初出場のワールドカップで森保ジャパンの正GKを託されている日本代表鈴木彩艶(パルマ)。グループリーグ初戦のオランダ戦は再三のビッグセーブで2-2のドローに貢献すると、第2戦のチュニジア戦では4-0の快勝を支え、2試合連続で安定したパフォーマンスを見せた。

 チュニジア戦では相手に枠内シュートを許さず、比較的落ち着いた90分となった。それでも決して満足していない。振り返ったのは前半のロングスローからの場面だ。相手選手と接触しながら片手でパンチングしたが、クリアボールが相手のもとへ渡り、危険なシュートにつながりかけた。

「結果的にはファウルだったけど、あのシーンではもっと高さを出すのか、外に逃がすのか。改善できる部分はあると思う」。無失点で終えたとはいえ、課題を洗い出し続ける姿勢が23歳の成長を支えている。

 チュニジア戦ではもう一つの武器も注目を集めた。前半3分の先制点の起点となったビルドアップ。自陣PA内でボールを保持していた鈴木彩は、キックフェイントで相手の重心をずらしながらDF冨安健洋に冷静にパス。日本はそこからMF鎌田大地、FW上田綺世、MF田中碧と鮮やかにつないで相手DFを崩し、左サイドをえぐったMF中村敬斗のマイナスのパスから鎌田が技ありのシュートを決めた。

「相手がキックモーションに合わせて少し下がる感じがあったので、前に蹴るより確実につなげるなという感覚でパスを出した」。ビルドアップ時に自らプレッシャーを引き受けることにも意義を見いだしている。「あえて相手に向かってドリブルする場面もあった。自分がプレッシャーを受けることで味方に時間ができる。結果的に戦術的な優位につながると思っている」。近年のGKに求められる足元の技術とゲームメイク能力。その役割を高いレベルで体現している。

 ただし、本人が理想とするのはさらに先のプレー。先制点に関して「ビルドアップの起点が自分だっただけ」と言いつつ、「どちらかというと(前半9分のプレーで)僕から一発でロングボールを入れて、上田(綺世)選手がキープしてクロスから得点という形になれば最高だったと思う。そういうシーンこそ自分の武器を生かせていると思う。自分のキックは(相手が)準備していても伸びると思うので、対応しづらいボールだと思う。そういった部分をもっと出して得点につなげたい」と語った。

 守るだけではなく、攻撃の起点として試合を決める一本を狙う。彩艶の視線は常に上のステージを向いている。グループリーグ最終戦のスウェーデン戦では、オランダやチュニジア以上にロングボールを使った攻撃を受けることが予想される。「チュニジア戦でも少しロングボールはあったけど、対応は悪くなかった」と振り返り、「ラインコントロールやサイドの選手の戻りもできていたので、継続してやれば問題ない」と自信を示す。

 FWアレクサンデル・イサク(リバプール)、FWビクトル・ギェケレシュ(アーセナル)という強力な2トップに対しても、特別な対策より準備を重視する。「世界レベルの選手になれば何をするか分からない。相手がどうこうというより、自分が常に準備し続けることが大事」。クロス、ロングボール、そして予測不能なシュート。どんな局面にも対応できる準備を整えながら、日本の守護神はスウェーデン戦に向かう。

(取材・文 矢内由美子)