次回5月27日(水)よる10時 第8話を放送 日本テレビ系水曜ドラマ「月夜行路 ―答えは名作の中に―」(毎週水曜よる10時放送)。

数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、5月20日(水)放送の第7話をどう見たか?場面写真とともに紹介する。

(※以下、第7話のネタバレを含みます)

本作は、家族から蔑ろにされ寂しさを抱える専業主婦の涼子(麻生久美子)が、文学オタクで洞察力に優れたバーのママ・ルナ(波瑠)と出会ったことから始まるロードミステリーだ。

<構成美が際立つ第7話 ――― 情報量を捌ききった“時間配分”の妙>

本来、優れたドラマを“技法”から語ることは、どこか野暮でもある。とはいえ今回ばかりは、その“時間配分の巧さ”に触れずにはいられなかった。それほどまでに、第7話の構成は見事であった。

今回描かれた出来事を整理してみると、かなり情報量が多い。
前回から新たな“縦軸”となった、ルナの“父のパスワード探し”をきっかけに訪れた先で、涼子はかつて青春を共にしたバドミントンのペア・さつき(遠藤久美子)と思いがけず再会する。さらに、その家では中学生の息子に“爆破予告”の容疑がかかり、警察が訪れる場面に偶然居合わせることとなる。
そしてその真相は、友人の罪を“別の罪”で隠そうとした少年による、不器用すぎる友情だった。しかも今エピソードは、その少年の物語に、涼子が抱えていた青春時代のわだかまり、さらには前回ラストの“引き”である、大学を辞めたいと言い出した長女の進路問題にまで重ね合わせていくという、実に盛りだくさんな内容だった。

<謎解きに偏らない物語 ――― 感情へと踏み込んだ後半の強度>

通常、推理ドラマでは“謎解き”の面白さを優先するあまり、真相解明後の動機や、そこへ至るまでの背景が駆け足になってしまうことが往々にしてある。特に今回のような“少年による爆破予告”という題材は、ミステリーとして非常にキャッチーである反面、扱いを間違えれば、その刺激の強さだけが残り、「ありえない」が先行してしまう危うさもあった。

しかし今作は、“やはり”そうはしなかった。

今回のエピソードは、伏線を張り、謎を提示し、解決へ至るまでを驚くほどテンポよく進め、前半およそ20分でミステリーを整理してみせた。そして残りの時間を、徹底して“少年たちの心情”と、それを受け止めた“涼子自身と家族の機微”に費やしたのである。

もし今回、一般的なミステリードラマのように“謎解き”へと比重を置いていたなら、その後に待つ少年が罪を犯した理由や友人を守ろうとした感情は、単なる“真相説明”として処理されてしまっていただろう。そしてそれは、中学生による爆破予告というセンセーショナルな題材を、物語を盛り上げるためだけの“装置”として消費してしまう危険性すら孕んでいた。
だからこそ視聴者は、“爆破予告”という重罪そのものだけではなく、その奥にあった友情や孤独、不器用さを、しっかりと受け止めることができたのだ。

<人情が浮かび上がる結末 ――― バディの深化が生んだ説得力>

しかも本作は、その少年たちの友情を、涼子のかつてのバドミントンペアとの関係性、さらには娘の進路問題にまで重ね合わせていく。

誰にでも、間違えてしまう瞬間はある――。

それは今回のように刑事罰へ繋がりかねない過ちかもしれないし、あるいは涼子がこれまで抱えてきた“小さな嘘”かもしれない。また、長女が抱えていた、傍から見れば些細にも映る悩みだったのかもしれない。青春とは本来、それほど危うく未熟で、複雑でありながら、同時に驚くほど単純なものでもある。そんな視線が、今回の物語全体を優しく包み込んでいた。

また、その“過ち”を諭す立場に、ここまでのエピソードによって背景が見えてきたルナが置かれていたことも大きかった。もしこれが、よくある“目立つだけで背景の見えないキャラクター”や、何不自由なく生きてきたように見える人物による言葉だったなら、それは上から目線の“説教”になってしまっただろう。しかし視聴者は、これまでの物語を通して、ルナ自身もまた、多くの痛みや孤独を抱えてきたことを知っている。だからこそ彼女の言葉は、“裁き”ではなく、“理解し導こうとする優しさ”として響いたのである。

前回の第6話では、大阪編を経たことで、ルナと涼子が“事件を解決するコンビ”から、“互いを理解し合うバディ”へと変化したことが描かれていた。そして今回の第7話は、その関係性があったからこそ成立したエピソードだったように思う。ミステリーを解くことよりも、その先にいる“誰かの感情”へ寄り添うこと。そのスタンスが、第6話で示された“人情の深化”から、さらに自然な形で地続きになっていたのだ。

その意味で今回の第7話は、単に“良い話”だっただけではない。ミステリーとしての起承転結を成立させながら、その後に残る“人情”を、巧みな“時間配分”と“構成”によって際立たせた回だったのである。

<番組情報>

原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社文庫)『月夜行路 Returns』(講談社)
脚本:清水友佳子
音楽:Face 2 fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ

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・Instagram:@getsuyakouro
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・ホームページ:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
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<原作情報>

『月夜行路』 
四十五歳の誕生日、孤独な主婦の沢辻涼子は家を出た。偶然出会った美しいバーのママ・野宮ルナは、深い文学知識と洞察力を活かした推理で、かつての恋人への涼子の思いを言い当てる。最愛の彼はなぜ涼子のもとを去ったのか?二人が始めた元彼探しの旅先で、明らかになる秘密とは。涙のサプライズエンディング!
発売中 講談社文庫

『月夜行路 Returns』
元彼探しの旅から戻った涼子が再びルナを訪ねたとき、店に届いた古いノートパソコン。誰が、何のために送ってきたのか。涼子は、パソコンを開くパスワード探しを手伝うことに。行く先々で事件に巻き込まれながら、パスワードを試していく二人。願いを込めた仕掛けに挑めるチャンスは、5回。鍵を握るのは、1冊の本。
発売中 講談社

【秋吉理香子 プロフィール】
兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学大学院にて映画・TV番組制作修士号取得。2008年、第3回Yahoo! JAPAN文学賞を受賞し、2009年に『雪の花』でデビュー。主な著作に『月夜行路』『悪女たちのレシピ』『終活中毒』『無人島ロワイヤル』『暗黒女子』などがある。