苦労人セレス小林が4階級王者ガメスから王座奪取「俺が世界チャンピオンになるなんて…」きらりと光った職人技のボディーブロー
◆報知プレミアムボクシング ▽激闘の記憶 第14回 WBA世界スーパーフライ級(52・1キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇セレス小林(TKO 10回2分9秒)レオ・ガメス●(2001年3月11日、横浜アリーナ)
挑戦者のWBA世界スーパーフライ級9位・セレス小林(国際)が、プロ30戦目で王座獲得に成功した。4階級制覇のWBA世界同級王者レオ・ガメス(ベネズエラ)に挑んだ小林は、序盤から職人技のようなボディーブローで流れをつかみ、10回にダウンを奪い快勝。2000年8月にWBC世界フライ級王者マルコム・ツニャカオ(フィリピン)と引き分けて以来、7か月ぶり2度目の世界挑戦でベルトを手にした。日本人キラーのガメスから価値ある白星を挙げ、デビュー10年目で大輪の花を咲かせた。
負ければ引退と決め挑んだ世界戦。相手が強打の4階級制覇王者だろうが、小林は初回開始ゴングから手を休めずパンチを出し、覚悟を持って仕掛けていった。
「ボディーを打たなければこの試合は勝てない」
序盤から効果的にボディーブローを打ち込んだ。上半身を絶妙な角度に傾け、左右の拳を相手の腹に食い込ませた。苦しそうな表情を見せるガメスはたまらず下がり、ボディーを守るためにガードが下がる。それを見た小林はガードの空いた顔面に左を打ち込む。確実にダメージを与える試合運びは、職人技を思わせた。
「迫力は思ったよりなかったが、パンチは強かった」と小林は振り返っている。ガメスは過去に横沢健二(三迫)、八尋史朗(帝拳)、戸高秀樹(緑)らをすべてKO(TKO)で下した強打の持ち主。中でも戸高戦ではアゴの骨を折る強烈なインパクトを残していたが、小林はひるまずに打ち合った。7回だった。ボディーブローを受けたガメスは体がくの字になり、表情がゆがむ。チャンスを迎えた小林だったが、タフな王者は9回になると再び前に出て勝負をかける。一転してピンチになった小林だったが、今度は簡単には下がらなかった。
7か月前の2000年8月、WBC世界フライ級王者のツニャカオに挑戦した。スピードがあり、パンチも強い王者と打ち合い、三者三様の引き分け。負けではないが、挑戦者にとって世界戦のドローは王座獲得失敗という厳しい現実を突きつけられる。ラスト3ラウンドを支配されドローに持ち込まれただけに、終盤の重要性を痛感していた。
そして10回、ラストは劇的だった。9回同様にガメスはプレッシャーをかけてきたが、頼みのボディーで流れを引き寄せ、リング中央で放った右フックからの左ストレート。王者がキャンバスに崩れ落ちる。何とか立ち上がったガメスだが、膝をガクガク笑わせ、おぼつかない足取りにレフェリーは試合をストップ。デビューから30戦目、やっと世界のベルトを手にした。歓喜に沸くリングで、小林が笑顔をはじかせ口にした言葉は、今でも鮮明に覚えている。
「俺が世界チャンピオンになるなんて…夢のよう」
人並み外れた努力をした自負はあるが、この言葉こそが小林の本音だ。アマチュア経験はなく高校3年で国際ジムに入門。デビュー戦で判定負けし、日本タイトルは3度目の挑戦で獲得。キャリアとともに実力を積み上げ、自らのスタイルを作り上げていった苦労人。あのボディーブローからの攻撃は、まさに経験から育まれた「小林スタイル」。日本タイトルを4度防衛し、目の肥えた後楽園ホールのファンたちから「これなら次は世界」というお墨付きをもらい、世界戦のリングへとステージを移した。闘争心を前面に押し出し戦うタイプではない。ずば抜けた素質を持ち合わせていたわけでもないが、確かな勝ちパターンを持っていたことが、最大の強みだった。
サラリーマンボクサーとしても注目を集めた。冠婚葬祭を扱う会社に勤務し、リングネームの「セレス」はその会社名から取ったもの。「セレス」を冠にしたリングネームは予想以上の知名度アップにつながり、引退から20年以上たった今でも、本名よりも「セレス」と親しみを込め呼ばれている。
2度目の防衛戦で21戦全KO勝ちのアレクサンデル・ムニョス(ベネズエラ)の挑戦を受け8回TKO負けし、王座陥落。この試合を最後に引退し、翌年の2003年11月、千葉の柏市に「セレス・ボクシングスポーツジム」をオープンすると、元IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑らを育て上げた。現在は日本プロボクシング協会会長という重責も担い、業界のトップに立ち、ボクシング界を牽引(けんいん)している。
◆セレス小林(本名・小林昭司) 1973年2月27日、茨城・岩井市(現坂東市)生まれ。岩井西高3年の時に国際ジムに入門。92年4月にプロデビュー。98年9月に日本フライ級王座を獲得し、4度の防衛後に返上。2001年3月にレオ・ガメス(ベネズエラ)を下し、WBA世界スーパーフライ級王座獲得。1度の防衛に成功。プロ戦績は24勝(14KO)5敗3分け。身長169センチの左ボクサーファイター。
