バーバリー 目指す「わかりやすさ」。専門店化と水着や運動分野への挑戦

記事のポイントバーバリーはスカーフバーやトレンチ専門売り場を通じ、「カテゴリー別専門店」戦略を推進している。コーチ流の再建手法を参考に、伝統を「買いやすいラグジュアリー」へ再編集している。フンザ・ジー協業やアクティブウエア展開、AI接客導入で新たな購買接点を拡張している。
バーバリー(Burberry)の再建に向けた取り組みは、コーチ(Coach)の戦略に似ているといえるだろう。すなわち、ブランドのもっとも認知度の高い要素を、より買いやすく、よりわかりやすく、そしてより文化的に認知されるようにすることだ。同社は5月14日、通期決算を発表した。3月28日締めの会計年度において、バーバリーは24億2000万ポンド、米ドル換算で約32億9000万ドル(約4935億円)の売上高となり、為替変動の影響を除いたベースではほぼ横ばいをとなった。既存店売上高は通期で2%増、第4四半期では5%増となり、中華圏とアメリカ大陸(南北アメリカ)の両地域で10%の成長が押し上げ要因となった。バーンスタイン(Bernstein)のアナリストであるルカ・ソルカ氏は5月14日付のノートで、バーバリーの第4四半期の既存店小売売上高は市場コンセンサスと一致した一方、アメリカ大陸と中華圏はそれぞれ期待を上回ったと述べている。粗利益率も予想を上回り、66.3%に対して67.9%となった。バーバリーは「わかりやすいラグジュアリー」へ再構築を進める
決算説明会において、バーバリーCEOのジョシュア・ショールマン氏がもっとも明確に語ったのは、店舗の売り場についてだった。バーバリーは、顧客がすでに理解しているカテゴリー、すなわちトレンチコート、スカーフ、ポロシャツ、カシミヤといったカテゴリーを、スカーフバーやポロシャツギャラリーといった専用のショッピングスペースに変え、今後はトレンチコートやカシミヤの特設コーナーも開設する予定だ。「われわれの戦略は、知名度、生産性、収益性に関するものだ。2026年、我々はカテゴリーデスティネーション戦略の取り組みなどを背景に、生産性と収益性の向上で前進をみせた」と、ショールマン氏は語った。同社はこれまでに200カ所以上のスカーフコーナーを展開しており、ショールマン氏によれば、これらは店舗内の「中心的存在」となり、「計画を上回り、店舗の生産性を押し上げている」という。ポロギャラリーは第4四半期に立ち上げがはじまっており、6月の父の日までに約100カ所の展開が見込まれている。同ブランドのエディポロは現在、23色で展開されている。バーバリーは2026年中に初のトレンチコートの専門店を立ち上げる予定だ。これは顧客が最適なスタイルを見つけられるよう手助けするインタラクティブなコンセプトとなる。また、下半期にはカシミア専門店も展開する。会計年度末までに同社は、店舗ネットワーク全体でおよそ400のカテゴリー別専門店を展開する見込みだ。決算発表に先立ち、ソルカ氏は、バーバリーの焦点はいまや「コンバージョン率や取引あたりの販売点数など、小売指標の改善を通じて販売生産性を向上させること」と述べていた。さらに、同ブランドの中核カテゴリーであるアウターウエアとスカーフは好調に推移しており、2027年度(2026年4月〜2027年3月期)ではプレタポルテとハンドバッグ全体にわたって「ワードローブ化により大きな焦点を当てる」ことになると指摘した。一方で、ひとつの課題も挙げている。「われわれが業界から得たフィードバックによれば、バーバリーは商品にもっと『スパイス』を加える必要があるかもしれない」。コーチ流プレイブックを応用し、ヘリテージを「買いやすく」変換
ここでコーチとの比較が有用になる。コーチと同様に、バーバリーも伝統を現代的で、理解しやすく、しかも非常に買いやすいものにしようとしている。この戦略は、馴染みのあるブランド資産を、繰り返し購入できる小売体験へと転換することにあるようだ。ショールマン氏は、英国のラグジュアリー大手であるバーバリーに加わる前、コーチに在籍していた経験から、この戦略に精通している。価格設定もその一部だ。ショールマン氏によれば、バーバリーは「ラグジュアリーの文脈におけるバリュー・フォー・マネー(VFM)」を提供しようとしている。トレンチコートにおいては、ナイロン素材のケンジントン(Kensington)が1000ポンド強(約1360ドル、約20万4000円)から、レザーヌバック素材のキャッスルフォード(Castleford)トレンチが7000ポンド近く(約9520ドル、約142万8000円)までと、価格帯は幅広い。スカーフは、細身のシルクスカーフが195ポンド(約265ドル、約3万9750円)から、カシミアのケープが2500ポンド(約3400ドル、約51万円)までとなっている。
