かつて、訪日韓国人観光客の鉄板コースといえば、ドン・キホーテ、マツキヨでのショッピング、そして一蘭のカウンターでラーメンを啜(すす)ることだった。しかし今、SNSを起点に変化が起きている。

【画像】「えっ、こんなものまで!?」韓国人に人気のチェーン店とは…来店した“人気俳優”や商品を一気に見る(全17枚)

 すでに行ったことのある場所や定番の観光地を避け、あえて日本人の「普段の生活」を擬似体験しようとする人も増加中。多数のオリジナル商品が魅力の“あの店”、そして韓国にもある「GU」へ、わざわざ足を運ぶ理由とは? 今、韓国人がハマる日本のチェーン店について紹介する。(寄稿:K-POPゆりこ)


ドン・キホーテが人気だったが… ©AFLO

 観光庁の統計によると、コロナ禍前の2018年、日本を訪れた韓国人のうち、訪日回数が「10回以上」というヘビーリピーターの割合は約14.7%であった。さらに2024年のデータでは、この割合が19.3%まで上昇。今や日本に来る韓国人の5人に1人が、10回以上も日本を訪れている計算になる。さらに、日本を訪れる韓国人の総数自体も増加傾向だ(JNTO〔日本政府観光局〕の統計より)。2024年には約882万人、2025年には約946万人と過去最多を更新し続けている。

「有名な観光地はすでに行き尽くした」「定番のお店に飽きてしまった」。そんなリピーター観光客や、若年層はInstagramやTikTokなどのSNSを駆使し、ガイドブックにはない情報を追い求め始めている。

 また、「#일본쇼핑리스트(日本のショッピングリスト)」「#일본맛집(日本の美味しいお店)」などのハッシュタグを通じて投稿された誰かの口コミやおすすめは次の“定番”を作り出す。

 かつては「ドン・キホーテ」で食品やお酒、雑貨を、「マツモトキヨシ」などのドラッグストアで医薬品やコスメを買うのが韓国人観光客の“鉄板コース”であった。

ドンキ、マツキヨに次ぐ人気チェーン店

 現在も依然として不動の定番スポットとして支持されているが、ここ数年はそれらと並行して人気が急上昇している別のチェーン店がある。コーヒー豆と輸入食品を中心に扱う「カルディコーヒーファーム(以下、カルディ)」だ。

 カルディに立ち寄ると、まず店頭で試飲用コーヒーを受け取り、それを飲みながら迷路のような店内をぐるぐる歩いて商品を探索する。そんな独特のショッピング体験自体も、観光の一つとして親しまれている。

 筆者の知人の中には“パンダの杏仁豆腐”として知られる「ぷるぷる・とろりん・なめらか杏仁」や「シチリアン レモネードベース」を買いに日本へ行く、という韓国人もいる。

 数々の韓国映画、ドラマで主演を務める名俳優チャ・スンウォンも、YouTube番組の中でカルディを訪れ、「オレンジコーヒーが売り切れだったら、かなり落ち込むところだった」と言って「プライベートクラブ オレンジ(オレンジ味のインスタントコーヒー)」を購入していた。カルディは今や一般人から芸能人にまで広く知れ渡る日本のチェーン店となっている。

 SNSや韓国の旅行サイト上でよく見る人気商品は「ぬって焼いたらメロンパン」などパンに塗るスプレッド類、「焼豚はレンジで」「レンジで手羽唐揚!」などの簡単料理キットだ。「サラダの旨たれ」「いぶりがっこのタルタルソース」など調味料の評価も高い。輸入食品を多く取り扱う店舗でありながら、カルディのオリジナル商品や、日本ならではの味付けの食品に人気が集まっている。

あえて日本のお店で「韓国の味」を買う“逆輸入”現象も

 韓国人観光客によるカルディでの消費行動を探っていくと、興味深い事実が浮かび上がってきた。「チュモッパ(韓国おにぎり)の素」「キンパ(韓国風海苔巻き)の素」「ビビンバの素」など“韓国の味”も“日本の味”に並ぶ人気だという点だ。ごはんに混ぜるだけで完成する手軽さが評価されている。

