(※写真はイメージです/PIXTA)

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内閣府の調査によると、60歳以上が働く理由は「収入のため」が過半数を占めますが、経済的なゆとりがある層ほど、やりがいや社会とのつながりを求めて働く実態がうかがえます。貯蓄6,000万円と年金月24万円で、「完全リタイア」を果たしたマサキさん(仮名・65歳)も、半年後にはある“虚無感”に襲われました。お金の不安はないはずが、「月8万円の警備員アルバイト」として再び働き始めた理由とは。

「毎日が日曜日」は半年で限界…完全リタイアを遂げた65歳男性の憂鬱

今年、中堅メーカーを定年退職したマサキさん(仮名・65歳)。現在は妻と二人で暮らしています。夫婦合わせた年金は月に約24万円。現役時代の貯蓄と退職金を合わせた金融資産は約6,000万円あり、老後資金に不安はありませんでした。

「これからは老後を存分に楽しむぞ」

マサキさんは会社の再雇用制度を利用せず、完全リタイアの道を選びました。最初の数ヵ月は長年の労働で溜まった疲れを癒やすようにのんびりと過ごし、妻と旅行にも出かけました。

しかし、半年もすると「毎日が日曜日」な生活には、すっかり飽きてしまったといいます。

「趣味といっても毎日やるものではないですし、家でテレビを見て過ごす時間ばかりが増えました。生きがいみたいなものが徐々に薄れてきて、漠然とした不安を感じたんです」

本当にほしかったのは社会とつながる「自分の居場所」

「少しでいいから、もう一度社会と関わりたい」と考えたマサキさん。求人誌で見つけたのが、近所にある私立大学の「施設警備員」のアルバイトでした。

週に3日ほど、日中の時間帯にキャンパス内を巡回したり、正門で来訪者の案内をしたりする業務です。過度な肉体労働はなく、月にすれば8万円ほどの収入になります。

「妻からは『お金に困っているわけじゃないのに、わざわざ働かなくても』と心配されましたが、生活費を稼ぐためではありません。自分に『行くべき場所』と『役割』がほしかったんです」

月8万円のアルバイトで見つけた、お金に代えがたい「やりがい」

実際に大学での業務を始めてみると、マサキさんの生活は変わりました。朝、正門に立っていると、登校してくる学生たちが挨拶をしてくれます。道に迷っている受験生や保護者を案内し、「ありがとうございます」と感謝されることも日常茶飯事です。

若者たちの活気に触れながら、自分が社会の一部として機能しているという実感が、退屈だった毎日に心地よいメリハリをもたらしてくれました。

稼いだアルバイト代は、週末に妻と行くちょっと豪華なランチ代、孫たちへのランドセル代、お祝いのプレゼント代などに、気兼ねなく使っているといいます。

十分な老後資金があるからこそ、目先の生活費に縛られず、「やりがい」だけを求めて働くことができる。マサキさんの充実した表情は、お金だけでは決して手にできない「社会における自分の居場所」の大切さを物語っています。

なぜ経済的にゆとりのあるシニアほど「働く満足度」が高いのか?

マサキさんのように、十分な老後資金がありながら働きに出るという選択は、データから見ても「人生の満足度を高める合理的な行動」であると推測できます。

内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、60歳以上が収入を伴う仕事をしている主な理由として、全体では「収入のため」が55.1%と半数以上を占めますが、マサキさんのような金融資産「5,000万円以上」に限ると、39.4%に低下しています。このことから、お金に余裕がある層ほど、生活費以外の目的(やりがいや健康、社会とのつながりなど)を求めて働く実態がうかがえます。

さらに注目すべきは、経済的な余裕が「仕事の満足度」に直結しているというデータです。同調査において、現在の仕事に「満足している(満足している+やや満足している)」と答えた割合は全体で60.4%ですが、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」層では84.2%に増加しています。生活費のために仕事を我慢して続ける必要がなく、マサキさんのように「やりがいを感じられる仕事」を選べることが、この高い満足度を生み出していると推測できます。

完全リタイアによる「毎日が日曜日」は一見すると羨ましく思えますが、社会との接点や役割を失い、孤独感を深めてしまう側面もあります。お金の心配がないからこそ、目先の収入に縛られずに「自分の居場所と役割」を再構築し、生きがいを手に入れたマサキさんの選択は、豊かな老後を送るための一つの正解を示唆しているといえるでしょう。

[参考資料]

内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」