくさんの役者の演技に触れるうちに、ある事実に思い当たる。それは「正解は決してひとつではない」ということだ。
「どんなに素晴らしいお芝居をしようとも、結局は一人の人間。テクニックとは別の次元で、これまでの生き方が芝居にもあらわれてくる。ならば、自分だったら、その役をどう生きるかということを考えればいい。そう思いました」。
その後波瑠さんはあるベテラン俳優と共演し、大いに学ぶことになる。
「『芝居するときは、こんな顔をしてみせようではなく、そこにいる人の息遣いに耳を傾け、言葉を聞きなさい』。中井貴一さんが教えてくださいました。私はその演技者としての在り方に共感し、以来、どの現場に行っても、それを意識するようになりました」
演技に満点はないし勉強も終わらない。でも、やってきてよかった

だからなのかもしれない、波瑠さんの演技が自然体なのは。最新の主演映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』においてもそうだ。
夢と希望に溢れて一流企業に就職した女性が、系列会社が運営する地方の遊園地に配属されて、理想と現実の狭間で成長していく姿を描いた本作は、SFやアクションのように、奇抜な展開があるわけではない。
そのため、役者の力量が試されることになるが、波瑠さんは、主人公・波平久瑠美としてあるがままにスクリーンに存在していた。
「共演した西島秀俊さんにも助けていただきました。西島さんが演じる『小塚さん』の、くしゃっとした笑い顔は、普段の西島さんのもの。私と一対一のシーンでは、常に私の目を見て、言葉を聞いていてくださっていて、うれしくなりました」
波瑠さんの言うことは、当たり前のようにも聞こえるが、実は意外と難しいのかもしれない。
人は、とかく型を決めたがる。予め計算しておくと安心だからだ。でも、目の前のことに反応する方が、空気が生き生きするのも事実。
そのためには時として勇気が必要にもなるが、インタビューの冒頭から、真っ直ぐこちらの目を見て話してくれる波瑠さんによって、いつの間にか思うままに質問したくなっていた。そこで頭をよぎったのが、彼女の結婚観である。

波瑠さんは今年27歳だ。時代が変わり、社会の在り方が変わり、今や「結婚適齢期」という言葉は死語になりつつあるが、やはり女性は、周囲が結婚し始めると「自分も早く」と焦りがちになる。
まさに、その只中にいるのであろう彼女は、一体、どんな心境でいるのだろうか。
「結婚はしたいですけど」とだけ言って、波瑠さんは口をつぐんだ。どことなく適切な言葉を探しているように見えたが、次の瞬間、きっぱりした口調でこう話し始めた。
「中学時代、高校時代の友達のほとんどが結婚してしまい、これが取り残されるということなのかとしみじみしましたが、それでも、今すぐしたいかと言われたら、そうじゃない。私は仕事を引き合いに出して尻込みすると思います。どこか仕事に憑りつかれているんです」
それというのは、きっと、波瑠さんが今を手に入れるまでにコツコツと下積みを重ねてきたからだろう。努力して手に入れたものほど愛おしい。そういうものではないか。
「この間も母に言われました。『女優はひと握りの人しかできない職業なのに、そのひと握りにあなたが入っているなんてね』って。その通りです。私は取り立てていい素材を持っているわけではありませんから」
それを聞いて思う。彼女は謙虚なのだ。他には真似できない特別な何かを持っていても、決して振りかざすことなく、常に控えめ。波瑠さんの凛とした瞳を見て、この白金の街にぴったりだと、改めて思った。
■プロフィール
波瑠 1991年生まれ。東京都出身。2006年女優デビュー。セブンティーン、ノンノ専属モデルを経験し、15年『あさが来た』でヒロインに。『未解決の女 警視庁文書捜査官』『サバイバル・ウェディング』出演後、最新作に映画『オズランド』(10/26公開)がある。
■衣装
【波瑠さん】コート¥99,000、プルオーバー¥16,000、バッグ¥45,000、バングル¥17,000〈すべてTOGA PULLA/TOGA 原宿店 TEL:03-6419-8136〉
【男性】ジャケット¥98,000〈ビームスF〉、チーフ¥6,800〈エレディ キャリーニ/ともにビームス ハウス 丸の内 TEL:03-5220-8686〉、ニット¥25,000、パンツ¥19,000〈ともにデザインワークス/デザインワークス 銀座店 TEL:03-3573-6210〉、バッグ¥33,000〈ザディレッタント×デザインワークス〉、メガネ¥30,000〈ギャレット ライト/コンティニュエ TEL:03-3792-8978〉
■クレジット
Photos/Akira Maeda@MAETTICO, Styling/Miyu Irie, Yuichi Sato(men), Hair&Make-up/Ai Inuki, Kanae Ito(men), Text/Mio Amari

