貸金庫は安全なイメージがあるが…(写真はイメージです)

写真拡大

 4月27日の21時すぎ、東京・八王子市にある会員制の貸金庫で、保管されていた巨額の現金が盗まれるという事件が発生した。その被害額は約4〜5億円ともされる。このたび、被害に遭った男性A氏が「デイリー新潮」の取材に応じ、現在の心境を告白した。【取材・文=宮原多可志】

【前代未聞】貸金庫から4億円以上が盗まれる事件がおきた貸金庫がある八王子駅周辺の様子

貸金庫が破られるなんて、あり得ない

――貸金庫が破られるという衝撃的な事件ですが、Aさんは率直にどう思いますか。

A:本当に、驚きですよ。まさかこんなことが起こるなんて。

――4〜5億という大金を、貸金庫に預けていたというのも驚きですが。

A:もともと私は商売をしていたのですが、様々な事情があって、現金を自宅に置いておけませんでした。そこで、この貸金庫を見つけて契約したのです。確か、令和6年の7月のことだったと思います。

貸金庫は安全なイメージがあるが…(写真はイメージです)

――銀行の貸金庫を利用しなかったのはなぜですか。

A:銀行の貸金庫を契約していたこともあるのですが、実は過去に脱税の疑惑をかけられ、貸金庫を開けられたことがあるのです。早い話が、銀行は税務署とツーカーだったのです。銀行は、開けない、開けない、と言いながら結局開けたので、信用できないという面がありました。

こんなセキュリティで貸金庫といえるのか

――今回の貸金庫は900個あるそうですが、破られたのは2個です。ピンポイントでこれだけの大金がある金庫を開けるなんて、まるで狙い撃ちされたかのようですが、何か心当たりはあるのでしょうか。

A:まったくないんですよね。貸金庫があるビルに入ったとき、人と会ったことは一度もありません。一緒に金庫があるフロアに行ったことがある人もいません。建物の外まで、車で乗せていってくれた人はいます。30年以来の後輩なのですが、彼くらいかな、知っているのは。

――今回の貸金庫は、ドラマのロケ地になったりと有名な場所のようですが、実際に利用してセキュリティ体制はどのように感じていましたか。

A:今思えば、こんなセキュリティで貸金庫っていえるのかな……と思います。借りるときは、テレビに出ているとか、セキュリティがしっかりしていますとか、家に預けるより安心だという謳い文句に惹かれ、説明を受けてから契約することにしました。

 今回、貸金庫はバールでこじあけたそうですが、普通、そんなことがされたらすぐに警報が鳴ると思うじゃないですか。何も鳴らなかったそうです。そして、事件が発覚してから12時間後に私のもとに連絡が来るなんておかしいですし、杜撰だと思いませんか。

 以前、みずほ銀行で貸金庫を2個借りていた時は、1枚目のカードでフロアに入り、2枚目で金庫を開けようとしたところ、別のカードを通してしまったため警報が鳴りました。すぐに警備員が飛んできて、注意されたんですよ。このくらい厳重なのが本来の貸金庫でしょう。銀行と比べたら、あまりにセキュリティが甘いと思わざるを得ませんでした。

事件発生から12時間後に連絡が

――貸金庫会社から連絡があったのは、事件発生から12時間後ですか。さすがにこれは対応が遅すぎますね。

A:しかも、聞いた話だと、夜の12時にカギを閉めるそうですが、見回りに来た人が「金庫の扉が開いているな」と気づいたけれど、なんと、何もせずにそのまま帰っちゃったそうです。普通、扉が空いていたら、何で空いているんだろうと、真っ先に見に行くと思うんですよ。そして、110番するのが当たり前だろうと。

――警報がすぐに鳴っていれば、犯人をすぐに捕まえることができたかもしれません。Aさんは、貸金庫会社への不満も大きいのではないでしょうか。

A:この貸金庫、被害に遭った後も、普通に営業していたんです。いくらなんでもおかしいでしょう?

 ガードマンを立てるとか、とりあえず閉鎖するとか、何らかの対応を取るのが普通だと思うんですよ。こちらで抗議をして、ようやく、いったん閉鎖したようです。めちゃくちゃなんですよ。

 彼らは窃盗犯のせいにして、「私たちの責任じゃないですよね」と言いました。いやいや、泥棒が盗んだのは間違いないし、悪いに決まっているけれど、セキュリティが甘かったのはあなたたちの責任でしょうと言いたいです。

不可解な封筒の文字

――おっしゃるとおりですね。

A:ところで、貸金庫の会社にはスペアキーを預けています。事件後、そのスペアキーを見せてもらいました。封印のところに私のサインがあるのですが、これが私の字じゃないというか、なんだか違和感があるんです。写真を撮って、奥さんにも子どもにも見せたら「違う」と言われました。

 字を大きくして調べてみると、どうも、私の字を真似した、達筆な人の字だなと。横棒を続けて書くときにぐちゃぐちゃになるのが、私の字の特徴なのです。ところが、このサインは習字で書いたような上手い字です。明らかに怪しいので、封筒の中のカギについている指紋をとってくださいと、警察にも言いました。

 あと、スペアキーを入れていた封筒なのですが、最初にのり付けする場面を従業員と一緒に確認しているのです。ところが、封の左部分ののりが少し剥がれていたんですよね。いずれにせよ、不可解なことです。

――防犯カメラには犯人の姿が映っていたそうですが、見ましたか。

A:これも不可解なのですが、壊しているところが死角で、ほとんど映っていないんです。バールを振り回している一部分しか見えない。それも不思議じゃないですか。普通、貸金庫の全体が見えなかったら、防犯カメラの意味がないと思うのですが……。

「怪しくはない」「真面目に貯めたお金です」

――今回は金額が大きかったため、ネット上でも様々な憶測が飛び交っているようです。

A:確かに、なんで4〜5億なんて預けたんだと不思議に思うのは、当然だと思うんですよ。確かに私は過去に脱税したこともあるし、逮捕されたこともあります。しかし、刑罰を受けたことはありません。今回盗まれたのは、真面目に貯めた金。これは事実です。変な金ではないと、強調しておきたいと思います。

――被害に遭った現在、犯人に対しても、さらに貸金庫会社に対しても言いたいことはありますか。

A:まいったなというのが正直なところです。銀行が信用できないから民間の貸金庫を使っていたわけで、だったら何を信じればいいのでしょうか。

 また、ネットのコメントを見ていると、「貸金庫の会社の保険を使って、金を貰おうとしているのでは?」というものがありましたが、まったく事実とは異なっています。貸金庫の会社は保険に入っていませんでした。この記事を読んだみなさんは、くれぐれも“保険も補償もない貸金庫”を利用しないよう、気を付けていただきたいと思います。

デイリー新潮編集部