元NHK・和久田アナが移籍した「セント・フォース」強さの秘密 「スキャンダルなし」「足で稼ぐ営業力」
元局アナが多い理由
NHKを退職した和久田麻由子アナウンサー(37)の新所属先となったことで、芸能プロダクション「セント・フォース」への関心が高まっている。同社には和久田アナ以外にも読売テレビ出身の川田裕美アナ(42)やNHK出身の神田愛花アナ(45)ら売れっ子アナが数多い。どこが他社と違うのか。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
***
【写真】ヌーディーなドレスを身にまとった和久田アナ 披露宴での“魅惑”姿
セント・フォースは女性アナウンサー中心の芸能プロ。その誕生は1992年。別の芸能プロにいた久保地美晴氏によって設立された。温厚実直な人柄で知られる人である。
設立当初の所属者は元フィギュアスケート選手で、1994年から96年まで「ニュースステーション」(テレビ朝日)の気象キャスターだった大石恵(53)ら数人。それから急成長。今では約150人の所属者がいる。

特徴の1つは所属者に局アナ出身の有名アナが数多いこと。和久田アナ、川田アナ、神田アナのほか、元NHKの中井亜希アナ(58)、元日本テレビの西尾由佳理アナ(48)、同・後藤晴菜アナ(36)らがいる。
元NHKの草野満代アナ(59)は所属を解消したが、業務提携している。意外なところでは2年半前に日テレを退社したものの、同局「news zero」のMCを務める藤井貴彦アナ(54)。パートナーシップ契約を結んでいる。所属者に男性アナはいない。
なぜ、同社には局アナ出身者が集まるのか。第一に局アナだからこそ、同社と各局の関係が良好であることをよく知っているから。局との間に軋轢のある事務所だったら、局アナたちは所属しない。フリーアナは事務所が自分に合った仕事を用意してくれることを期待している。事務所と各局の関係が悪化し、それが出来なくなったら、所属している意味がない。
どうして同社は各局との関係が良いのだろう。まず、同社の出現まで報道・情報系の部署を積極的に訪れる芸能プロがほとんどなかったことが大きい。ビジネスになりにくいと考えられていたからだ。実際、報道・情報系の番組はドラマやバラエティと比べ、予算がかなり少ない。
1990年代後半から他社が追従するまで、各局の報道・情報部門は同社の独壇場に近かった。同社は両部門の社員と頻繁に会い、ニーズを聞き、MCやアシスタント、お天気キャスターらを派遣した。
各局には20〜40人の女性アナがいるものの、すべての番組を自社のアナだけでつくるのは無理だ。労働時間制限の問題がある。また自分の会社の局アナにはいないタイプの人気者も欲しい。そんなとき、要望とマッチする女性アナを派遣してくれるのが同社だった。
同社は足で稼いだだけではない。ビジネスモデルも新しかった。一例は地方局のアナのスカウト。現在では珍しくないが、最も早く本格的に始めたのは同社だった。
地方局から同社入りしたのはフジ系列・岡山放送の顔の1人だった今川菜緒アナ(29)。現在はTBSが運営するCS局「TBS NEWS」でキャスターを務めている。元ミスキャンパス同志社の準グランプリだ。
医師を目指して医学部を受験し続けたが、6浪しても願いはかなわず、福岡大理学部からTBS系列のテレビ山口に入った原千晶アナ(37)も現在は同社。その芯の強さに共鳴する人は多く、山口にはファンが多かった。今はTBS「THE TIME,」に出演中。ほかにも同社には地方局の元スターが数多い。
女性アナ志望者は大抵、全国のテレビ局の入社試験を受ける。在京キー局の女性アナの採用枠は数少なく、受かるかどうかは運次第のようなもの。在京局と地方局の合格者に目に見える差はない。だから地方局には逸材が隠れている。この点に早々と目を付けたのは鋭かった。
スキャンダルがない
新人のスカウティング能力も高い。同社が見出し、学生キャスターになった大学生が、後に在京キー局の入社試験に合格した例もある。俳優のスカウトの眼力と同じく、同社には女性アナとして大成するかどうかを見抜く眼があるようだ。
