内田梨瑚被告(本人のTikTokより)

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 6月22日、旭川地方裁判所は、女子高校生を橋から転落させ殺害した罪などに問われた内田梨瑚被告(23)に懲役27年の判決を言い渡した。食い違う2人の女の供述のどちらが信用できるかが争われた裁判。内田被告の主張を退け、“舎弟女”の供述を信用できるとした裁判所の判断を検証する。

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「早く落ちろ」「自分で死ねや」

 殺害現場となった神居大橋に防犯カメラはなかった。深夜の現場にいたのは、内田被告とその“舎弟”だった小西優花受刑者(懲役23年が確定)のみ。だが、内田被告と小西受刑者の供述は大きく食い違っており、どちらを信用するかが最大の争点だった。

内田梨瑚被告(本人のTikTokより)

 神居古潭の駐車場でAさんを裸にして土下座して謝罪させ、神居大橋に移動してからの出来事について、小西受刑者が供述した内容は以下だ。

「内田はAさんに対し『もう1回謝ってもらう』と述べて欄干の一番上に座るよう指示。私は嫌がるAさんに対し、内田と共に『早く座れ』と怒鳴り続け、座ろうとするAさんの膝のあたりを押し上げた。Aさんが通路側を向いて欄干に座って謝罪したところ、私は内田からAさんを押す動作を指示され、Aさんの足を上に持ち上げた。怖がったAさんは、欄干から降りてきたが、2人で再度欄干の上に座るよう怒鳴ると、再び通路側を向いて欄干に座った。

 その後、内田は、Aさんの左膝を持ち上げて『欄干の外側に立て』『川の方を向け』と言い、欄干上で川の方を向いて座り直したAさんの身体を、私に指示しながら、2人で後ろから押した。Aさんは欄干の外側に、両手を左右に広げて欄干の一番上をつかんで立ったが、私と内田は、Aさんに対し『早く落ちろ』『自分で死ねや』などと何度も怒鳴りつけた。Aさんは、一度深呼吸をして上体を前に傾けた後、私の視界から消え、Aさんの叫び声と川に落ちた音が聞こえた。その後、私は内田被告から声を掛けられ、神居大橋を立ち去った」(小西受刑者の供述)

Aさんは落とされたのか、自分で落ちたのか

 小西受刑者は、次のように、内田被告が直接手を下したとも語った。

「Aさんが欄干の外側で上体を前方へ傾けた際、内田はAさんの肩甲骨のあたりを両手で押したところ、Aさんが一瞬で視界から消えた。私が橋の下を覗くと、ロープか何かにつかまっているAさんの手が見え、咄嗟に手を差し出したが届かなかった」(同)

 まさに殺害行為そのものの証言である。一方、内田被告は下記の通り全く違う供述をした。

「Aさんを2度目の欄干の上に座らせた際、Aさんは神居古潭旧駅舎側を向いて欄干にまたがる状態になり、小西と一緒にAさんの右手や右足を持ち上げて欄干外側に押し出した。Aさんは欄干から落下したが、橋の外側に付いているロープに捕まり、床板を支えている柱に足を絡ませて、自力で欄干の外側に反り、通路の方を向いて立った。

 Aさんに対し、保護者に連絡を取るよう迫ったが、Aさんが拒み続けたため、欄干の外側に立つAさんを川の方に向き直させた後、橋の通路上にAさんのスマートフォンとAさんから渡された4000円を置いて、小西と神居大橋から立ち去った。

 立ち去る途中悲鳴と音が聞こえたが、石や岩の上に落ちたのであればAさんが戻ってくるかもしれないと考え、駐車場で10分ほどまっていた」(内田被告の供述)

 内田被告は、自分は殺害行為そのものには関わっていない、Aさんが自分で落下したと主張したのである。

内田被告の主張が退けられた2つの理由

 どちらかが“ウソ”をついているわけだが、旭川地裁は小西受刑者の供述の大部分を事実として認定した。

〈小西の前記供述は、被告人だけでなく、小西自身のAに対する暴行、脅迫といった自己に不利益な事柄についても明確に供述しており、自身の責任を被告人に押し付けようとした様子は窺われない。その供述内容は、全体として自然で矛盾する点もなく、被告人と小西による暴行、脅迫の態様に関する供述は、実際の体験ではない虚偽を作出したものとは考え難い具体性を備えている〉(判決より、以下同)

 一方、内田被告の主張については次の2点を挙げて認定できないとした。

〈欄干にまたがっていたAが、欄干から落下した後、被告人の述べるように通路側を向いてロープにつかまり、床板と並行になっている柱に足を絡ませる姿勢になること自体、容易に想定し難い。また、当時17歳の女性であり、摂氏5度前後の気温で小雨が降る中、全裸の状態で神居大橋に連れてこられ、被告人らの暴行等によって衰弱した状態にあったAが、落下の際にロープや柱につかまり、しかも自力で橋の上に戻ってきたというのは、明らかに不合理で考え難い〉

〈被告人と小西は、Aに対し、再三にわたって死ね、落ちろなどと迫り、欄干にまたがるAを欄干の外側で川の方を向いて立たせるという危険な行為に及んでいたにもかかわらず、突如としてAを欄干の外側に置いたまま、Aに現金とスマートフォンを返して立ち去ることにしたというのも不自然である〉

橋から落ちる以外の行為を選択することができない精神状態に陥っていた

 ただし、旭川地裁は、小西受刑者の供述のうち「内田被告がAさんを押して落下した」と直接手を下したとした部分については、〈被告人の関与のみを述べ、小西自身は最後にAを助けようとしたかにも述べる内容〉とし、供述を裏付ける証拠がないなどの理由で認定しなかった。

 そして下記の理由で、Aさんが誤って落下した、もしくは自ら落下したとしても、殺人の実行行為に該当するとした。

〈Aは心身共に追い詰められ、助けを求めることも、被告人らの許しを得ることもできない状況で、欄干に座りその外側部分に立つという危険な行為を強要され、更に死ね、落ちろなどと繰り返し怒鳴られていたのであり、もはや被告人らの命令に応じて橋から落ちる以外の行為を選択することができない精神状態に陥っていた〉

〈被告人らの行為はAをして被告人らの命令に応じて、橋から落下するという死亡の現実的危険性が高い行為に及んだものと評価できる〉

 また、内田被告が「死にたいと言っていたAさんが本気で死ぬ気があるか試すために犯行に及んだ」と殺意を否定している点についても、〈直ちに首肯し難いものである上、被告人が自身の行為はAを転落させる危険性の高いものであるとわかった上で、あえてその行為に及んだことを否定するものともいえない〉とし、殺人の故意を認めた。

デイリー新潮編集部