阿部監督

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 巨人は常勝を義務づけられている球団だ──と言われる。そんなジャイアンツのファンにとって満足できない勝率と順位であることは間違いないだろう。中日や広島のように勝率3割台というわけではない。とはいえ5月14日現在(以下同)、巨人の勝率は5割2分6厘で4位である。

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 なかなか明るいニュースのない中、巨人の「4番バッター」に対する評価が高まっている。昨年12月に獲得が発表されたボビー・ダルベックだ。

 ダルベックは1995年6月生まれの30歳。2016年のMLBドラフトでボストン・レッドソックスに指名されて入団した。20年8月にメジャー初昇格を果たすと、何と「メジャーデビュー10試合以内で5試合連続本塁打」というMLB史上初の記録を達成する。

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 このため8月の「ルーキー・オブ・ザ・マンス」を受賞するが、その後は結果を残すことができなかった。

 25年1月にはシカゴ・ホワイトソックス、5月にはミルウォーキー・ブリュワーズ、8月にはカンザスシティ・ロイヤルズと、それぞれマイナー契約を結んだが、注目されることはなかった。ダルベックにとっては苦しい時期だったと言える。

 25年12月に巨人が獲得を発表したことは冒頭で触れた通りだ。そしてダルベックは今年3月の開幕戦で、4番バッターとして先発出場する。

 そして4回、阪神のエース・村上頌樹からホームランを放った。「巨人の4番初試合で、しかも開幕戦でホームランを放ったバッター」は1994年の落合博満氏と2006年の李承菀(イ・スンヨプ)氏に次いで3人目だという。

「穴の非常に小さなバッター」

 ダルベックの打撃成績を見てみよう。打率は2割5分2厘、ホームランは8本、長打率は4割9分6厘。

 注目すべきはホームランと打点。巨人の打者で8ホームランと21打点はチーム内でトップとなっている。

 さらにセ・リーグのホームランランキングでも阪神の佐藤輝明、森下翔太が共に10本で1位タイ、そしてダルベックは3位に付けている。また打点はリーグ5位だ。

 野球解説者の前田幸長氏はロッテ、中日、巨人の3球団で投手として活躍。先発、中継ぎ、クローザーの全てを経験した。さらに前田氏は2008年には渡米してレンジャーズとマイナー契約を結んだ。3Aオクラホマで36試合に登板したため、アメリカの野球事情にも詳しい。

 その前田氏はダルベックの活躍に「穴の非常に小さいバッターという印象を持っています」と評価する。

「外国人バッターと言えば、『打ちたい、打ちたい』という意識が強いという傾向があり、ピッチャーは彼らの“打ち気”を利用して抑え込むことを考えます。ところが、ダルベック選手は『打ちたい』という意識を隠し、『さあ、投げていらっしゃい』という待ちの姿勢でピッチャーと対峙します。さらにボール球に手を出しません。選球眼が良いのです。
 要するにピッチャーにとっては“嫌なバッター”だと言えます」

抜群の選球眼、問題の守備

 前田氏の指摘は、ダルベックの打撃成績に表れている。打率は2割5分2厘だが、出塁率は3割5分1厘に達している。19四球はリーグ6位タイ。ボール球を見極め、出塁に結びつけていることが分かる。

「今度は守備を見てみましょう。無難にこなしていると言えますが、気になる点があったのも事実です。5月4日のヤクルト戦は3回表、巨人先発の戸郷投手からヤクルトの鈴木叶選手が3ランホームランを放ちます。巨人は4回裏に1点を返しますが、次の5回表にヤクルトは1点を追加。さらに2アウト2塁で内山壮真選手がレフト前にヒットを放つと、ボールはダルベック選手に中継されました」

 2塁ランナーはホームに向かって突進していた。もしダルベックがキャッチャーに向かって投げれば、ひょっとするとアウトにできたかもしれないという状況だった。

「ところがダルベック選手は1塁ランナーが気になってしまったのでしょう。どうするべきか迷ってしまい、最終的にはホームにも1塁にもボールを投げることができませんでした。結果、ヤクルトが5対1と巨人を突き放してしまったのです。私は非常にもったいないプレーだと思います。3点差なら、まだチームの士気は保たれます。逆転の可能性があると信じることができます。しかし5回裏で4点差となると、やはり諦めムードが出てくるのは事実です」(同・前田氏)

打撃は折り紙付き

 前田氏は「ダルベック選手が送球を躊躇してしまったことは、批判されるほどの“怠慢プレー”ではないとも思います」と言う。

「ただし、ペナントレース後半の競っている状況や、ポストシーズンだと1点が試合を決めることがあります。そんな重要な場面で、あのようなプレーをしてしまうと、手痛い敗北の原因になりかねません。日本のプロ野球はMLBに比べると、守備の要求レベルは高いと思います。今後の厳しい場面でダルベック選手はどんな守備を見せるのか、日本野球にキャッチアップできるのか、気になる点だと思います」

 とはいえ、守備のミスを帳消しにできるほど、ダルベックの打撃に期待が持てるのも事実だという。

「ホームランが打てるバッターであり、なおかつ選球眼が良いのでピッチャーは神経を使うはずです。160キロ台のストレートを投げられるピッチャーならば話は違いますが、150キロ台ならストレートをストライクゾーンに投げることは怖くてできないでしょう。ストレートはボール球として使い、変化球で四隅のギリギリを攻めていく。高目はホームランが怖いですが見せ球にして、勝負球は低目です」(同・前田氏)

ペタジーニ級の選球眼!?

 一方のダルベックは厳しい球はファウルで逃げ、抜群の選球眼を発揮して四球で出塁することも狙ってくる。

「ピッチャー心理で言えばギリギリを攻めた球がボールと判定され、四球になったとしても、それほどショックは受けないものです。ピッチャーがショックを受けるのは、『この球なら必ず振ってくれるはずだ』と信じて低目に変化球を投げたにもかかわらず、バッターがぴくりとも反応しなかった時です。私が対戦した外国人バッターでは、ロベルト・ペタジーニさんだけが『振ってくれるはずだ』と信じて投げた球を余裕で見逃しました。あのショックは今でも覚えています」(同・前田氏)

 ペタジーニ氏はヤクルトと巨人に所属し、日本プロ野球で7年間、プレーした。通算成績は打率が3割1分2厘、ホームランが223本、出塁率は4割3分2厘に達した。

 果たしてダルベックは今シーズン、どんな打撃成績を残すのだろうか。

デイリー新潮編集部