英紙が一斉バッシング「愚かな若者」 若さ露呈で一発レッド…貴公子に貼られた“戦犯”のレッテル
白熱の死闘を引き裂いた一瞬の報復
4年に一度開催されるサッカーの祭典、FIFAワールドカップ(W杯)。
その長い歴史の中では、輝かしい栄光だけでなく、一瞬の過ちが選手の運命を大きく狂わせた事件も数多く存在してきた。今回は、後にイングランドの象徴となる“貴公子”デイビッド・ベッカムが、若さゆえの愚行で全英から大バッシングを浴びた1998年フランス大会の退場劇を振り返る。
事件が起きたのは、サンテティエンヌで行われた決勝トーナメント1回戦。長年の因縁が渦巻くイングランド対アルゼンチンの一戦だった。
試合は前半から激しく動く。アルゼンチンがFWガブリエル・バティストゥータのPKで先制すると、イングランドもFWアラン・シアラーのPKで追いつき、FWマイケル・オーウェンのゴールで突き放した。それでもアルゼンチンは45分にMFハビエル・サネッティのゴールで追いつき。2-2の同点で折り返す、まさに歴史に残る死闘の様相を呈していた。
しかし迎えた後半2分、ピッチ中央で事態は急転する。パスを受けた当時23歳のMFベッカムに対し、アルゼンチンの闘将MFディエゴ・シメオネが背後から激しくチャージ。ファウルを受けてうつ伏せに倒れ込んだベッカムは、フラストレーションから自身の右足を跳ね上げ、背後にいたシメオネの足を引っ掛けて転倒させてしまったのだ。
この軽率な行為を、主審は目の前で見逃さなかった。ラフプレーを行ったシメオネにイエローカードが提示された直後、報復行為に及んだベッカムには無情にもレッドカードが突きつけられた。
グループリーグ第3戦のコロンビア戦で、美しいFKから代表初ゴールを決めていたベッカム。瞬く間にスターダムを駆け上がるかに見えた23歳だったが、この一発退場で状況は完全に暗転する。
数的不利を背負わされたイングランドは、10人で延長戦まで耐え抜いたものの、最後はPK戦の末に無念の敗退。大会を去ることになった母国の怒りの矛先は、一斉に若き背番号7へと向けられた。
英大衆紙「デイリー・ミラー」は翌日、「10人の勇敢な獅子と1人の愚かな若者」というセンセーショナルな見出しで大々的に報道。瞬く間に全英の“戦犯”へと仕立て上げられ、過酷な猛バッシングを浴びることとなった。
若き日の貴公子にとって、あまりにもほろ苦いW杯デビュー。ベッカムは、のちにFIFA公式サイトの取材に対し「あの退場と、その後の数年間に続いたことは、キャリアの中でも最も難しい時間だった」と語っている。一瞬の感情の乱れが招いたこの事件は、W杯の恐ろしさを象徴する場面として今も語り継がれている。(FOOTBALL ZONE編集部)
