「不良外国人から店を守ってください!相談料も払います」 ヤクザ組長がやり手の飲食店オーナーからの頼みを断った“納得の理由”
第1回【「なんで正月飾りや門松なんて売るんです?」 兄貴分に命令されても「ネット検索」で“ウラを取る”若手ヤクザ 暴力団“ジェネレーションギャップ”の実態】からの続き──。とある組長に、とある一般人が相談した。内容は近年増加している外国人問題。そして一般人は複数の飲食店を経営する若きオーナーだった。「うちの店が外国人のプッシャーの溜まり場になると困ります。組長の名前を借りて彼らを追い払いたい」【藤原良/作家・ノンフィクションライター】(全2回の第2回)
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プッシャーとは主にコカインやマリファナ等の違法薬物を手売りする売人のことだ。近年、販売目的で日本国内に違法薬物を持ち込む外国人が目立っている。

実は、彼らが密輸容疑で検挙されても日本の裁判ではなぜか無罪放免になることが少なくない。たとえば、「知人に頼まれて違法薬物の入ったかばんを日本国内に持ち込んだが、中身が何かは知らなかった」と主張し、裁判所が「その可能性を排除できない」と判断するわけである。このことについて多くの日本国民から疑問の声があげられている。
もちろん、本当に冤罪のケースもあるだろう。だが、その外国人が実際は密輸に関わっていた場合、逮捕されても裁判で無罪になれば、違法薬物の密輸ルートは温存されてしまう。その結果というべきか、新顔の外国人プッシャーが日本国内の繁華街に増えたように感じる。
日本人のプッシャーは通常、繁華街などのマンションやアパートの一室を借り、その部屋を取引場に使う。だが外国人の場合、人によっては一般客を装って入店した飲食店で密談を繰り返す。
店のオーナーや店長と結託し、許可を得てから密談に使うということはない。一般客に紛れ込み、繁華街の店を転々としながら、勝手に密談の拠点として使用するのだ。
プッシャーに選ばれる店の特徴は、いつもそれなりに客がいて、深夜営業をしており、コインパーキングから近い、といったものだ。近隣にコンビニがあればATMも使えるのでなお良し、という感じだろう。
プッシャーといえども客であり、店としては飲食代をきちんと払ってもらえばテーブルやカウンターの使用を許すしかない。
弁護士も警察も依頼できない理由
とはいえ、店内で違法薬物を巡る密談を行っているとなれば、さすがにいくら何でも迷惑という話にしかならない。だが、はっきりと「違法薬物について密談を行っている」と判断できる明白な証拠は見つけにくい。そのため店側も「怪しい」というだけで警察に通報するわけにもいかない。
実のところ、分かるものは分かるという。深夜営業の客商売を長く続けてきたベテラン店員は勘で「やってるな」と睨む。この勘が正しかったと証明されるのはプッシャーが店内で警察に逮捕された時になるが、その場合は無関係である店側も当局の取り調べに応じなければならない。状況次第では数日間営業を休止する必要がある。いや、悪い評判が立ってしまうと店によっては閉店に追い込まれることさえある。面倒ごとが増えるだけなのだ。
このような相談事は、裁判で争うわけではないので弁護士は役不足だし、警察は「証拠がない」で終わってしまう。仮に逮捕となっても無罪判決が下れば帰ってくる。店側が下手に動けば、外国人グループからの報復に怯える日々が来るかもしれない。
外国人犯罪者たちは不思議なことに、日本の警察の名前を出しても憶する気配が全くない。その代わり、暴力団の名前を出すと途端に退散するという傾向がある。このことを熟知していた若きオーナーは、地域の人脈を辿って某組長に相談を頼んだ。
若きオーナーの打算
「相談料という形で毎月、お支払いすることもできます。不良外国人から店を守るために組長や組の名前を使わせてほしいんです」
暴対法が施行されたのは1992年。だが組長は経験豊富で、今でも地元の人々から人望を集めている。若きオーナーも安心して相談したのだが、実は彼は一つの懸念を抱いていた。
それは、この組長の団体は知名度が高いA会ではなく、ネット検索をしても情報を見つけられない小さなB組であるということだった。要するにデジタル世代であるオーナーにとってB組は「ネットで裏付けが取れない、つまりは信用度の低い、極めてマイナーな暴力団」だったのだ。
