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働き方改革で残業規制が進んだ一方、そのしわ寄せを受けているのが“名ばかり管理職”たちだ。プレーヤー業務を抱えたまま部下の面談、会議、研修対応に追われ、残業代もつかない。さらに大企業では、部下も権限もないのに「部長」の肩書だけを与えられ、追い出し部屋のように使われるケースもあるという。令和になっても消えない“名ばかり管理職”の実態を追った。
◆今でも溢れ返る名ばかり管理職

立場が人をつくる――。経営者が口にしがちな名言だが、立場が社員を苦しめる事例も枚挙にいとまがない。その典型が「名ばかり管理職」だ。この言葉を広めたのは、’08年の日本マクドナルド事件だった。長時間労働を強いられてきた店長が「管理職とみなして残業代を払わないのは違法だ」と会社を訴えたところ、その主張が全面的に認められ、以後、飲食業界のみならず他業種でも同様の係争が続出。「名ばかり管理職」は流行語にもなったのだ。

あれから20年弱、係争に発展する悪質な事例は減ったが……今でも名ばかり管理職は溢れ返り、当事者を「クソ忙しい」負のスパイラルに陥れている。IT系のスタートアップ企業でマーケティング職の課長を務める秋田省吾さん(仮名・47歳)が話す。

「2年前に勤め先が上場企業に買収されてから、大きく体制が変わったんです。それまではいちプレーヤーにすぎなかった私は、年次が上という理由だけで10人の部下を抱えるマーケティング課長に昇進しました。ただ、部下はほぼ全員20代の若手なので、私がマネジメントに専念したら業務が回らない。典型的な“プレーイングマネジャー”なのですが、課長職なので残業代がつかなくなった。確かに役職手当はついたし、ボーナスは増えましたが、残業の多さを考えると、むしろ収入が減ってしまいました」

◆1on1ミーティングで時間と精神をすり減らす

秋田さんをクソ忙しくさせている原因の一つに、“親会社”の方針があるという。

「部下1人につき、週に30分ずつの1on1ミーティングを行うように言われているんです。10人の部下がいるので、それだけで週に300分が潰れる。部下と信頼関係を築くためには重要なことかもしれませんが、毎週やっていると親との関係性や恋愛についての相談など、仕事とまったく関係のない話が増えていく。ショックだったのは、退職した元部下から『1on1ミーティングでの課長のアドバイス、正直ウザかったです』とメールが届いたこと。

週の頭には10人の部下との全体ミーティングを行って、毎日、業務報告書を読んで個別に返信して、自分の業務もこなして、さらに時間を割いて個別のミーティングをやっていたのに、これですよ。課長といっても自由に使える経費はなく、すべて事前申請して管理部門の承認が下りないと使えないし、ハラスメント研修やコンプライアンス研修などに多くの時間を取られる。できることなら、いちプレーヤーに戻りたいです……」

◆“文字どおりの名ばかり管理職”の実態は?

一方で、人材サービス会社に勤める田原聡さん(仮名・44歳)は、前職で目にした“文字どおりの名ばかり管理職”の実態を次のように話す。

「某大手保険会社に20年以上勤めたのですが、最後にいた海外事業企画部は異常でした。約50人からなる部署なのですが、そのうちの半分以上が『部長』だったんです。事業部長がトップにいて、その下に企画部部長が20人、その下は部長代理だらけ。私は部長代理でしたが、部下はいませんでした(笑)。当然、上長に当たる部長の部下は私一人。その部署の役回りは、海外の提携先や買収先を探すことだったのですが、そんな体制で実績を上げられる人はごくわずかなので、与えられた役職のプレッシャーで、大して仕事をしていないのに心をすり減らす人が何人もいました」