イライラやストレス疲れを避けるにはどうしたらいいのか。順天堂大学の小林弘幸教授は「朝の服選び、早口、就寝前の食事など、自律神経を乱す習慣を改めることが大切だ。イライラを軽減させる家事もあるので参考にしてほしい」という――。

※本稿は、小林弘幸『自律神経が整えば体の不調は消える』(ベスト新書)の一部を再編集したものです。

■前日の服選びが朝のイライラを防ぐ

朝の時間帯にドタバタしないことが、自律神経の安定にはとても大事。そのためには、着ていく服を、前の晩に用意しておくようにしましょう。

着ていく服に迷うのは、だいたい天気の悪い日か季節の変わり目。

「ずいぶん降っているな。このスーツだとズボンの裾が汚れたときに目立つな。遅刻しそうだけど着替えるしかないか」
「なんか、ずいぶん寒くなりそう。でも、厚手のジャケットはどれもしわだらけだ。ああ間に合わない、どうしよう」

こんなことで朝の大事な時間を使い、イライラしたまま家を出るのは最悪です。

写真=iStock.com/Khosrork
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Khosrork

いまは、インターネットでも簡単に天気予報がチェックできますから、前の晩に適切な服や靴を選び、揃えておきましょう。もちろん、鞄の中もチェック。予定を確認して必要な物は整えておきましょう。

ちなみに、私はここ数年、仕事の場では「ワイシャツは白」と決めています。スーツはたいてい黒です。日によっていろいろ変わる予定に合わせ、着ていくものを考えるのが面倒だからです。この組み合わせなら、どういう場に出向いても違和感がありません。

だから、クローゼットの中は似たような黒いスーツがずらっと並んでいます。

■自分のルールを決めて服選びに迷わない

私は、日々のさまざまな事柄を「考える必要のあること」と「考える必要がないこと」に分けています。仕事をはじめとした重要な事柄はじっくり考えますが、服装はきちんとしていればいいことであり、それを考えるため時間を使いたくないのです。

それに、白いワイシャツと黒いスーツなら、どんなネクタイでも合います。ネクタイはいろいろ替えたいので、ますますこの組み合わせが便利に思えてきます。

天気の悪い日は、どうしても気分が落ち込みがちになるので赤系など明るい色のネクタイを選ぶようにしています。鏡に向かってそれを締めているうちに交感神経が上がり、やる気のスイッチが入ります。

逆に、暑い日や落ち着いて過ごしたいときにはグリーンやブルーが使われているネクタイを選ぶことが多くなります。

服選びはルールを決めて、前日に済ませましょう。

■急ぐよりも諦める方が仕事に集中できる

1日のうちには、たいていいくつかの予定が入っています。しかし、なんらかのアクシデントが起きれば、それらをすべてこなすことはできません。

たとえば、午前10時に取引先に納品に行き、お昼の12時には上司とのランチミーティングが入っていたとしましょう。そのミーティングでは、提出する企画の概要を説明するつもりでいます。

ところが、取引先で納品のミスが見つかり、それに対応するために思いのほか時間がかかりそうな気配です。

「まずい。ミーティングに間に合わないかも。いや、急げば大丈夫かな」

こんなときは、早々にミーティング出席をあきらめましょう。そのほうが、イライラせずに取引先への対応に集中できます。

そして、一刻も早く上司にキャンセルの報告をします。早くから連絡があれば上司もほかの予定を立てやすいですし、取引先との仕事を大事にしていることも理解してくれるでしょう。

■「できなかったこと」への未練はムダ

最悪なのは、「なんとか間に合うかも」とぎりぎりまで引っ張って、結局間に合わないというパターンです。取引先からは「なんだか、心ここにあらずだな」という印象を持たれますし、上司には「だらしないやつ」と思われてしまいます。

こうしたケースに限らず、私たちの日常には、思うように物事が運ばないということがしょっちゅう起きます。

自信があったのに思わぬ失敗をしてしまった。
誤解を解きたいのにわかってもらえない。

写真=iStock.com/pain au chocolat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pain au chocolat

こんなとき、「もう1回チャンスがあれば」「できることならなんとかしたい」などと未練たらしく考えます。しかし、どうにもならないことはどうにもならない。それについて悶々(もんもん)と考えるのは、ムダの極致と言えます。

