独特の発想で新兵器を開発するロシアが7月19日に「ポセイドン」の開発映像を公開した。核弾頭を積んだ原子力推進の大型魚雷だ。新型原潜を改造してそこに積むか、それとも“海底待機方式”か?

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独特の発想で新兵器を開発するロシアが7月19日に「ポセイドン」の開発映像を公開した。核弾頭を積んだ原子力推進の大型魚雷だ。新型原潜を改造してそこに積むか、それとも

発想も、サイズも、そして威力も規格外。ロシアが開発中の新兵器、「大陸間核魚雷」ポセイドンの衝撃的な動画が公開された。

設計図の比率から見ると、直径は通常の魚雷の4倍の約2m、長さは約24m。動力は魚雷の常識を覆す原子力推進だ。軍事評論家の毒島刀也(ぶすじま・とうや)氏が解説する。

「ほぼ無限の動力を生む原子炉は通常の艦船用原子炉の100分の1サイズ。最高時速は100ノット(185キロ、終末時)で、発射された後は最深1000mまで潜り、海底地形に沿ってコースを取ります。

目標へ向け進む最中は慣性誘導が主ですが、較正手段として海底地形のデジタルマップと照合しながら進みます。トマホークミサイルが地形と照合しながら目標に飛翔するのと同じ原理ですね。『水中巡航ミサイル』のようなイメージで、射程は『大陸間』と言ってもいいでしょう」

通常の潜水艦の潜れる深さをはるかに超え、ソナーでも探知困難。水中では衛星による電波も届かない。敵からすれば発射されたが最後、迎撃するのは極めて困難というシロモノなのだ。

しかも、搭載されているのは核弾頭。一部報道によれば、20〜50メガトン級の核弾頭を炸裂(さくれつ)させて津波を起こし、都市を全滅させるとの予測まであるが、毒島氏はこう語る。

「広い海面全体を動かし、津波を起こすには、メガトンクラスの爆発では無理でしょう。むしろ、すぐに完成させたいのならロシアがすでに保有している戦略核の1メガトンの核弾頭を流用すればいい。1メガトンでも広島型原爆の67倍の威力があり、港湾施設がターゲットになった場合、近隣の市街地もすさまじい衝撃波によって壊滅的な打撃を受けることになります」

ただ、この巨大な核魚雷を積むのは、既存の潜水艦の魚雷発射管(直径約53cm)では不可能。公開映像には潜水艦の艦橋後部の上甲板の扉からポセイドンが出てくるCGがあったが、これを実現するにはロシアが建造中の新型原子力潜水艦「ボレイB型」を改造するしかなさそうだ。

一方、毒島氏はまったく別の運用法もあると指摘する。

「これだけ射程が長ければ、わざわざ危険を冒して潜水艦で目標に接近する必要はない。あらかじめ探知不可能な水深1000m前後の"海底発射ポイント"に運搬しておき、待機させればいいのです」

探知されずに発射でき、圧倒的な長射程を誇り、迎撃も困難なこの核魚雷は、世界の軍事地図を根底からひっくり返す可能性をも秘めている。現在、地上および潜水艦に配備されている核弾道ミサイルと、それを迎え撃つMD(ミサイル防衛)体制によって均衡している米露など核保有国同士の核抑止のバランスが、一気に崩れかねないからだ。

この最終兵器(リーサルウエポン)の"チラ見せ"はプーチン流のブラフなのか、それとも本当に実用化間近なのか......?

取材・文/世良光弘