黒島結菜が20代のときから考えた、子どもの貧困と虐待

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日経平均株価の最高値の更新や賃上げなどのニュースが目立つが、一方で、貧困に苦しむ層が増え続けている。特に、ひとり親世帯の貧困率は高く、最新の『国民生活基礎調査』(2021年)によると、その割合は44.5%にもなるという。ゆとりがないことは、やがて攻撃を誘発する。虐待、ネグレクト、性暴力……いつだって被害者は力を持たぬ子どもたちだ。

そんな今、ひとり親家庭を取り巻く苛烈な現実を描いた、湊かなえさんのミステリー小説『未来』が映画化される。物語の主人公は、複雑な家庭環境で育ちながら、教師になる夢を叶えた篠宮真唯子。ここでは真唯子を演じた黒島結菜さんに、作品のテーマでもある家族と貧困について聞いた。

お話を聞いて、すぐにでもやりたいと思いました

――『未来』は、子どもたちが逃げ場のない環境下で貧困と暴力の連鎖の中で育っていくことを描いた、湊かなえさんの最高傑作とも評価される作品です。子どもが攻撃されたり、大人の事情に巻き込まれたりする悲劇的な場面も多く、プライベートで1児の母である黒島さんにとって重い場面もあったのではないでしょうか。

黒島「はい。だからこそ作品にして、多くの人に伝えたいという思いがありました。お話をいただき『すぐにでもやりたいです』とお返事し、原作を読み始めたのです。想像以上に苦しくて辛いシーンが多かったですが、似たようなことは現実でも起こっているんですよね。

改めて、この作品を映画にするのは、大変なことも多いだろうと思いつつ、いい作品にしていこうという決意を固めました。

20代の頃から私は子どもが困難を抱えている今の日本の現実と、それを抑止するために何ができるのだろうかと、よく考えていました。『未来』の主人公・真唯子を通じて、その一助になりたいと思います」

子どもたちの未来について自問自答するようになった

――監督の瀬々敬久(ぜぜ たかひさ)さんは、苦しい状況を生きる人々の“痛み”と因果関係を丁寧に描く作品を多く生み出しています。黒島さんも、子どもの困難に心を寄せている。『未来』はお二人の力が重なった作品だと思いました。今、黒島さんが問題だと感じていることは何でしょうか。

黒島「やはり、親の虐待で子どもが亡くなるニュースを見聞きすると、本当に辛いですし、大きな問題だと考えています。また、親自身の背景を知ると、その人自身が困難を抱えているケースも多く、複雑な要素が絡んでいると感じていました。

やはり子どもは、大人に見守られながら、安全な環境下で育ってほしい。これが社会に出て明るく生きる基礎になると思うからです。でも、現在の日本では、厳しい状況で過ごしている子どもが多いという現実がある。それを描いた『未来』は私自身にとっても、学びが多い作品だと感じました」

虐待をする親側にもサポートが必要

――子どおが犠牲になる事件は、複雑な環境から発生していることが多いです。親自身がDVや理不尽な搾取などの被害を受けて貧困に陥るケースも少なくありません。それを「自己責任」と片付けてしまう社会にも問題があるように感じました。

黒島親側にもサポートや助けが必要なのに、それを受けられないまま加害者になってしまった人もいると思うのです。ここに目を向けない限り、負の連鎖は続いていくのではないかと感じています。

『未来』に登場する章子や親友の亜里沙の親も、大きな問題を抱えている。映画を観ると、子どもだけでなく、家族ごとケアを受ける必要性に気づくと思います」

両親は私のやりたいことを尊重してくれました

――黒島さんご自身は、どのようなご両親のもとで育ったのでしょうか。

黒島「両親は、私のやりたいことを何でもさせてくれましたし、挑戦できる環境を整えてくれました。今、振り返ると『本当に応援してくれていたんだ』と思うことばかりです。私が17歳で『地元の沖縄を離れ、東京で仕事をしたい』と言ったときも、両親も考え、悩んだと思いますが、快く送り出してくれました。このことは、今でも感謝しています。本当に温かい家族に育ててもらったと、改めて思います。

