子供の足に異変「しゃがめない」「真っすぐ走れない」小学生が増加中。原因と下半身を鍛える3つのストレッチを解説
新学期が始まり小学校や中学校などでは子供の運動器健診が行われています。
その中の項目にあるのが「しゃがみこみ」。
子供がかかとを地面につけたまま、両手を横に下ろしてしゃがめますか?
かかとが浮いたり、両手を前に出さないと後ろに転倒してしまう人は骨盤の歪みや足の筋肉の衰え、かかとの弱体化など何らかの健康リスクが疑われます。
今こうしたトラブルが小学生に多く見られます。本当はかかとに原因があるにもかかわらず、それに気づかず「足首が硬いだけ」「しゃがめなくても困らない」と放置すれば今後の発育に大きな影響を与えかねません。
年1回の運動器検診は、こうしたトラブルを早期に発見して改善するために行われています。
アスリートゴリラ鍼灸接骨院の高林孝光院長の著書『しゃがめない人は不健康になる』(自由国民社)でも取り上げている、骨格を整え、かかとの機能を向上し、子供の健やかな成長をサポートする3つのストレッチを解説してもらいました。
ヤンキー座りは不健康
和式トイレが減り、しゃがまなくても履ける靴が人気を呼び、暮らしの中でしゃがむ機会が減っています。それに比例するように子供も大人もしゃがめない人が増えています。
「しゃがむ姿勢」はその人の健康状態を明確に映し出す鏡であり、しゃがむ姿勢が悪ければ健康に問題を抱えている可能性があります。まずは、正しい「しゃがみ方」を確認しましょう。
【正しいしゃがみ方】
・両足を揃え、つま先を正面に向けて立つ
・背筋を伸ばし、両手は太ももの横に置き、かかとを地面につけたまま膝を曲げる
正しくしゃがむためには、骨、筋肉、関節、姿勢、柔軟性のバランスが総合的に問われます。
しゃがんだ時、つま先立ちになったり後ろに倒れる人は骨盤が後傾しています。左右に傾く人は筋肉バランスの崩れやかかとの機能低下が疑われます。すねの前に痛みがある人は、すねの前の筋肉「前脛骨筋(ぜんけいこつきん)」が弱っています。
骨盤が後傾する理由はもも裏の筋肉が衰えて短くなり、お尻の筋肉を引っ張るからです。そうすると体は猫背になり、しゃがんだ時に後ろ重心になって転倒してしまいます。
転倒を防ぐために両足を開いてつま先立ちになったり、前傾姿勢を取って重心を前に保とうとします。この「かかと浮き」の姿勢はいわゆるヤンキー座りと呼ばれるものです。
かかと浮きの姿勢でないとしゃがめない人は体にさまざまな不調があることを長年の診察で発見しました。
かかとを地面に固定したまま姿勢良くしゃがめるようになる、かかとと下半身を鍛えるストレッチを3つ解説します。
1つ目は、骨盤を正しい位置に戻す「かかと骨盤起こし」です。
かかとに持続的な圧力をかけながら収縮したハムストリングス(もも裏の筋肉)を伸ばして後傾した骨盤を起こします。
骨格を正す「骨盤起こし」
【かかと骨盤起こし】
(1) 椅子に浅めに座り両足を床に着き、膝が90度になるようにする
(2) お腹と太ももをつけるように上体を前に倒し、両腕で太ももを下から抱えてももと上半身を固定する
(3)この状態でお尻を椅子から浮かせて膝を伸ばして10秒キープ
骨盤が立つと重心が体の中心に保たれるようになるので、しゃがんだ時に後ろに転倒するリスクが減ります。また、両足を床に固定することでしゃがんだ時にかかとが浮かない練習にもなります。
正座で「すね」ストレッチ
2つ目は、すねから足の甲に伸びる筋肉「前脛骨筋」を鍛えるストレッチです。
普段あまり意識することのない筋肉ですが、しゃがむ動作に欠かせない筋肉です。
【正座でかかとすねストレッチ】
(1)正座してクッションやタオルなどの上に両足のすねを乗せ、背すじを伸ばして10秒キープ
(2)同じ姿勢で足の甲を乗せて10秒キープ
筋肉は角度によって伸び方が変わります。クッションやタオル、枕などを使って正座の角度を変えることで、足首や前脛骨筋が伸びているのを実感できます。同時に上半身の体重がかかとにかかり良い刺激が入ります。
山登りをした時にすねの前が疲れるのは前脛骨筋が働いているからです。平坦に整備された道路環境では前脛骨筋を使う機会が減っています。その結果、筋力が衰え、しゃがめなかったり、つまずきやすいなどのリスクが増えています。
3つ目はアキレス腱を伸ばす「かかとふくらはぎストレッチ」です。
かかとに引っ張り刺激を与えながら、鍛えづらいアキレス腱を強化します。
かかとふくらはぎストレッチ
【かかとふくらはぎストレッチ】
(1)正座をした状態から右ひざを立て、両手の親指で足首のつけ根を押すようにしてかかとを床に固定
(2)その状態で前屈し、胸で太ももを床に向かって10秒押す
(3)左側も同様に行う
かかとに圧力を加えて強靭なかかとを作ると共に、ふくらはぎとかかとの後ろについているアキレス腱をしっかり伸ばします。
しゃがんだ時にかかとが浮く人はかかとへの刺激が足りていません。かかとは全身を支える土台であり、地面との接触状況を脳に伝えて体のバランスを保つ制御装置でもあります。
最近は真っすぐ走れない子供も増えています。この原因もしゃがめないリスクと関係があります。
しゃがんだ時にかかとが浮いてしまう子供は、バランスを保つためにヤンキー座りのように足を外側に開く癖があります。この動作を繰り返すと、ももの外側の筋肉ばかりが過度に発達し、内側の筋肉との筋力差が生じます。その結果、外側の筋肉が内側の筋肉を引っ張り、ガニ股走りになったり、走行時の方向のずれが生まれます。
さらに、かかとが不安定だと「利き足」による筋力の左右差も大きくなります。筋力差が顕著になると、真っすぐ走っているつもりなのに曲がってしまうのです。
真っすぐ走れない、走り方がぎこちない、といった症状は決して個性や運動音痴で片付けてはいけません。
大事なのは早期発見・早期対応です。小学校低学年くらいの段階であれば適切なトレーニングによって比較的短期間で改善が期待できます。
まずは基本となる「かかとを床に着けてしゃがむ」トレーニングをやってみてください。子供の体に起きている変化を重要なサインと捉え、今後の健やかな成長支援に繋げてほしいと思います。
高林孝光
アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長。はり師・きゅう師・柔道整復師の資格をもつ。アスリートに最大限のパフォーマンスを発揮させる「運動機能評論家」。主な著書に「しゃがめない人は不健康になる」(自由国民社)、「足が速くなる解剖図鑑」(エクスナレッジ)、「身長は伸びる」(自由国民社)などがある。
