流通経済大柏の加島宏樹【写真:安藤隆人】

写真拡大

流通経済大柏の加島宏樹「亀田歩夢さんくらいインパクトを残せて、自分の武器を磨いて」

 4月4日に開幕した高円宮杯プレミアリーグ。

 ここではリーグ戦で躍動を見せた選手を紹介していきたい。EAST第7節終了時点で首位を走る流通経済大柏。激しいポジション争いのなかでここに来て頭角を現してきた選手がいる。左サイドハーフのMF加島宏樹はボールを奪われないスキルと、味方との絶妙の距離感を保って、グループでボールを運んでいくなかで欠かせない存在になりつつある。

 本来のポジションはボランチと左サイドハーフ。横浜F・マリノスプライマリーからジュニアユースまで過ごしたが、ユースには昇格できず。「昇格できないなら高校サッカーと決めていた。高校サッカーのなかで流経柏が一番スタメンを勝ち取るのが難しいと感じましたし、逆にその環境の方がスタメンを掴むための努力が一番できると思ったので決めました」と、敢えて厳しい道を選んでやってきた。

 高校2年生になるとプレミアEASTには出場できなかったが、セカンドチームが参戦するプリンスリーグ関東2部で出番を掴むようになり、選手権では登録30人のメンバーに入った。ベンチ入りは一度も果たせなかったが、裏方としてチームのために動く一方で練習はレギュラーメンバーと一緒にこなし、紅白戦を行うなかで「全国優勝を狙っていくチームの雰囲気や強度が上がっていくなかで自分の持ち味を出せることに自信を掴んだ」と、来年の飛躍に向けて準備を怠らなかった。

 そして迎えた今年、加島のポジションにはそれぞれ強烈なライバルが存在していた。4-4-2の中盤ダイヤモンド型のアンカーのポジションには豊富な運動量と攻撃センスに溢れたMF内田煌生がおり、左サイドハーフにはすでに複数のJクラブが正式オファーを出して争奪戦を繰り広げているMF古川蒼真がいた。

「ダイヤモンド型である以上、ボランチのポジションは1つしかないし、左サイドハーフも選手権でサイドハーフとして躍進した古川がいる。3年生になっても厳しい競争が続きますが、僕は出られるならどこでもいいし、アンカーでも左サイドハーフでも2人とは違う持ち味を持っていると思っているので、それを発揮してチームに新しい形をもたらせられるために日々の練習に挑んでいます」

 ボランチでは加島の右足のキックは違いを生み出すことができる。コントロール抜群で、長短も蹴り分けられるキックは中盤の底から展開を変えるときに大きな効力を発揮する。左サイドハーフでは、インサイドハーフ気味に中に絞って、テンポの良いパス回しやダイレクトでの崩しに加われるし、クロスの質も高い。

 しっかりとした武器を持っているからこそ、榎本雅大監督は2人の存在があっても、加島に大きな信頼を寄せている。プレミアEAST開幕戦、キャプテンで守備の要のCBメンディーサイモン友と古川は日本高校選抜の欧州遠征のために不在だったことを受けて、加島がキャプテンマークを巻いてスタメンで出場をした。

 2人が帰国をして復帰した第2節、第3節はベンチに回ってしまったが、第4節のFC東京U-18戦では古川がベンチスタートでスタメンに復帰し、安定したパフォーマンスを見せた。すると第5節の柏レイソルU-18戦では古川が左サイドバックとなり、縦関係のコンビを組むことになった。

 この起用が的中し、古川の前への推進力と加島のハーフスペースでのゲームメイク力が噛み合って、左サイドの攻撃が活性化。第6節以降はこの形で定着をして、連勝を重ねている。

「自分のなかで毎試合スタメンなのかベンチなのかが分からない状態なので、常にいい緊張感を持ってやれています。スタメンでも、ベンチスタートでも、自分にできることをひたすらにやる。これだけはどんなときも大事にしていて、僕のなかでは昨年までの競争を経験して、試合に出られない経験をたくさんしているし、気持ちの作り方というのは自分のなかでできていると思うので、今もそれは変わらずにやっています」

 レギュラーを完全に掴んだとは思っていない。いつライバルに奪われるか分からないし、「今はアンカーですが、ダブルボランチになったときに(内田)煌生と組むことになるかもしれない」と状況が変化しても対応して高いパフォーマンスを出す準備は怠っていない。

「まだ僕はすごくいい活躍ができていないので、今の基準をもっと上げていかないといけないので、自分を一皮も二皮も剥けさせるように頑張って、出た環境のなかでしっかり結果を残せる選手になりたいと思っています。個人的には8番をつけさせてもらっているので、プレースタイルは違いますが、亀田歩夢(カターレ富山)さんくらいインパクトを残せて、自分の武器を磨いて圧倒的な存在になっていきたいと思います」

 表情は淡々としているが、心の内には成長に対してどこまでも貪欲な気持ちを持っている。それが競争によって磨かれ、プレーに表現できるようになっているからこそ、周りの信頼を掴み取れている。これから先、より輝き放つようになったとき、チームはタイトルに、加島自身はプロにグッと近づいていく。(安藤隆人 / Takahito Ando)