母からよく言われていたことは……『勉強しなさい』とはよく言われていましたね。でもそれに反抗した記憶はなく、楽しく取り組んでいたように思います。学生時代の私は、物理や数学など理系教科の成績がよかったのです。一方、国語は苦手でした。俳優の仕事をしている今、もっと勉強をしておけば良かったと思います」

俳優の仕事をしながら大学受験

――黒島さんは俳優として仕事をしながら受験勉強をし、日本大学芸術学部に進学して写真を学びました。しかし仕事をしながらでは相当大変だったのではないでしょうか。

黒島「大学に進学したのは、当時のマネージャーさんの勧めでした。進学希望はなかったのですが『もっと広い視野を持つには、大学に行った方がいい』とアドバイスをしてくれたのです。それなら興味がある写真を学ぼうと、写真学科がある大学に進学することに。

大学は、一生懸命授業に参加したり、集中して作品を仕上げたり、とてもいい時間を過ごしました。卒業はできなかったけれど、友達とともに送った学生生活は充実していて、楽しかったです」

――『未来』の主人公・真唯子も一生懸命大学に通っていました。

黒島「ほかにも、私と真唯子の共通点があるんです。私は両親から、真唯子はおばあちゃんから、愛されて大切に育てられたことです。真唯子がおばあちゃんを思う気持ちは、私が家族を思う気持ちと同じだと感じる瞬間が多々ありました」

心理学者のエーリッヒ・フロムは著書『愛するということ』で「愛は、愛する人の成長と幸福を積極的に求めることである」と記しています。この言葉は愛を中心に、いい連鎖が広がって行くことを示唆しているかのようです。

インタビュー後編「黒島結菜が「家族から愛されている、大切にされている」と感じた瞬間」では、映画『未来』の鍵を握る、親の愛と言葉について、さらに詳しく聞いていきます。

黒島結菜(くろしまゆいな)

1997年沖縄県生まれ。2013年映画『ひまわり』で俳優デビュー。2019年映画『カツベン!』で、「第43回日本アカデミー賞」新人賞を受賞。2022年、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』でヒロインを演じる。NHK大河ドラマ『花燃ゆ』(2015年)・『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』(2019年)、『時をかける少女』(2016年・日本テレビ)、ドラマ『クロサギ』(2022年・TBS)『絶対零度〜情報犯罪緊急捜査〜』(2025年・フジテレビ)NHKスペシャル時代劇「眠狂四郎」(2026年・NHK)映画『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』ほか、話題作に出演。

『未来』

小学校4年生の担任を受け持つ篠宮真唯子(黒島結菜)の教え子・章子(山粼七海)のもとに一通の手紙が届いた。差出人は「20年後のわたし」。章子は返事を書くことで、父(松坂桃李)を亡くした悲しみや、心を閉ざした母(北川景子)との孤独な日々を乗り越えていく。やがて中学校へと進んだ章子を待っていたのは、担任も加担する壮絶ないじめ、母の新しい恋人からの暴力ほか、理不尽な力に翻弄される。尊厳や生活の安全が奪われる深い絶望の中、章子は唯一の友人・亜里沙と「親を殺そう」と計画を立てる。真唯子は章子を救おうと手を尽くすが……。過酷な環境に飲み込まれる中で、「未来のわたし」から届いた手紙は、皆の希望につながっていくのだろうか。

ヘアメイク:加藤恵/MEGUMI KATO スタイリスト:伊藤省吾(sitor)/shogo ito(sitor)

●衣装クレジット

・ニット74,800円

・スカート84,700円/共にマメ クロゴウチ(マメ クロゴウチ オンラインストア)

・シューズ176,000円/ジェイエムウエストン(ジェイエムウエストン 青山店)

・イヤーカフ455,400円

・リング(ピンクゴールド)916,300円/共にレポシ(レポシ日本橋三越本店)

◎問い合わせ先リスト

・マメ クロゴウチ オンラインストア

www.mamekurogouchi.com

・ジェイエムウエストン 青山店

東京都港区南青山5-11-5 住友不動産ビル1F

03-5485-0306

・レポシ日本橋三越本店

東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店本館6F

03-6262-6677

【後編】黒島結菜が「家族から愛されている、大切にされている」と感じた瞬間