学生の窓口編集部

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大学生や引越マニア、転勤族にいま、「家具家電付きの部屋」が人気を集めていると聞きます。「快適で安全なひとり暮らし・女性の暮らし」をモットーに活動する不動産アドバイザーの穂積啓子さんは、

「入居期間が限定されている学生さんや単身赴任の人は、家具家電付きの部屋を探す人が多いのですが、何がどう便利なのか、修理の費用は誰が負担するのかなど、条件をあらかじめ確認してください」と言います。詳しいお話を聞いてみました。

■引越費用が節約できるが、好みの家具家電が選べない

――家具家電付きの部屋には、どのような設備が整っているのでしょうか。

穂積さん 一般に、「ベッド」、「机」、「イス」、「ソファ」、「テレビ」、「テレビボード」、「本棚など小物収納棚」、「冷蔵庫」、「電子レンジ」、「ダイニング用テーブルとイスのセット」、「洗濯機」、「カーテン」、「照明器具」です。それに、一般の部屋でも設置されているケースがある、「エアコン」、「シャワートイレ」、「下駄箱」なども付いています。

つまり、食器や衣類、消耗品以外はたいてい揃っていることになります。

――とても便利そうですが、メリットを具体的に教えてください。

穂積さん 何と言っても「引越が手軽」、「引越にかかる初期費用と時間が節約できる」ということです。家具と家電がそろった部屋にすぐに入居し、通常の生活ができるということですから。

また、「退去時の処分品」を考えなくてよい、処分する作業時間や費用が不要なので、次の部屋へ移転する際の「引越費用と手間」も節約できます。

――家具家電付きの部屋の家賃は、一般の部屋に比べて高いというイメージがありますが、実際にはどうでしょうか。

穂積さん 部屋によってさまざまですが、家具家電付きの部屋とは、駅から少し遠い、買い物が不便、築年数が古いなどの理由で入居率が低いマンションの一室をリニューアルし、家具家電付きのサービスを売りにして入居者募集をするケースがあります。

この場合は、家賃は近隣の相場とそう変わらず、お得感があることが多いです。その条件と、家賃や敷金・礼金の金銭的条件と、駅から遠くて不便などのマイナス点をどう考えるかが部屋選びのポイントになります。

一方、「新築、都心にある、駅から近い、部屋は広い」などと好条件がそろい、さらに家具家電付きであれば当然、一般の部屋の相場よりかなり割高になるでしょう。

「家具家電付き部屋の諸条件と必要費用」と、「家具家電を自分で購入した場合の諸条件と必要費用」、また、「その部屋に何年ぐらい住む予定か」、「次の引越の初期費用の想定」を具体的に計算して検討しましょう。

もちろん家賃以外に、敷金・礼金、管理費、築年数、駅までの距離、間取り、日当たり、生活圏の利便性など、部屋の条件を総合的に考える必要があります。

――家具家電付きの部屋のデメリットを教えてください。

穂積さん 「自分の好みの家具家電が選べない」ことです。メーカー、ブランド、材質、機能、色など、自分で買うときにはあれこれ検討するべき要素を生かせず、与えられたものを使うしかない、ということになります。

あと、設備は新品ではないことが多く、「誰かが使ったモノ」を使うことが多くなります。

――実際に暮らしている人から耳にされたデメリットの声があれば教えてください。

穂積さん 最も多いのが、「テレビの大きさ」です。「37インチ以上が希望だけれど、32インチだった」などです。あと、「色」ですね。「好みの色と違うインテリアだ」という人も多いです。部屋のデザインにこだわりたい人は向いていないかもしれません。

■注意! 修理費用を誰が出すかは、契約書の記載が「設備」か「貸与」かによる

――家具や家電を壊してしまったときは、どうすればいいのでしょう。

穂積さん 契約書に「家具家電は設備」と明記してある場合は、借り主が悪意を持って破損する、わざと傷を付けるなどでない限り、「自然に使っていて故障した。傷がついた場合」、これを不動産専門用語で自然損耗(そんもう)と言いますが、家主側の費用負担で修理する、あるいは交換することがほとんどです。

一方で、契約書に、「貸与(たいよ)」、「無償貸与」、「設備外」、「残置(ざんち)物」などと記載されているケースは、修理費用は借り主の負担になります。例えば、自然に使っていた洗濯機が壊れた場合でも、家主が負担するのは撤去(てっきょ)費だけで、新しいものに取り換えることはしません。

――残置物とは、前の入居者が置いていった物品のことですよね。

穂積さん そうです。ガスコンロやエアコンなどが多いのですが、これは説明を受けたときに不要であれば取りはずしてもらうことができます。入居して使用し、壊れた場合の修理や撤去費用は借り主が負担することになりますから注意してください。

――「契約書の記述に注意」とは、学生や引越ビギナーにとっては盲点もあるのではないでしょうか。

穂積さん 契約内容を把握しておかないと、確認不足で修理費用を持たされた、ということになりかねません。

契約書をかわす前に、仲介業者の宅地建物取引士が、『重要事項説明書』という書類を渡し、部屋の使い方や条件について細かく、「重要事項説明」を行います。

そのときに、設備の修理、メンテナンス、入れ替えの費用など、家主と借り主のどちらが負担するかについて、「負担区分表」などという書面で提示されるケースが増えています。契約書の添付書類になっていることが多いのですが、家主や仲介業者によって提出の方法はいろいろで、書面がないこともあります。

「家具家電が壊れて修理が必要になった場合、また修理不可能になって入れ替えが必要な場合は、誰がどう費用を負担するのですか」と、はっきりと口頭と書面で確認しておきましょう。ほかにも、分からないことや疑問があれば、なんでも質問するようにしてください。家具家電付き部屋の契約では、特に大切な確認事項です。

いずれにしても、もしその書面や説明がなければ、説明を受けてメモなど記録をし、退去時まで保管してください。

重要事項説明の時点ではまだ契約にいたっていません。もしも、「家具家電を壊したら借り主が修理すること」などと納得がいかない説明をされたら、印鑑を押さずに、契約を見直すことをお勧めします。契約が成立するのは、重要事項説明を聞いて納得し、その後に契約書に署名捺印した時点になります。

――メリットとデメリット、契約条件がよく分かりました。ありがとうございました。

家具家電付き部屋の場合は、「なぜそういう条件なのか」を確認し、実質的にはどのぐらい得なのかを計算する、その上で、ほかの条件も含めて複数の部屋を比較検討するようにしましょう。

(品川緑/ユンブル)

取材協力・監修 穂積啓子氏。「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引士。コミックエッセイ『不動産屋は見た! 〜部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子 東京書籍)の主人公のモデルとなった。テレビ、雑誌などメディアでも活躍中。