[5.19 U17アジア杯準決勝 日本 1-1(PK3-2)ウズベキスタン ジェッダ]

 気合いは十分だっただけに、余計に大きなショックがあった。

 U-17日本代表DFエゼモクェ・チメヅェ海(C大阪U-18)は、19日に行われたAFC U17アジア杯サウジアラビア2026準決勝・U-17ウズベキスタン代表戦に先発出場。「絶対に活躍して優勝したい」と意気込んでいた男にとって、待望の舞台だった。

 だが後半26分、ペナルティーエリアに侵入してきた相手に手を出したところで転ばれてしまい、これがPK判定となってしまった。相手の転び方はわざとらしかったとはいえ、手を出してしまったタイミングが不用意だったのも事実で、悔いの残るプレーとなった。

「焦ったりもしたんですけど、仲間がすぐに声をかけてくれて、『やるぞ!』、『大丈夫だ!』って言ってくれた。自分もすぐに切り替えようとしたんですけど、なかなか切り替えづらかった」

 試合展開も厳しかった。前半はウズベキスタンの攻勢を自陣で受けざるを得ない展開が続き、「相手陣内でプレーしたかったのに、ずっと押し込まれてしまって、チーム全体として思うようなプレーが出せなかった」(エゼモクェ)という流れになった。

 ハーフタイムを挟んでウズベキスタンが引いて守りを固め始めたのに対して日本が攻勢を強める流れになったが、「チャンスは増えたんですけど、なかなか決め切ることができなくて……」とエゼモクェが振り返ったように、ゴールが遠い時間帯が続いた。

 アディショナルタイムに入る前にまずはDF元砂晏翔仁ウデンバ(鹿島)がパワープレーで前に上がる。そして、さらにエゼモクェにも「前へ行け!」という指令が小野信義監督から下された。

 長身CBの元砂を前に上げてのパワープレーは事前のエジプト合宿から準備してきていた奥の手だったが、そこにエゼモクェも加える形はやったことのないもの。小野監督自身も「まったく考えていなかった」というアイディアだったが、コーチから出てきた奇策を指揮官が受け入れ、エゼモクェに突撃を命じることとなった。

「元々アントニー(元砂)だけが出る予定だったので、自分が前に出るとは思っていなかった。でも監督が『行け』と言ってくれて、もうやることは一つしかなかった。点を決めることだけをずっと考えてプレーしました」(エゼモクェ)

 そして迎えた後半のラストプレーに近いアディショナルタイム7分のことだった。当初の3バックで唯一最終ラインに残っていたDF熊田佳斗(大宮)のロングフィードを元砂が頭で合わせて落とし、このボールへエゼモクェが突っ込む。

「熊田がもうとりあえず前にとアントニーにつけるボールで事故りを狙ったのが良い感じに入って、自分は(相手DFの)前には入れなかったんですけど、気合いで何とか押し込んだゴールになりました」(エゼモクェ)

 まだ同点だったため、「喜びすぎないようにと思いながらも、めっちゃ喜んじゃった」という笑顔になったのも無理はない。PK献上という“地獄”から、殊勲の同点ゴールというドラマチックな流れで、最後はPK戦の末に決勝進出という“極楽”を掴み取った。

「最後まで諦めずにやって、監督も最後まで自分を出してくれて、気持ちや想いを背負いながらプレーして、ああいうゴールを決められたのは良かったなと思います」

 感慨深くそう語ったエゼモクェだが、当然ながら手放しで喜べるような試合でないことも重々わかっている。「ちゃんと仲間たち話し合って、変えるべきところは変えないといけないと思います」と、あらためて課題を修正して決勝へと進みたい考えだ。

 その上で、こうも語った。

「優勝して金メダルを持って帰りたい。みんなで優勝して笑って終わりたいと思っています」

 苦しい試合内容と悔いの残るプレー、だが折れない心を持って取り組んで最後に殊勲の同点ゴール。激動のゲームを経たエゼモクェは、あらためて「このみんなと優勝したい」という気持ちを強くしたようだった。


(取材・文 川端暁彦)