NHKで日本代表戦の解説を務めた本田圭佑(Getty Images)

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 現在、大きな盛り上がりを見せている『FIFAワールドカップ 2026』。その中で最大の話題となっているのが、NHKで日本代表全試合の解説を務める本田圭佑だ。試合中に放った「うざい」「やば」などの言葉がSNSでトレンド入りし、NHKが特設ページで「本田解説語録」を設けるなど国内で称賛を浴びる一方、対戦相手のオランダメディアからは批判の声も上がるなど、その独自のスタイルが波紋を広げている。なぜ彼の解説はここまで人々を惹きつけるのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

【写真】W杯、日本戦が行われるスタジアムで現地ファンに囲まれる本田圭佑。他、引退後も“バキバキ”な肉体美を維持する本田や4年前に解説を務めたときの本田なども

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 現在、話題の中心はサッカー日本代表が出場している『FIFAワールドカップ 2026』で間違いないでしょう。

 3月に開催されたWBC以上の盛り上がりを感じさせられるのは、NHK、日本テレビ、フジテレビの3局で地上波放送があるからであり、その中で最大の話題となっているのは本田圭佑さん。
 
 本田さんはNHKの日本代表全試合で解説を務めるほか、日本テレビでは「日本戦スペシャルアンバサダー」を担当。4年前のカタール大会ではABEMAでの生配信で解説者を務めネット上で話題になっていましたが、今回は地上波で、しかも公共放送のNHKだけに、どんな語り口になるのか注目を集めていました。
 
 そして迎えた15日早朝の日本代表VSオランダ。試合中に本田さんの放つ言葉がXのトレンド入りしたほか、試合終了直後にNHKの中継内で「本田解説語録」というコーナーが設けられ、盛り上がっていました。
 
  一方で本田さんの解説がオランダ紙のウェブ版に「オランダ代表を侮辱」「茶番」「無知を露呈」などと批判されるなど決してポジティブな状況だけではないようです。

 ここでは国内称賛と海外否定の理由と、他の解説者との違い。引いては、スポーツ中継の解説者をめぐる状況の変化について掘り下げていきます。

本田圭佑の解説は主に5パターン

 まず国内称賛と海外否定という現象について。NHKの特設ページにアップされた「本田解説語録」を見ると、その理由が浮かび上がってきます。

 本田さんのコメントは主に「戦況・戦術の説明」「生放送の臨場感」「嘘のない率直な言葉」「視聴者目線の代弁」「ユーモア」の5パターン。以下、具体的にあげていくと…… 

 戦況・戦術の説明は、「形がちょっとよくない。守備がいいようにスペース使われてる」「サイドで人数かけて、くずせる」「ゴールキックからの形は今のところ一回もよくないかも。(オランダに)はめられてる」「きついところはタケ(久保建英)とか中盤の4枚と上田(綺世)さん」「すばらしい動き出しと、受け手と出してのタイミング。ぴったり」「伊東(純也)さんはジョーカー」。これは解説者としては当然の内容ですが、難易度の高いサッカー用語を使わないところに配慮を感じさせられます。

 生中継の臨場感は、「2022年(カタール大会)のドイツ戦を思い出す」「今は我慢の時間」「(後半開始時に)さあ、始まるよー!」「この数プレーちょっと嫌な感じ」「(ベンチが動きそうなとき)誰?」「そろそろいける気がする。流れがいい(直後にゴール)」。ライト層の視聴者も多い地上波のスポーツ解説では重要と言われるテンションの高さがうかがえました。

 嘘のない率直な言葉は、「11番(ガクポ)がめっちゃうざい」「このFW(マレン)めっちゃうまい」「え!やば!193(cm)のウインガー??」「上田(綺世)さん(シュート)打たれへんか!」「こいつはあかんぞ!」「(日本の)コーチ陣レジェンドいすぎでしょ」。これが本田さんならではの率直なコメントであり、あえて丁寧な言葉ではなく「うざい」「やば」などのフレーズを使うことで選手目線のリアルを感じさせました。

