大反響のリズム絵本『パパとパン』誕生の秘密 作者は「親子が一緒に笑える時間を少しでも増やせる絵本になっていたら嬉しいです」
描かれているのは、さまざまな種類の美味しそうなパンと、さまざまな表情のパパだけ。それがとにかく面白い!と発売たちまち評判になっている絵本『パパとパン』。子どもと、孫と、リズムに合わせて、パン♪パン♪パパ♪パン♪と声に出してページをめくれば、ハマること請け合いの一冊はどのように生まれたのか──。
自然と早口になるくらい、リズムがどんどんついてくる
「幼稚園に通う娘と一緒に読んだら、もう1回読んで、もう1回読んでって、すごい食いつきにビックリしました。最終ページの、パンの名前が書いてあるところでは、『パパはどれが好き〜? いっせーのーで!』って指をさして楽しんだりもして。これから何度も読むうちに、段々リズミカルに読めるようになっていくのか、娘の成長も楽しみです」(37歳・男性)
『パパとパン』は、20種類以上のパンと、パパ、それからパパの形をしたパンなどが出てくる。リズムに合わせて読もうとすると、これが大人でも案外難しく、クセになる味わいがあるのだ。
絵本をつくる人、届ける人、読む人が集まって絵本を楽しむイベント「えほん博」(5周年となる今年は11月7、8日に東京・代官山で開催)を立ち上げた代官山 蔦屋書店・キッズコンシェルジュの瀬野尾真紀さんは『パパとパン』についてこう語る。
「とても楽しい絵本だと思います。自然と早口になるくらい、リズムがどんどんついてくるところがよかったです。また、大好きな名作へのオマージュも感じられて、これはみんな好きだよねと思いながら拝見しました」
作者のサニーブックスという名前は今回、絵本作家としてデビューするにあたって付けた、デザイナーのケイモトシュンスケさんと、イラストレーターのけいもとひとみさんのユニット名だ。数々の受賞歴もあるデザイナーのケイモトさんはなぜ絵本を作ったのか。
「デザインの仕事は基本的に誰かからのご相談によって始まることが多いのですが、そうではない形で何か作ってみたいという気持ちはずっとありました。そんな中、子どもが生まれて毎日のように絵本を読むようになり、自然と、自分たちでも絵本を作りたいなと考えるようになりました」
「文学フリマ」出店から商業出版へ──何度も描き直した
そしてケイモトさんは昨年11月に開かれた文学作品の展示即売会「文学フリマ東京」で『パパとパン』のプロトタイプとなる絵本を販売。それが今回の出版につながった。
「本作のアイデア自体は、実は数年前から頭の中にありました。ただ、誰かに急かされることもない中で、ずっと後回しになってしまっていたんです。
そこで『これは締め切りを作らないと永遠に完成しない!』と思い、文学フリマに出店することを決めました。細かいスケジュールを検討する前に、とにかく申し込んでしまおうと思ったんです。その結果、案の定ギリギリの進行になりましたが、イベント前日になんとか形にすることができて、ホッとしました。
見本を読んで笑ってくれる子どもたちがいて、まずはそれが嬉しかったです。また、小学校で読み聞かせ活動をしているかたが『これ、絶対盛り上がります!』とおっしゃってくださったのも、とても印象に残っています。
もともと、いつか商業出版につながったらいいな、くらいの気持ちはあったのですが、今回出版させていただくことになった小学館さんを含め、複数社の編集者さんから声をかけていただけたことは、大きな励みになりました」
「文フリ」で販売した『パパとパン』プロトタイプは28ページ。それを32ページに増ページし、デザインも絵も刷新した。
「文学フリマの時は、とにかく間に合わせることに必死で、構成も絵もデザインも『まだまだできることがあるな』と感じていました。なので、せっかく商業出版の機会をいただけたからには、できることは全部やろうと思って、一つひとつ見直していきました。
特に力を入れたのは、最後まで飽きずに楽しめる流れを作っていったことです。絵についても、『もっと美味しそうに』『もっと楽しそうに』と考えながら、何度も描き直しました」
子どもたちがパンに親しむきっかけになる素敵な一冊
一般社団法人パン好き協会の会長で、毎年4万人が来場する日本最大級の「パンマルシェ」(次回は11月3日に開催)を主催する石臥博代さんも、描かれた美味しそうなパンに魅了されたひとり。
「リズム感が心地よく、思わず声に出して読みたくなる素敵な絵本ですね。パン好きの私としても、とても楽しく拝見しました。子どもたちにもパンに親しむきっかけになる素敵な一冊だと感じました」
来る父の日のプレゼントにもオススメの一冊。ケイモトさんは読者にこうメッセージを送る。
「親子で声に出して『遊ぶように』読んでもらえたら嬉しいです。右ページの文字を読むのもいいですし、左ページの絵だけを見ながら読むのもオススメです。
あと、これは大人目線の話なのですが、読み聞かせって幸せな時間である一方で、毎日だと大変な日もありますよね。僕自身、元永定正さんの名作『がちゃがちゃ どんどん』など、読んでいる大人も楽しくて、気負わず読める絵本にたくさん助けられてきました。なので、本作も、親子が一緒に笑える時間を少しでも増やせる絵本になっていたら嬉しいです」
※女性セブン2026年7月2日号
