「期待外れ」の声も…アメリカで評価が真っ二つの「BTS復帰」に重なる”伝説のスター”の名前

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ARMY(BTSのファン)ではない筆者が、初めてBTSのアメリカでの人気を「目撃」したのは2019年の大晦日、ニューヨークのイベント会場だった。取材中に突然メンバーが目の前を横切ると、現地のファンから黄色い歓声が湧き上がり、これはとんでもない人気モノを目撃してしまったんだと察した。

その後『Butter』や『Dynamite』といった耳に残りやすい軽快な曲を市内のあちこちで繰り返し耳にするにつれ、自然と彼らの魅力に引き込まれた。

韓国の兵役義務を果たすために表舞台から消えていったこと、そしてお務めを終え4年ぶりに復帰したことはいずれも筆者にとって関心が高く、アメリカでも大きな話題となっているのは言うまでもない。

復帰アルバム、ライブとともに米国でも活動再開

BTSは2025年にメンバー全員が除隊後、順次アメリカに渡り、ニューアルバムの制作に着手していたと伝えられていた。そしてついに3月20日(日本は21日)、4年ぶりとなるニューアルバム『ARIRANG』を携え、本格的にカムバックした。

翌21日、ソウルで行った復帰ライブ「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」はNetflixで世界中に配信された。当日だけで1840万人が視聴し、複数の国で視聴ランキングの上位に入るなど、好調な再スタートを切ったと伝えられている。

BTSは、アメリカ各地でも活動を本格化させている。

3月はニューヨークでもファンの前に現れる機会が多かった。SpotifyイベントSpotify x BTS: SWIMSIDE」で屋外ライブをしたり、NBCの人気トーク番組「 The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」に出演し、痛快なトークを披露したりした(会えない時間にメンバーの何が恋しかったか?」と聞かれたJiminは隣のSUGAの「1%のバッテリー人生」(エネルギーがないことの例え)と答えて笑いを誘った)。

印象的だったのは番組との特別企画で、グッゲンハイム美術館にも登場したことだ。この美術館はフランク・ロイド・ライトが設計したユネスコの世界文化遺産でもある。BTSはこの場でもファンを前に新曲を披露した。これまで、タイムズスクエアやグランドセントラル駅など市内の主要なランドマークでパフォーマンスをしてきたことがあり、この都市に新たな足跡を残した。

27日には、ニューアルバムの制作過程や復帰までの歩みを追ったドキュメンタリー「BTS: The Return」が Netflixで配信開始となった。

ワールドツアーも始まった

4月9日からは韓国公演を皮切りに、4年ぶりとなる待望のワールドツアーも始まった。17、18日は東京ドームだ。現段階では27年3月のマニラ公演まで続く。アメリカではカリフォルニア、ラスベガス、フロリダ、テキサス、シカゴ、ニュージャージーなどで予定されている。

アメリカではARMYでなくても比較的チケットが取りやすいとされているが、日本では抽選制度のため、参加できない人が続出しているそうだ。長年のファンの友人も、東京公演の抽選に当たらなかったと嘆いていた。

この原稿を書いている時点で、ニューアルバム発売から約3週間が経つが、好評だ。4月上旬時点で主要なビルボードチャートで初登場1位を獲得し、『SWIM』も複数のチャートで首位発進を飾った。

BTSの復活は世界的なニュースとなりライブ、グッズ販売、観光といった分野で「BTSノミクス」や「アーミーノミクス」という経済効果をもたらす起爆剤となっている。

復帰は「期待はずれ」という声も

より成熟した姿で「BTS2.0=第2章」をスタートさせたように見えるが、明るい話題ばかりではない。ニューアルバムが、有名音楽レビューサイト『Pitchfork』で厳しく評価され、SNSでは「期待はずれ」「微妙」といった声も散見される。

具体的な声を見てみると、「英語曲が多い」、「K-POP特有のサウンドではない」などが失望したファンの意見のようだ。

ただし3月23日付のニューヨークタイムズの論評は冷静だ。「BTSは芸術的な実験の余地を確保している」「安易な迎合をせず、かといって聴き手を圧倒しすぎることもない。むしろ作風は実験的と呼べるほど際どい領域に踏み込んでいる」と、攻めの姿勢や芸術的な挑戦として評価する一方で、楽曲構成の在り方には批評的な視線も向けている。

筆者もアルバムを聴いたが、これまでの軽快なヒット曲とは明らかに異なる「実験的な作品」という評価にはうなずける。一方で、一部のファンから厳しい声が上がっている点についても一定の理解はできる。

「期待外れ」「大誤算」などの感想は、21日の復帰ライブ後も上がった。

ライブ当日に周辺に集まる人出は最大で約26万人の予測があったが、実際この日のチケットを手にできたのは2万2000人で、周辺を含めても半分にも満たなかったと複数のメディアで伝えられている。その背景として、22年のソウル梨泰院雑踏事故の教訓を踏まえ、現地当局が厳格な安全対策を講じたことが影響しているとみられる。

アメリカ音楽業界歴史的先例があった

最後に興味深いアメリカでの報道として、ニューヨークタイムズの3月21日の朝刊についても触れておきたい。同紙はBTSの復帰を「一面かつ写真付き」で大々的に報じている(写真はメンバーのRMとVの2人が花束を抱え敬礼している)。

ニューヨークタイムズといった有力紙でこのような「特別枠扱い」がいかに異例のことかは、同じく3月に行われた日米首脳会談の記事との比較からもわかる(同首脳会談の翌日、一面に掲載されたのはトランプ大統領の写真で、会談自体の報告は中面での扱い)。

記事の内容も興味深かった。当時アメリカには徴兵制度があり、ロック界の最前線で人気絶頂だったエルヴィス・プレスリーが召集されたのは1957年12月、22歳の時。「BTSはプレスリーの例に倣うことができるか?」「アメリカの徴兵経験スターの再起を再現できるだろうか?」と読者に問いかけた。

プレスリーが軍務を終え戻ってきた際、将来の展望は不透明で、スキャンダルや事故でロック界全体が揺らいでいた。「BTSはいつか思い知ることになるかもしれない。音楽界というものは本人が離れている間に驚くべき速さで様変わりするものだ」と記事は述べている。

58年3月、任務開始のために地元の徴兵センターへ出頭したプレスリーは軍務を全うし、2年後の60年3月に名誉除隊となった。兵役中、彼はファンから忘れ去られたのではないかと心配したそうだが、故郷への帰路では各地で数千人規模の熱狂的な歓迎を受け、その懸念は杞憂に終わった。さらに興味深いことに、入隊前の彼はフランク・シナトラと同様に、保守的な人から眉をひそめられることもあったそうだが、退役後は軍務を全うした者だけがまとう、社会的に認められた『立派な人物』としての輝きを身につけていたと評されている。復帰後はすぐに『Stuck on You』『It’s Now or Never』といったヒット曲を放ち、順調にキャリアを再開した。

戦後81年の日本、特に若年層にはピンとこないかもしれないが、退役軍人が広く敬意をもって受け止められるアメリカ社会においては、(韓国の)兵役義務を果たしたBTSというアーティストに対し、尊敬の眼差しが向けられていることもまた否定できない事実だろう。

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