「毎日”発毛剤”を塗り込む男性」に専門医が抱く”嫌な予感”…薄毛治療で「時間とお金をドブに捨てる人」の正体

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「発毛剤」を続けても変化がない人

日本の成人男性におけるAGA(男性型脱毛症)の発症頻度は、およそ3割に上るとされている。年齢を重ねるごとにその割合は増加し、30代から50代のビジネスパーソンにとって、薄毛の進行は決して他人事ではない深刻な悩みだ。

そうした薄毛対策の第一ステップとして、真っ先に名前が挙がるのが「ミノキシジル製剤」である。外用薬はドラッグストアで手軽に購入できることもあり、AGA対策の代名詞として広く認知されている。

ミノキシジルは医学的にも有効性が認められている治療薬であり、薄毛に悩む人にとって有力な選択肢のひとつである。

一方で、どれほど評価の高い薬であっても、すべての人に同じように効果が出るわけではない。実際に、「ずっと使っているけれど、思ったほど変化を感じない...」と悩む人もいるだろう。

遺伝子関連医療に精通し、日本初のミノキシジル反応性検査を開発したヒロクリニックの岡博史院長は、臨床現場の実情をこう語る。

私のクリニックの毛髪外来にも、『とりあえず発毛剤を数ヵ月間、毎日真面目に塗って試してみたけれど、一向に変化を感じない』と駆け込んでくる患者さんが非常に多いです。実はミノキシジルには、明確に『効く人』と『効かない人』が存在します」(岡博史院長)

もとは血圧を下げる薬だった「ミノキシジル」

誤解のないように明記しておくが、ミノキシジル自体の発毛効果が疑わしいわけではない。むしろ、医学的なエビデンスは極めて強固だ。

日本皮膚科学会が定めた「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」において、ミノキシジル外用(5%)は最高ランクである「推奨度A(行うよう強く勧める)」に位置づけられている。国(厚生労働省)が第一類医薬品として認可しており、その発毛効果は科学的にしっかりと立証されている成分である。

ミノキシジルはもともと、高血圧の患者さんに向けて血圧を下げる薬(降圧剤)として開発されました。しかし、治療の過程で『毛が生えてくる』という現象が確認されたため、AGA治療薬として転用された歴史を持っています」(前出の岡院長)

それほどまでに信頼性が高く、国も推奨する成分でありながら、なぜ効果に著しい個人差が生まれてしまうのか。その答えは、成分が頭皮で“活性化されるかどうか”にかかっている。

ミノキシジルが毛根に直接作用して発毛を促すためには、頭皮に存在する「硫酸転移酵素(スルホトランスフェラーゼ)」の働きが不可欠となる。

外から塗布したミノキシジルは、そのままでは十分に機能しない。この酵素の力によって「ミノキシジル硫酸塩」という活性型に変換されて初めて、本来の強力な発毛効果を発揮するメカニズムになっているのだ。

この硫酸転移酵素の働きには、大きな個人差があります。頭皮に酵素が十分に存在し、活発に動いている人に対しては、ミノキシジルは劇的に効きます。一方で酵素が少ない、あるいはほとんど働いていない人の場合、どんなに熱心に薬を塗り続けても成分が活性化されません。いわば頭皮のうえで薬が『留守番』をしている状態になってしまい、発毛には至らないのです」(同前)

発毛剤が効く人は4割だけ?

加えて、この酵素の差は一部の人だけに見られる特殊なものではない。国内外の研究データや、検査機関で蓄積された統計からも、“ミノキシジルが効きやすい人と効きにくい人”が分かれることが見えてきていると岡院長は言う。

私たちは独自の検査手法を開発し、東京衛生検査所で実際に多くの被験者のデータを集めて検証を行いました。その結果、海外の論文データと同様に、ミノキシジルがしっかりと効く、つまり酵素が十分にある人は、全体の約40%に留まることがわかっています。裏を返せば、残りの約60%の人は、体質的に薬が効きにくい状態にあるということですね

半数以上の男性にとって、ミノキシジル外用薬は本来のパフォーマンスを発揮できない可能性がある。発毛効果を実感するまでには、通常3ヵ月から6ヵ月程度の継続が必要とされる。

しかし、そもそも成分を活性化しにくい体質の人が毎日欠かさず薬を塗り続けても、期待した結果につながらないことがある。

これは毎日の努力や、正しい使い方ができているかどうかだけの問題ではありません。生まれ持った体質、すなわち遺伝子の差が関係しています。効きにくい体質の人が『もっと長く使えば生えてくるはず』『塗る量を増やせば解決するのでは』と粘っても、結果が出ないままコストと時間を大きくロスしてしまう可能性があります。薬液自体も決して安価ではないため、無駄な投資になってしまうのは非常にもったいないことです」(同前)

最高評価の治療薬であっても、体質に合わなければ十分な効果を感じにくいことがある。それでは、自分が「効きやすい体質」なのか、それとも「効きにくい体質」なのかを、本格的な治療を始める前にあらかじめ知る術はないのだろうか。

昨今は、こうした「体質差を事前に把握するための検査」という選択肢も出てきている。

後編『抜け毛の進行が明白なのに「発毛剤一択」…発毛ばかりを急ぐ人が忘れている《医学的な王道》』では、自分の体質を知るための「遺伝子検査(酵素検査)」の仕組みと、ミノキシジルが効きにくい体質だった場合にどんな選択肢があるのかを詳しく見ていく。

【つづきを読む】抜け毛の進行が明白なのに「発毛剤一択」…発毛ばかりを急ぐ人が忘れている《医学的な王道》