日曜日の朝、次の世代に伝えたい“文学遺産”を作家の小川洋子さんが解説する「Panasonic Melodious Library」。10月23日の放送では、ラドヤード・キプリングの「ジャングル・ブック」(訳:三辺律子・岩波少年文庫)を取り上げました。

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番組で小川洋子さんが語った「ジャングル・ブック」の魅力、名場面をご紹介します。

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19世紀の終わりに発表された、ラドヤード・キプリング作「ジャングル・ブック」と「続ジャングル・ブック」は、インドのジャングルを中心に、そこに棲む動物たちを主人公にした15編の短編小説によって構成されています。今回取り上げた岩波少年文庫版には、その中から“モウグリ”というオオカミに育てられた少年が出てくる8編が収められています。

ジャングルのとても大事な掟に「人間を襲ってはいけない」というのがあります。なぜなら、“人間を殺すと、遅かれ早かれ銃を持った人間がジャングルに押し寄せてくるから”なんです。“人間はもっとも弱く、自分の身を守ることすらできないから、そんな生き物に手を出すのは卑怯だ”とあり、人間ってこういう風に見られているんだなと思いました。「なるほどな」と動物たちに教えられる名場面です。

なぜ(モウグリと名付けられる)人間の赤ん坊が、オオカミの洞穴に連れてこられたのか。それはジャングルの掟を守らないトラのシア・カーンが、人間たちを襲いこの赤ん坊だけが取り残されてしまったからです。その赤ん坊を見た母オオカミが興味を持ち、父オオカミが自分の洞穴に運んできたのです。

母オオカミは人間の赤ん坊を「モウグリ」と名付けます。「モウグリ」とは“カエル”という意味なんですね。小さくてツルツルしているものというオオカミなりのイメージだったのでしょうか(笑)。

母オオカミがシア・カーンからモウグリを守るシーンは父オオカミも唖然とするほどで、強烈な母性をむき出しにして立ち向かいます。母は強しだと思いますね。手助けしないと死んでしまうものを前にしたら、人間でも動物でもそこに与えられた使命を見出して、時には危険も顧みずに自分ができることをする……。こうして生物たちは生き延びてきたんだなと思いました。

この後、ヒグマのバルーや黒ヒョウのバギーラがモウグリの後ろ盾となり、ジャングルの一員として迎えられます。

さらに章が進むとモウグリは、人間の社会に戻って実の母と再会したり、宿敵のシア・カーンと対決したり、廃墟の地下で宝物を発見するなどいろいろな経験を積んでいきます。ですがその中でオオカミにもなれない、人間にもなれない、“自分とは何者なんだ?”という問いをずっと抱えながら成長していくことになります。

ジャングルの掟は“お互いを尊重する”ことに尽きると思うんです。人間の作る憲法よりも、もっと根源的で、都合や時代によって変化する必要がないものなんですね。そういうものの中で、みんな一生懸命に生きています。それが、この「ジャングル・ブック」の魅力でした。

次回、10月30日の放送では、北杜夫の「ぼくのおじさん」(新潮文庫)を取り上げます。

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【番組情報】

タイトル:Panasonic Melodious Library

放送日時:毎週日曜 10:00〜10:30

パーソナリティ:小川洋子、藤丸由華

番組HP:http://www.tfm.co.jp/ml/

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