重い星団ほどガス雲から早く抜け出す ウェッブとハッブルの観測で明らかに
赤色に輝く複雑なフィラメント状のガス雲と、その隙間からのぞく青白い無数の光点。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)が公開したこの画像は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が近赤外線で捉えた渦巻銀河「M51(Messier 51)」のクローズアップです。

赤やオレンジは、電離したガスや、PAH(多環芳香族炭化水素)と呼ばれる複雑な分子の分布を示しています。
一方、シアンで着色された光る泡のような領域や、白く輝く点として見えているのは、生まれたばかりの星が集まった星団です。厚いガスのベールに包まれた星形成の現場が、Webb宇宙望遠鏡の優れた観測能力によって見事に描き出されています。
数千の星団を観測してわかった「出現」のスピード
ストックホルム大学のAlex PedriniさんやAngela Adamoさんをはじめとする国際的な研究チームは、「FEAST(※)」と呼ばれる観測プログラムのもとで4つの近傍銀河(M51、M83、NGC 628、NGC 4449)を調査し、星団の進化に関する新たな事実が明らかになったとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Nature Astronomy」に掲載されています。
※…FEASTは「Feedback in Emerging extrAgalactic Star clusTers」の略。
研究チームは、赤外線でガスの内部を透視するように観測できるウェッブ宇宙望遠鏡に加えて、ハッブル宇宙望遠鏡が持つ可視光線で星を捉える能力を活かし、異なる進化段階にある約9000個もの若い星団を特定しました。
恒星は、ガスと塵(ダスト)の集まりである分子雲が重力で収縮することで誕生します。なかでも太陽の8倍以上の質量がある大質量星は、成長するにつれて強い星風や紫外線を放つようになり、最後には超新星爆発などによって周囲のガスを吹き飛ばしていきます。恒星がその一生を通じて周囲の環境に影響を及ぼしていくこうしたプロセスは、「恒星フィードバック(Stellar feedback)」と呼ばれています。
特に、超新星爆発が起こる前の強烈な放射などはガスを晴らす上で重要な役割を果たしており、銀河がどう進化していくかを理解する鍵となる現象です。しかし、誕生した星団がどれくらいの時間をかけて周囲のガス雲を吹き飛ばすのか、これまでは十分に解明されていませんでした。
大質量の星団は約500万年でガスを晴らす
研究チームが観測データを分析した結果、星団がガスを吹き飛ばすスピードは、星団の質量によって明らかに違うことが判明しました。
論文によると、質量の大きな星団は約500万年で完全にガス雲から抜け出し、銀河内の空間へ向けて紫外線を放ち始めることがわかりました。一方、質量の小さな星団がガス雲から完全に抜け出すには、700万〜800万年を要するといいます。
つまり、重くて巨大な星団ほど、自らを取り巻くガスの覆いを素早く払い除ける力を持っていることになります。今回の観測結果は、銀河の進化を再現するシミュレーションにおいて、星形成プロセスの重要な手がかりとなります。

惑星形成に影響する「時間制限」
興味深いことに、この発見は恒星だけでなく、惑星の形成にも大きな影響を与えます。
研究チームによると、星団の内部でガスが早く吹き飛ばされるということは、若い星を取り囲む原始惑星系円盤(惑星の材料となるガスと塵でできた円盤)が、他の星々からの過酷な紫外線にいち早くさらされることを意味します。
また、ガス雲が早く散逸してしまうと、まだ成長中の星々が周囲の雲から新たなガスを引き寄せる機会も失われます。結果として、大質量星団の環境下では、塵を成長させて惑星を形成するための期間が短縮されてしまうことが考えられます。
Pedriniさんは「ウェッブ宇宙望遠鏡を使うことで、星団のゆりかごの中を覗き込み、星の形成や恒星フィードバックのサイクルと惑星の形成を結びつけることができます」と述べています。
ウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡がもたらした今回の成果は、宇宙の様々な環境で星や惑星がどのように生まれていくのかを解き明かす上で、新たな知見となることが期待されます。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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