2011年5月、中国環境保護省は『2010中国環境状況公報』(以下、公報)を発表した。これは、中国国内の環境の状況を網羅的に整理したものだ。汚染物質の排出状況や、海洋汚染、森林や生態環境から土地と農村の環境まで、幅広く扱われている。しかし、ここで一貫しているのは、数字による統計的な報告が中心であることだ。

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中国における環境問題と消費者意識 第2回

(1)環境破壊の情報と現実

 2011年5月、中国環境保護省は『2010中国環境状況公報』(以下、公報)を発表した。これは、中国国内の環境の状況を網羅的に整理したものだ。汚染物質の排出状況や、海洋汚染、森林や生態環境から土地と農村の環境まで、幅広く扱われている。しかし、ここで一貫しているのは、数字による統計的な報告が中心であることだ。昨年は何%だったものが、今年は何%まで改善した、環境施設が今年はいくつ増えた、というように。

 数字は確かに科学的な提案の仕方なのかもしれないが、算出の方法やその公平性、正確さが同様に求められるため、安易に信頼することはできない。公報が強調するように、大気汚染が統計上では大きく改善された、排気ガスの排出量も大幅に削減されたという情報は、現実の一解釈でしかないだろう。ここで考えてみたいのは、環境改善の「情報」は暮らしを営む人々の「実感」とどれだけ符合しているかだ。

(2)実感される環境破壊

 サーチナ総合研究所(上海サーチナ)は2011年7月、中国全土3000人を対象にインターネット調査を実施。「あなたが注目している環境問題は何ですか?」という設問に対し、以下のような回答が得られた。

水資源の汚染(89.1%)大気汚染(83.8%)気候変動(77.9%)森林伐採(66.9%)生物多様性の損失(62.9%)その他(12.9%)

 水資源の汚染と大気汚染が飛びぬけて高く、あらゆる世代、あらゆる地域で、90%前後の注目を集めており、全体的に見ても環境問題への関心の高さが伺い知れる格好となった。ただし、この関心がどのような根拠によって支えられているかが重要だ。

 「あなたはこれらの課題について、どこで/どのように実感していますか」という問いに対し、以下のような答えが得られた。それぞれ上位三項目を取り上げたい。

水資源の汚染1.テレビやラジオの報道などで(74.9%)2.自分の身近なところで(71.5%)3.インターネットで(61.9%)

大気汚染1.テレビやラジオの報道などで(75.5%)2.自分の身近なところで(68.0%)3.インターネットで(66.6%)

気候変動1.テレビやラジオの報道などで(75.7%)2.自分の身近なところで(69.8%)3.インターネットで(69.5%)

森林伐採1.テレビやラジオの報道などで(79.4%)2.インターネットで(70.3%)3.本や雑誌、グラフなどの特集で(63.5%)

生物多様性の損失1.テレビやラジオの報道などで(79.4%)2.インターネットで(75.3%)3.本や雑誌、グラフなどの特集で(67.1%)

 おおむね、既存のメディアから情報を得ることで環境問題を認識しているが、水資源の汚染や大気汚染、気候変動では「自分の身近なところで」という答えが多くなった。実感としての環境問題は、改善報告が示す値を踏襲するとは限らないのだ。

 現在、中国における環境保全は政府の政策によるところが大きい。しかし、今後はこれに加え、さらにオルタナティブな選択肢が必要とされるだろう。(編集担当:前田直人・サーチナ総合研究所研究員)