ほんの小さな体調不良も認知症に直結する…「貧血の人」「歯周病患者」はなぜ脳の老化が早いのか

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認知症の患者数増加が止まらない。'22年時点で約443万人が認知症患者と推計された。さらに、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年には、実に584万人がかかると見られている。そのときには高齢者のおよそ15%、約6人に1人が認知症となる。

もはや、「脳の老化」は日本人にとって避けようのない難題なのだ。しかし、実は認知症については、その原因となる意外な疾患がある。まずはこうした病気を防ぎ、治療していけば、脳が老いるのを食い止めることができるはずだ。

貧血と認知症の“意外な関係性”

では、どのような病気に気をつければいいのか。最新の研究で明らかになってきているのが、貧血と認知症の関係である。くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤千秋氏が語る。

「今年4月に、スウェーデンカロリンスカ研究所が、世界で最も権威ある医学雑誌の一つである『米国医師会雑誌』に掲載した論文が話題となりました。それは、貧血の人とそうでない人を比べたとき、貧血の人はそうでない人に比べて、実に1.66倍も認知症になりやすいというものです」

なぜ貧血が認知症につながるのか。

「そもそも、脳を含む全身の神経には、髄鞘と呼ばれる、神経を保護して情報伝達をスムーズにする役割を担う組織があります。この髄鞘の維持や修復に必要なのが酸素です。そして、酸素は赤血球の中にあるヘモグロビンを通して運ばれます。

貧血により、十分なヘモグロビンが作られないと、髄鞘の維持・修復に必要な酸素が与えられず、衰えてしまう。脳のなかでも記憶を司る『海馬』は、特に酸素不足に弱い。そのため、貧血の状態が長年続くと、海馬が深刻な酸欠状態に陥り、物忘れが加速してしまうのです」(工藤氏)

歯周病」が認知機能の低下を引き起こす?

歯周病認知症との関わりが指摘されている疾病だ。もともと歯周病は、全身の病気に関わっていて、誤嚥性肺炎、糖尿病、骨粗鬆症などに影響しているといわれており、全身炎症を引き起こす炎症源として危険視されてきた。

「近年、特に注目を集めているのが、歯周病がアルツハイマー型認知症の原因になっている可能性です」と、九州大学歯学研究院歯学部門准教授の武洲氏は語る。

「脳の中にはミクログリアという免疫細胞があります。歯周病によってミクログリアが活性化すると、脳内炎症が起こります。すると、ニューロンに傷をつけてしまい、認知機能の低下が引き起こされると考えられているのです」

実は、若い体であれば、たとえ脳内炎症が起きてもニューロンが保護され、認知機能は維持される。問題は、老化した体内で起きる脳内炎症だ。武氏が続ける。

「実際、私が行った実験では、若いラットと中年のラットでは、同じ全身炎症があっても、脳のなかでは違う現象が起こることがわかりました。

若いラットではたとえ炎症が起こっても、脳内のミクログリア細胞がニューロンを保護する物質を生成します。一方、中年以後になると、同じ炎症でも、脳内のミクログリアはニューロンにダメージを与えてしまうことがわかりました。歯周病による慢性炎症とアルツハイマー型認知症が関連するということです」

視力低下が認知症のリスク因子になる」

視力の低下も認知症に関わってくるので要注意だ。世界的に権威ある医学誌『ランセット』は、'24年に「視力低下が認知症のリスク因子になる」と報告し話題となった。鳥取大学医学部教授で日本認知症予防学会前理事長の浦上克哉氏が解説する。

認知症になる前の症状として、視力低下が必ず起きるというわけではありませんが、目が見えにくくなると、社会的孤立につながりやすくなり、認知機能低下を招きます。本を読むことが好きな人が、視力低下によって本を読まなくなるなど、生活が少しずつ変化してしまう。そのことが、認知機能に悪影響を与えると考えられています」

同様に難聴も、認知症につながってしまう。浦上氏が続ける。

「前出の医学誌『ランセット』は、認知症発症に寄与する割合がもっとも高いのが難聴だとしています。認知症につながる原因はいくつかありますが、なかでもコミュニケーションが減ってしまうことが認知機能に関わってくる。耳が遠くなって人と会うことが減り、結果として社会的孤立につながってしまうのです」

その他に、骨折や高血圧なども認知症を呼ぶ。それを遠ざける第一歩は、自分の体に起きている「小さな異変」に気づくことなのだ。

【後編記事】『なぜ「愚痴や陰口ばかり言う人」はボケやすくなるのか…脳が老いていく人に共通する「怖い習慣」』へつづく。

週刊現代」2026年6月22日号より

【つづきを読む】なぜ「愚痴や陰口ばかり言う人」はボケやすくなるのか…脳が老いていく人に共通する「怖い習慣」