フジ「めざましテレビ」の3代目お天気キャスター・高樹千佳子さん(46)は久保地氏が「週刊文春」を眺めているときに見出した。有名な話だ。篠山紀信さんの撮影によるグラビア「女子大生写真館」に載っていた高樹さんを見て、スカウトに乗り出した。当時、高樹さんは横浜国大に通う学生。現在は一般企業に勤務している。
「めざましテレビ」の初代お天気キャスターはやはり同社の角田華子アナ(54)。現在の11代目・林佑香アナ(24)まで全員が同社所属なのだ。フジは途中で変える気にならなかったわけだ。
背景として大きいのは同社の女性アナがスキャンダルと無縁であること。約150人もいるのだから、何かあってもおかしくないが、醜聞はずっとない。獲得する際、やはり眼力で不祥事を起こしそうな女性アナは排除しているのではないか。
女性アナが不祥事を起こしたら、各局との関係は一瞬にして壊れる。情報・報道番組は信用とイメージを大切にするからだ。過去、ほかの事務所に所属していたニュース番組の女性アナは、取材対象である既婚政治家と路上でキスを交わしてしまった。それを知ったMCは激怒。番組から追放した。
NHKとの関係も良好
同社はNHKとも関係が相当良いことをうかがわせる。それは和久田アナのNHK退職劇にも表れていた。これからが働き盛りのエースアナが去るのだから、同局は断腸の思いだった違いない。しかし和久田アナの退職理由が家族との生活も大切にしたいというもので、所属先も同社だったから、静かに送り出したのだろう。
同社は同局に貢献している。NHK BSの看板番組「国際報道」(平日午後10時)のMCを2018年から3月末まで約8年も務めた酒井美帆アナ(35)は同社所属である。
酒井アナはこの番組を看板番組にした最大の功労者と言っても過言ではない。酒井アナを観たくて、この番組にチャンネルを合わせる人が増えたと言われた。総合でも未明に放送しているから目にした人は少なくないのではないか。その説得力のある言葉に感心した人もいるはずだ。
酒井アナは日テレ系列のテレビ新潟の元局アナ。日本女子大卒業後の2014年に入社した。当初からアナウンス技術に定評があり、17年には日テレ系列のNNSアナウンス大賞の最優秀新人賞を受賞している。ちなみに大学在学中にはミス日本コンテストにおいて、部門賞である「水の天使」に選ばれている。
酒井アナは現在、小休止中のようだが、いずれ次の番組に就くだろう。和久田アナの移籍騒動は一段落。次は水面下で酒井アナの争奪戦になるに違いない。
さて、和久田アナがMCの日テレ「追跡取材news LOG」(土曜午後10時)は25日放送の初回の個人視聴率が2.1%(世帯3.8%)だった。同じ時間帯の情報番組であるTBS「情報7daysニュースキャスター」は同6.0%(同10.4%)。大惨敗だ。
日テレの福田博之社長は「決して満足な数字ではなかった」と語った。もっとも、編成畑の長かった人なので、この数字は予想していたはず。視聴習慣は容易には変わらない。お気に入りのガムやタバコの銘柄を簡単には変更できないのと一緒。日テレは最初から長期戦と考えているのではないか。視聴率が取れないからといって、和久田アナに芸能ニュースやグルメ情報を扱わせても意味がないだろう。
スポンサーが簡単には取れない時代ながら、この番組はパナソニックホームズや花王、SUNTORYなど大手企業ばかり5社が付いている。「売れる番組」なのだ。和久田アナ効果に違いない。スポンサーは最低でも半年は下りられないので、そう慌てる必要はない。
この番組の強みは報道局の制作であること。情報系の「情報7daysニュースキャスター」はニュースランキングと称した1週間のおさらいが中心で、新情報が少ない。取材力のあるこの番組は多くの新情報が出せるはずだ。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部