さっさとあきらめて、次の行動に移りましょう。そして、そこで新しい結果を出すことに尽力しましょう。

■ゆっくりと話せば自律神経が整う

人は、怒りに突き動かされていると、どうしても早口になります。

こういうときは、交感神経が異常に高くなっていて、呼吸も浅く短くなります。血圧が上がって血液もどろどろ。心身にとって非常によくない状態です。それに、見た目もみっともない。ヒステリックにわめき散らしているさまは、決して格好いいものではありません。

普段から、穏やかな気持ちで過ごすために、ゆっくりと話すクセをつけましょう。それだけで自律神経が整い、怒りと無縁になります。

ゆっくりと話せば、呼吸も深くゆったりしたものになってきます。それによって副交感神経が高まり、リラックス状態に入れるのです。

ゆっくりした話し方には、ほかにも得することがいっぱいあります。

思慮深く見えるので、仕事での信頼感も増します。がつがつした感じがなくエレガントに見えます。調子に乗っての「ぽろっと失言」がなくなります。考えて話すので、ポイントを絞ったわかりやすい説明ができます。

写真=iStock.com/west
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■プレゼンは最初の一言をゆっくり話してみる

これまでずっと早口できた人がそれを直すには、話の「出だし」が重要。最初の一言を、自分が思っているよりもはるかにゆっくりめに話してみましょう。その声が自分の耳に入ることで「あ、ゆっくり話せているな」と確認でき、その後もペースが保てます。

逆に、最初の一言を早口でやってしまうと、そのこと自体に慌ててしまってなかなか修正がききません。

そのまま早口でしゃべっていれば、呼吸が浅くて酸素がまともに取り込めないので頭の回転も鈍ってきます。言葉数が多い割には「たいしたことを言っていない人」になってしまうのです。

大事なプレゼンなどはもちろんのこと、普段から友人とおしゃべりするようなときでも、「ゆっくり話す」を意識しましょう。

■皿洗いにはストレス解消効果がある

2015年にアメリカ・フロリダ州立大学のアダム・ハンリー博士が非常に興味深い研究発表を行いました。(*1)

小林弘幸『自律神経が整えば体の不調は消える』(ベスト新書)

みんなが嫌うはずの「皿洗い」に、著しいストレス解消効果があることがわかったというのです。ただし、気持ちを集中させ、フロー状態になってやるのがポイント。不承不承ではダメなのです。

博士は、51人のグループを2つに分け、一方のグループには「皿洗いの手順だけを書いた指示書」を、もう一方のグループには「気持ちを込めて皿洗いをするための指導書」をそれぞれ読ませてから皿洗いをさせました。

後者が読んだ指導書にはこんな内容のことが書かれていました。

「皿洗いなんてつまらないと思わず、自分が皿洗いしていることをしっかり意識し続けること。立って皿を洗う自分は素晴らしい。自分の呼吸、存在、行動を感じよう。すると、自分がふわふわと周囲に流されている存在ではないと思えるはずだ」

そして、皿洗いの前後の気分の変化を測定すると、後者にのみ「いらだち」の感情が軽減する効果が見られたというのです。

(*1) Hanley, A.W., Warner, A.R., Dehili, V.M. et al. Washing Dishes to Wash the Dishes: Brief Instruction in an Informal Mindfulness Practice. Mindfulness 6, 1095-1103 (2015). https://doi.org/10.1007/s12671-014-0360-9

■皿洗いが“休息”になるかどうかは捉え方次第

このことから博士は、皿洗いなどの単純作業でも、はっきりした目的意識を持って臨めば精神的にいい効果があり、幸福感や満足感が得られることがわかったと報告しています。

どうですか? 皿洗いもやり方によってはいい休息になるのです。

家に帰って台所のシンクに汚れた食器が積んであったら、「ラッキー」と思いましょう。テレビの前に座り込んでいないで、気持ちを込めて1枚1枚洗いましょう。そんな自分自身の存在や、シャボンや水の手触りも楽しみましょう。そして「きれいになっていくのは、気持ちいいなあ」と実感してください。

写真=iStock.com/gilaxia
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gilaxia

「うわ、嫌だ。皿洗いなんて大嫌い」と思っていたらますますイライラしていきます。

同じ作業であっても、あなたの考え方次第で、大きなストレスの原因にもなるし、休息の時間にも変えられる。

これは、大真面目な研究が明らかにしていることなのです。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部特任教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。
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(順天堂大学医学部特任教授 小林 弘幸)