 さらに無印良品で販売されている「コムタンスープ」「ユッケジャンスープ」など、あえて韓国料理のレトルト食品を買う人も。韓国にも無印良品の店舗があり、同様の商品が売られているが、日本風にアレンジされた味は全体的に辛さが控えめで、韓国の人にとっては新鮮な食体験として映っているようだ。

 そしてカレーも“マストバイ”として韓国のオンラインメディアやSNSで取り上げられている。韓国の無印良品にもカレーはあるものの、日本のほうが圧倒的に種類が豊富だ。さらに、SNSを通じて新製品情報も即時性高く届くようになったため、直近では日本で人気の「リンクルナイロン 大きく開くポーチ」にも注目が集まっている。

ユニクロではなく…入手困難のため人気のアパレル

 そして最近、たびたび筆者が韓国の友人たちに「日本で探してほしい」と頼まれるものがある。それはGUの服だ。中でも子供服に関する質問が多い。

 韓国の大手アパレル企業に勤める友人が、11歳の娘に「日本旅行でまた行きたい場所は?」と聞いたところ「大阪のGU!」と返ってきたそうだ。「ベーシックなユニクロよりもカジュアルで、遊び心のあるデザインが、子供や若者にとって魅力的に映るのでは?」と彼女は分析する。

 GUは2018年9月にソウルの「ロッテワールドモール」に韓国1号店をオープンしたものの、コロナ禍中の2020年に撤退。オンラインストア事業も同年7月末で終了となった。現在は韓国のユニクロオンラインストアで、一部GU商品の取り扱いがあるのみ。特に子供服やティーン向けの服は取り扱いがなく、入手困難となっている(2026年4月現在)。ただでさえリーズナブルな価格に加え、止まらぬ円安で割安感があること、韓国内で着ても“友達とカブらない”という点も魅力なのだろう。

日本のアニメやドラマで見た「日常の風景」

 さらにリピーターを中心に、「日本人の日常を知りたい、味わいたい」というニーズも年々高まっている。何の変哲もない日本の住宅地や公園、地方の町並みや電車をInstagramに投稿する人も目立つ。最初は渋谷のスクランブル交差点や東京ディズニーランド、道頓堀のグリコサインにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)といった定番スポットを訪れていた人も、何度か来日するうちに、別の風景を求めるようになるようだ。

 その背景には「日本のドラマやアニメに出てくる光景」を見てみたい、という動機がある。韓国における日本のコンテンツ(映画・アニメ・ドラマ)の人気が、ここ数年で「マニア向けのもの」から「大衆が楽しむもの」へと、パラダイムシフトしたことも影響しているだろう。アニメ映画では名探偵コナンシリーズをはじめ、『THE FIRST SLAM DUNK』、『すずめの戸締まり』も大ヒット、実写では『今夜、世界からこの恋が消えても』もTikTokなどのSNSから火がつき、約125万人を動員。実写日本映画としては『Love Letter』以来21年ぶりの快挙となった。

キーワードの一つは…

 日常を楽しむ旅行を象徴するキーワードの一つは、韓国の「スカイスキャナー」が2025年にトレンドワードとして挙げた「マート・アタック」だ。

 韓国ではスーパーマーケットを「マート」と呼ぶ。つまり「スーパーマーケットへ直行し、攻略(爆買い)する」といったニュアンスだ。免税カウンターの設置率が高い「イオン」や、「ライフ」「ロピア」などのチェーン系スーパー、そして高級志向の人には「成城石井」も人気が高い。また、北海道の「セイコーマート」など、その土地ならではの店を巡ることもリピーターのステータスとなっている。

 ホテルで食べるためのスイーツや惣菜から、チューブ入りのワサビやポン酢などの調味料まで。そして各スーパーのプライベートブランド(PB)商品にも注目が集まっている。韓国での口コミを見ると「値段以上に美味しい」「韓国よりもハーゲンダッツやウイスキーが安い」という声が。「가성비(カソンビ)」つまりコスパが良いという言葉が並ぶ。

 日本人の立場で考えると、現在の円安は決して手放しで喜べるものではなく、食品や衣類も徐々に値上がりしている感覚がある。しかし、さらなる物価高にあえぐ韓国人から見ると、「良いものがお手頃に買える」「新しい味に出会える」日本のチェーン店は魅力的な観光スポットのようだ。

(K-POPゆりこ)