トロフィーの前でガッツポーズ姿のガッツ石松さん(2023年)

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 元ボクシング世界チャンピオンから俳優・タレントに転身し、長く人気を博したガッツ石松さんが、6月2日、肺炎のため亡くなった。76歳だった。葬儀は遺族の意向により、近親者のみで執り行われたという。

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 ガッツさんは1974年、アジア人として初のWBC世界ライト級チャンピオンに輝き5回防衛。「ガッツポーズ」で一躍人気となり、引退後は芸能活動を本格的にスタートさせ、俳優としても活躍した。タレントとしては、バラエティ番組で「OK牧場!」「ラッキーセブンの3」などの発言を連発し笑わせてくれた。

 そんなガッツさんの晩年について、「NEWSポストセブン」はこれまで複数回報じてきた。2023年9月、取材班がガッツさんのいる事務所を訪ねると、椅子に腰を下ろした姿はずいぶん痩せているようにも見えた。

 今回は訃報に際し、その内容を再掲載する(登場人物の年齢などは掲載当時のママ。『NEWSポストセブン』2023年9月5日配信分より)。【前後編の前編】

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 そう、確かに痩せたね。やっぱり70歳を過ぎると自然とね。子どもの頃は家が貧乏だったから、食えるようになってからは美味いものをたくさん食ったけど、もうそんなにあれもこれもたくさん食いたい、とは思わなくなった。その日のコンディションと相談しながら、無理して食ったりしない。でも、年とって太るより健康にいいんじゃない?

 大病はないよ。したことない。盲腸ぐらいだな。女房が岩手の実家で最初の子(長女)を産んだとき、当時、私は東洋ライト級チャンピンでね、ノンタイトル戦を終えて駆けつけたら、盲腸が暴れ出したので入院したんだよ(笑)。病院はよほどじゃないといかない。検診? なんのために行くの? 自分の身体は自分でよくわかってる。昔から自分が自分のトレーナーだから、自分で調整する。コンディションが悪くなっても、休んだりすれば自然と治っていくから。

 今は毎日、のんびりしてるよ。名前がガッツさんだからって無理して、ガッツガッツ仕事する必要ないと思うし。YouTubeの出演依頼はちょくちょくあって、「来る者拒まず」だから仕事がくればやる。でも、YouTubeはよくわからないからなぁ(笑)。

テレビを見ながら、小鳥の"ピーちゃん"相手にブツブツと

 じゃあ、毎日何をしてるかっていうと、新聞を読んでテレビを見てる。以前は本をよく読んだけど、今は朝刊は朝日新聞、夕刊は読売新聞をすみずみまで読む。新聞のテレビ欄を見て、見たいテレビ番組があったらチェックする。衛星チャンネルでやってるドキュメンタリー番組なんかが大好きだね。戦争ものとか社会問題についてのドキュメンタリー。あとはニュース。一時は政治家を目指したぐらいだから、社会問題には今も関心がある。

 ボクシングの試合? テレビで中継してたら観るけど、インターネットの配信だと観る方法がわからないから観ない(笑)。そういう年配の人も多いんじゃない? 井上尚弥の4階級制覇はすごいけど、世界でもライバルになるような、これって選手が出てきてないんじゃない? 昔はもっと次から次へとチャレンジする選手が出てきてたけど。周りがもっと挑戦しようとしないといけないな。井上尚弥を先頭にチャンピオンたちにはもっともっとボクシング界を盛り上げていってほしいな。

 リビングでテレビを見ながら、1人ブツブツ言いながら。"ピーちゃん"って名付けた小鳥を飼ってるから、「ねぇ、ピーちゃんもそう思うだろ?」なんて話しかけながら(笑)、缶ビールを1本、調子がいいと2本呑んだり、その後、水割りを呑むこともあるけど、酒もそんなにはもう呑まないね。今は外で呑むことはしない。何があるかわからないから。何かあると、全部悪いのは私になるから。それをよくわかっているから、外では極力呑まないようにしてる。

人の目が気になってあまり外出せず

 女房は元気だよ。女房は女房で自分専用のテレビを見ながらビールを呑んでるね。若い頃は何回かゴルフに連れて行ったけど、今は夫婦一緒に何かを楽しむ、なんてことはないね。仲良くしてるけど自分は自分、女房は女房。18歳の頃、4歳年上でデパートに勤める女房と出会ったときは、「女優の梶芽衣子に似てる!」と一目惚れ。当時、梶芽衣子さんの大ファンだったからさ。いろいろあったけど、仲良くする秘訣は女房に余計な口出しをしないことだね(笑)。

 子どもたちもそれぞれ。長女、長男、次男の3人がいるけど、ボクサーにはならなかった。孫は長女に男の子、長男に男の子と、女の子で2人。合計3人。みんな近所に住んでるから一緒に外食に出かけたりはするけど、遊園地に連れて行くとか、一緒におもちゃで遊ぶとか、そういうことはしないね。孫はすごくかわいいけど、自分の子の子育ても女房に任せていたから、幼い子らとどういう遊び方をしたらいいか、わかんないよ(笑)。

 少し前は散歩に出てたけど、最近はあまり出なくなったな。大好きなゴルフもたまに。暑いし、腰が疲れるから。腰の具合と相談しながら、無理にはやらない。それに、外へ出ると知らない人にジロジロ見られたり、指を指されるのが好きじゃないんだよ。顔が知られている人はみんなそうじゃない? 帽子被って、伊達メガネかけて、マスクして、少しでもわからないようにして出るけど、やっぱりわかっちゃうからね。

故郷に大きな墓を作って終活も

 20年ぐらい前、知り合いのお墓屋さんに頼まれて、思い立ったが吉日で、「ガッツ家の墓」を建てた。ふるさとの栃木県鹿沼市にデカイのを。

 亡くなったらどこにいくか、わからないのは安心できないな、と思ってさ。終活だな。墓にはグローブとチャンピオンベルトのレプリカとか、「親孝行してるかい」って私の言葉を彫った石もある。それに賽銭箱と名刺入れもあるんだけど、まだ誰も入っていないのに、賽銭や線香をあげに来る人がいて、今から観光名所になってるよ(笑)。

(後編に続く)

取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