小湊鉄道の「春」ピンチ…桜並木や菜の花畑を維持する住民は高齢化、キョンやシカの食害も
千葉県市原市などを走る小湊鉄道の沿線をこの時期、美しく彩る桜や菜の花の多くは、地域住民によって維持されている。
人気の撮影スポットとなっているが、住民の高齢化や動物による食害などで維持が困難となる地域もある。住民らは「この景色をなんとしても維持しなければ」と危機感を募らせている。(大治有人)
「撮影スポット、決めました?」「俺はここから撮ろうかな」
春らしい陽気となった3日、同市の飯給(いたぶ)駅近くの田んぼに、カメラを手にした多くの人が集まっていた。お目当ては、列車と桜が、水を張った田んぼに反射する景色。田んぼの隣には菜の花も咲く。松戸市の男性(66)は「桜、菜の花、鉄道のコントラストがきれい。いい写真を撮りたい」と声を弾ませた。
景観のために水田を借りて水を張る
全国から写真愛好家や鉄道ファンが訪れる人気の撮影スポットとなったのは、地域住民が中心となって約20年前に行った桜の植樹がきっかけだ。以前からあった桜は老木となり、美しい桜並木を長続きさせようと、約20本を新たに植えた。10年ほど前から美しい花を咲かせるようになった。
維持管理も住民が中心となって行う。田んぼは松本靖彦さん(82)が借り受けたもので、米は栽培しないが、景観づくりのために水を張り、清掃を続けている。
一方、住民の高齢化が進み、肥料代も高騰し、「維持は本当に大変」と松本さん。そんな中、最近では田んぼの清掃などを手伝ってくれる写真愛好家らもいるという。松本さんは「全国から訪れた人が『きれい』と言ってくれるのが励み。この景色を維持していきたい」と語る。
メンバー半減「やれること限界がある」
列車が一面に咲いた菜の花畑を通り抜ける景色で知られる「石神なの花畑」も、沿線を代表する撮影スポットだ。だが、今年は菜の花が一本も咲いていない。
ツーリングで訪れた相模原市の会社員男性(53)は「数年前に訪れた時はきれいに咲いていたのに、残念……」と肩を落とした。
菜の花畑は約20年前、地域住民が休耕田に種をまき始めたのが始まり。住民らでつくる「石神なの花会」が維持してきた。だが、5年ほど前から茎が細く短くなり、咲き方もまばらになった。

原因の一つは土の栄養不足という。菜の花は秋の間に十分成長すると冬を越せるが、畑の養分が足りないため、冬の間に枯れてしまう。冬を越せたとしても、キョンや鹿などに食べ尽くされてしまうという。
同会の高橋洋介さん(37)は「原因はわかっても、やれることには限界がある」と嘆く。同会は高齢化が深刻で、70〜80歳代がほとんど。当初20人ほどいた会員も10人以下まで減った。肥料や、獣害対策の電気柵の費用をまかなうのも難しいという。
今年も種をまく予定で、寄付を募ることも検討する。高橋さんは「訪れる人の喜ぶ顔が地域にとっての励みになる。かつてのように見事な菜の花を咲かせたい」と話している。