 視聴者目線の代弁は、「マイボマイボ」(マイボールの略)「これなんすか?」(今大会から採用されたハイドレーションブレイクについて)「(GKの鈴木)彩艶さんはあたってる」「(オランダの得点に)うざいわこの1本、ファールにはならへんかー」「(同点に追いついて)デパイを調子に乗って点取ってる時出すから」「日本の団結力は世界トップレベル。オランダ相手に見せてくれた」。解説者として「上から教える」のではなく視聴者と同じ目線で話す姿勢が好感を持たれ、共感を集めています。

 ユーモアは、「オランダはとにかくでかい。トイレでも便器がめちゃ高い」「(日本の選手とぶつかった)レフェリーはイエロー」「きのうホテルでオランダ人と引き分けでええやんって話しといた」。緊張感のある試合のため時には息抜きとなるコメントが必要であり、適度なユーモアが緩急のある中継につながっていました。

地上波でも変わらなかったスタンス

 この中でも、嘘のない率直な言葉と、視聴者目線の代弁は、称賛と批判が紙一重。オランダ戦の「うざい」はサッカー選手としてはホメ言葉ですが、対戦相手から見たら無礼と感じられるケースもあるのでしょう。

 ただ、侮辱ではないことは明らかであり、オランダ側の解説者にも日本に対する無礼な発言があったなど「お互い様」というレベル。実際、NHKが問題視していないことがそれを物語っています。

 いずれにしても、生中継のリスクを避け、無難な戦況・戦術の説明に終始する解説者が多いだけに本田さんの存在は唯一無二。また、コメントのスタンスがネット配信だった前大会とほとんど変わっていないことも支持を得ている理由の1つでしょう。

「オレは地上波でも、配信でも、公共放送でも話すことを変えない」。そんなブレない自分の軸を持っていることが最大の魅力として視聴者に伝わっています。前大会の終了時には解説者を「もうやらない」と宣言していましたが、4年の時を経た「大会目前になって考えが変わった」というだけに、テレビにとっての救世主と言っていいでしょう。

 NHKとしても、予定調和をよしとしない本田さんの起用はリスクがあったはずですが、思い切って任せた決断が光っています。それどころか「本田解説語録」という特集を生中継に組み込み、ネットでも切り抜き記事を作るなどスタッフ側も前のめりなのでしょう。

 さらに本田さんはYouTube動画にも出演して後日談を語ったり、期間中SNSでの発信を続けたりなど、試合当日だけでなく大会全体を盛り上げる役割を担いはじめています。

高橋成美と高木菜那の成功パターン

 最後に、スポーツ中継の解説者をめぐる状況の変化にふれておきましょう。

 2月に開催されたミラノ・コルティナ五輪でフィギュアスケートの高橋成美さんとスピードスケートの高木菜那さんの解説が話題を集めたことを覚えている人も多いのではないでしょうか。2人とも競技の解説や日本人選手への応援に加えて、本田さん同様の嘘のない率直な言葉と、視聴者目線の代弁が称賛されました。

 また、高橋さんは元パートナー、高木さんは妹というように出場選手と親しい関係性だったことも感動を集めたポイントの1つ。その点、本田さんは現役である上に、親交のある日本代表選手もいるなど関係性の近さを感じさせられる存在なのでしょう。

 スポーツ中継は「試合そのものはシンプルに見せて、出場選手に近い人に解説を依頼する」ことがセオリーになりつつあります。テレビ局が視聴率狙いで芸能人を起用する時代は終わり、「競技をいかに楽しんでもらうか」「いかに臨場感ある中継にするか」という本質が求められるようになりました。

 だからこそ本田さんはこれ以上ない人選であり、大会終了まで話題の中心になり続けていくのでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。