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バラエティ番組『相席食堂』(4月7日放送)で、出演した女性声優に対する不適切な行為があったとして、ABCテレビが該当のシーンを削除した。

問題となったのは、ロケ先のうなぎ店で串打ち体験に取り組む女性声優に対し、男性店主が腰付近に両手で触れた場面だ。さらに、その様子をスタジオの芸人が「笑い」に変える演出も、そのまま放送されていた。

同局はメディアの取材に対して「出演者に対する不適切行為があったことは確認しております。局として普段から人権に対し、十分に注意するよう務めて(※報道ママ)おりますが、今回は認識が甘かったと反省しています」(日刊スポーツ・4月13日)と回答している。

しかし、ABCテレビは直近でも『探偵!ナイトスクープ』の編集をめぐって問題を指摘されたばかりだ。今回の対応も含め、局としての「社会常識」や「人権感覚」の欠如があらためて露呈したと言わざるをえない。

こうした問題がなぜ繰り返されるのか。その背景を考えたい。(テレビプロデューサー・鎮目博道)

●「カットすべき」そんな次元の出来事ではなかった

『相席食堂』の問題のシーンを見て、強い違和感を覚えた。「カットすべきだった」という次元の話ではない。

若い女性の腰付近を男性が触る──それ自体が到底許されない行為であり、本来であれば、その場でディレクターが撮影をストップし、男性に注意すべき事案だった。

一般的に、親しくもない相手から身体を触られたら、不快に感じるのは当然だ。しかし、ロケの現場では「進行を止めたくない」とか「空気を壊したくない」といった理由から、出演者は嫌なことがあっても拒否の意思を示しにくいものである。

●制作サイドに求められる「出演者保護」の視点

だからこそ、制作側には出演者を守る視点が必要だ。

現場で速やかに注意し、「大丈夫か。ロケを継続できるか」と出演者の意向を確認したうえで、必要であれば男性店主に謝罪してもらったり、ロケ中断を含めて判断すべき場面だった。

もっとも、『相席食堂』は、出演者(放送回では『M!LKの塩崎太智さん』)がロケ先を歩き回りながら、事前のアポなしで、出会った人たちと「相席」をする形式の番組であり、飲食店の撮影協力が得られなければ成立しにくいところもあろう。制作側から店側に強く言いにくい背景もあったのかもしれない。

それでも、出演者の安全や尊厳より優先される理由にはならない。

●一度ならず二度までも止められなかった

さらに問題なのは、男性店主が1人だけでなく、別の女性出演者にも同じように「軽く腰を触る」行為を繰り返していた点だ。しかも、まったく悪びれるそぶりもなく、結果的にそれが放送された。

現代の感覚からすれば、男性の行為は明確に「アウト」と言わざるを得ない行為である。カメラが回っている状況であっても、あのような行為に及ぶ人がいることに驚いた。

●「笑い」に変えたスタジオの責任

そして、この問題をさらに深刻にしているのがスタジオの演出だ。

スタジオで収録を眺めるMCの千鳥が「ちょっと待てい」ボタンを押して映像を止め、「ケツ触ってた?」とツッコミを入れるなど、問題の場面を“いじる”構成になっていた。

さらに、スタジオトークの間、女性が腰を触られたシーンを強調するために、フリーズされた状態などで何度も繰り返し放送されており、タチが悪い。

被害を受けた側が、番組に遠慮して言えなかったとしても、不快に感じた可能性は高く、繰り返し女性が腰を触られる映像を見せられて不快に感じた視聴者も多かったはずだ。

●なぜ放送前に止められなかったのか

最終的に炎上を受けて、ABCも削除したわけだが、番組の完成試写などでチェックしたプロデューサーなど、局の上層部は、「多くの人を不快にする」という認識を十分に持っていなかった可能性がある。

こうした試写でコンプラチェックしていながらも(していなかったらそれはそれで別の問題がある)、問題に気づかないどころか、“面白い”と笑っていたはずの「ABCの偉い人たち」の感覚が問われるだろう。

●ナイトスクープ問題に通ずる無神経さ

よく、高齢の政治家や経営者などが「こういうことは言わないほうがいいのだが」とか「こういうことを言うとセクハラと言われちゃうんだけど」などと前置きを言ってから問題発言をして炎上することがあるが、それと似ていないだろうか。

「ツッコミを入れれば多少のセクハラなら笑って済まされる」といった発想が残っているとすれば、それは時代とのズレでしかない。

そんな誤った認識の人がテレビ業界にまだいるのが露呈したようにも思う。非常に恥ずかしい。

ABCテレビは『探偵!ナイトスクープ』でも、同様に演出をめぐる批判を受けたばかりだ。厳しい言い方かもしれないが、このままでは過去に批判を受けたライバル局の轍を踏むことになりかねない。

局として、より深刻な危機意識を持ち、再発防止に向けた具体的な改善が求められるだろう。