オーナーは相談する中で、話の進み具合によっては組長からA会の関係者を紹介してもらえるのではないかと勝手に期待していた。
「小さなB組だから組長は『自分には実力がない』と認め、大きなA組を紹介してもらえる可能性があるだろう。その際には組長に紹介料を渡せば一件落着だろう。だから相談して損はない……」
こんな打算が働いていた。先述の通り、ヤクザは人による。看板の大小ではない。まして、この組長は長年にわたって地域貢献を積み重ねてきた大人物である。不良外国人から店を守ることは、むしろ得意分野だ。
「一旦保留」の理由
組長は相談の内容次第では月々の相談料など受け取らない。完全なボランティアで取り組むこともある。「たまにタダで飲ませてくれたらいいよ」というわけだ。
ところが、組長はオーナーの態度を見て、返事を「一旦保留」とした。
まだ今は店内に外国人プッシャーが常駐的に留まっているわけではない。最近、見かけぬ外国人客が増え始めたので、もしもの場合に備えてオーナーが先回りしたというに過ぎない。いわば“事前の防犯対策”といった相談内容でしかなかった。今すぐどうにかしなければという緊急性や切迫性のある相談内容ではなかった。
こうした理由で組長はオーナーからの相談を一旦保留としたが、それは表向きの話でもある。組長の本音は以下の通りだ。
「自分たちは助けるとなったら、本当に身体を懸けて助けます。ヤクザは出世も給料も無縁ですから。無心で困っている人のことを助けると決めたら助けます。でも、そこには条件があります。それは『決めるに足るか』です。自分が『これならよし』と腹を据えていけるならそうしますが、今回のようにカネで都合よくヤクザを使おうとしたり、ましてや別の組とうちの組との釣り合いを話して競争心やライバル心を煽ってきたり、そういうやり方の人を私は助けたいとは思いません。変に弱々しく見せる必要もありません。互いがどういう立場にせよ最低限、この人となら一緒にやっていけると思えないと腹は据わりませんよ。立場は関係ありません。特にヤクザはそういう生き物なんですよ」
「信念」や「哲学」とは何か?
この先、オーナーが本当に困り果てて、無礼な相談内容を本当に悔い改める日が来たら、組長は「その時はその時としてあらためて話を聞く」と言った。
人間一人ひとりの性格の違いだけでなく、時代の流れ、ジェネレーションギャップ、互いの時代背景の違いが軋轢やすれ違いを生む要因の一つであることに間違いはない。
だが、それだけで全てがこうなってしまうとも言いがたいような気もする。暮らしの中でのコミュニケーションの不一致や衝突などの原因を「世代間におけるジェネレーションギャップ」だけにまとめてしまうと、かえって真実から遠くなるだろう。もしかしたら私たちは「信念」や「哲学」といったものに真剣に向き合う必要があるのかもしれない。
警察庁のまとめによると、昨年2025年の大麻事件の摘発者数だけでも前年比を上回る約6800人以上で過去最多となっている。
その主たる原因は、インターネットを悪用した入手ルートの広がりによって若者層へ蔓延したためとされてはいる。だが、こうした“エンドユーザー”の広がりは、すなわち売人の増加をも物語っている。増えた売人たちがどのようにして違法薬物を仕入れているのかを考えれば、外国人犯罪者たちの暗躍と無関係だとは言い難い。
「人間とは何か」の重要性
警察庁は、事件の高度化や専門化、国際性の高まり等に対応するため、2026年4月に警察内部の構造改革指針をまとめた。そして、これからもあらゆる面で国際的なデジタル化の波は止まらない。
世界中の国々はインターネットのお陰でもっと便利でもっと合理的になって社会がもっと成長していくだろう。だからこそ「人間とは何か?」と泥臭く見つめ直して、時にはあらためて「道理」や「道徳」について学び直してみるのも人間の成長に役立つかもしれない。
第1回【「なんで正月飾りや門松なんて売るんです?」 兄貴分に命令されても「ネット検索」で“ウラを取る”若手ヤクザ 暴力団“ジェネレーションギャップ”の実態】では、ジェネレーションギャップは学校や職場だけでなく、暴力団の世界でも珍しくないことを、意外な「ヤクザと門松の関係」を例にして藤原氏が解説する──。
藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』、『山口組東京進出第一号 「西」からひとりで来た男』、『闇バイトの歴史 「名前のない犯罪」の系譜』(以上、太田出版)など。
デイリー新潮編集部