「このページに掲載されているアイテムは、グッド(標準)カテゴリーであれベスト(最上位)カテゴリーであれ、われわれのビジネスにおいてもっとも重要な新規顧客獲得のためのアイテムだ」と、ショールマン氏はブランドの製品価格帯を示した上記のスライドを指しながら語った。フンザ・ジーコラボとアクティブウエアの新展開
コラボレーションやカテゴリー拡張も、戦略の一部になりつつある。 女優のシモーヌ・アシュリーと俳優のトム・ブライスを起用したバーバリーのハイサマーキャンペーンには、フンザ・ジー(Hunza G)との新しいスイムウエアコラボレーションが含まれている。ショールマン氏によれば、このタイアップはフンザ・ジーのストレッチ素材をバーバリーのカラーとチェック柄と組み合わせ、「ヘリテージとサイズ展開の多様性を融合した」ものだという。同氏は、このカプセルコレクションは「ほんの数週間前にローンチした」と述べたうえで、バーバリーは「売れ行きに非常に満足している」とし、主要な卸先業者からは追加在庫を求められていると付け加えた。バーバリーはまた、スイムウエアを越えたカテゴリーへの新たな入り口もテストしている。5月10日、同ブランドはアクティブウエアのラインについてインスタグラムに投稿した。画像にはボート競技選手のキャメロン・ブキャナン氏(@buchancamerontakes:インスタグラムのフォロワー1700人)が水上にいる姿が映し出されており、キャプションには「Row with it(漕いでみよう)」と書かれ、バーバリー アクティブウエアは「あなたとともに動くために作られた」と説明されていた。ローンチメトリクス(Launchmetrics)によれば、アクティブウエアのローンチは最初の48時間で45万ドル(約6750万円)のメディア・インパクト・バリュー(メディア露出の金銭的価値)を生み出し、ローンチ翌日には全体のメディアインパクトを90%近く押し上げた。このラインは決算説明会では取り上げられなかったが、ショールマン氏が示したより広範な戦略には合致している。それは、馴染みのあるバーバリーのコードを用いて、トレンチコート以外のショッピング機会をより多く創出することである。バーバリーは過去にもコラボレーションを活用してきた。2017年と2018年には、デザイナーのゴーシャ・ラブチンスキー氏と組み、バーバリーチェック、トレンチコート、アウターウエアをストリートウエアの視点から再解釈したアイテムを発表した。2018年にはファッションデザイナーのリカルド・ティッシ氏指揮のもと、バーバリーはデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド氏とタッグを組み、バーバリーのヘリテージとウエストウッドのブリティッシュパンクのコードを融合させたリミテッドエディションのコレクションを展開。売上の一部はクール・アース(Cool Earth)の支援に充てられた。2022年には、バーバリーはストリートウエアブランドのシュプリーム(Supreme)とコラボレーションし、トレンチコート、ラグビーシャツ、デニム、フーディ、スケートデッキ、ボックスロゴアイテムなどを含む、よりストリートウエア色の強いコレクションを展開した。今回の違いは、バーバリーがこれらのローンチを、ヘリテージコードが果たしうる役割を広げるために活用している点にある。フンザ・ジーは、スイムウエア、チェック柄のビキニ、ラフィアバッグを通じて、ブランドに暖かい季節にふさわしい英国らしさを表現している。アクティブウエアは、運動、スポーツ、アウトドアといった分野への進出をさらに推し進めている。店舗においては、スカーフバー、ポロギャラリー、そして近く展開予定のトレンチおよびカシミアのコーナーが、同じ目的を果たしている。すなわち、馴染みのあるバーバリーのカテゴリーをよりわかりやすいショッピング体験へと転換することだ。バーバリーはまた、このモデルにより多くのデータを取り込んでいる。ショールマン氏は、同社が下半期により高度な顧客セグメンテーションと、店舗スタッフが利用するAI活用型レコメンデーションを試験導入したと述べ、このツールが第4四半期にプラスの影響を与えたとした。[原文:Burberry adopts a Coach-style playbook built on scarf bars, swimwear and activewear]Zofia Zwieglinska(翻訳、編集:藏西隆介)
