松本若菜、主演ドラマ『対決』で初の新聞記者役「消しゴムハンコの告知はちょっと義務的に。それでも、やっぱり何かを作ることは楽しい」
30代後半、ドラマ『やんごとなき一族』でヒロインの義姉役でブレイクした松本若菜さん(42)。2024年から3クール連続民放のGP帯ドラマで主演を務めた人気俳優が挑むのは社会派ドラマ。医大が入試の採点過程で女子学生だけ一律減点をしていた疑惑を追う記者が主人公のNHKプレミアムドラマ『対決』(BS、4月5日放送開始、毎週日曜午後10時 全5回)だ。主人公の新聞記者・檜葉菊乃を演じる。「こんなに骨太なドラマは初めて」と語る松本さんに作品に込めた思いを聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部 油原聡子 撮影:本社・武田裕介)
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物語に入り込んで
「私自身、こんな骨太なドラマに主演させていただくのは初めてでした。難しい題材で、立場によって見えてくる景色が変わってくる。第1回の試写を見た時、客観的でいようと思ったのに、物語に入り込んでしまうという不思議な体験をしました。菊乃の視点でドラマがスタートしますが、いろいろな視点で見ることができるドラマ。何かを感じ取ってもらえたら、それはドラマを作った意義につながるのではないかと思っています」
演じる檜葉菊乃は、新聞社の社会部で検察を担当する記者。シングルマザーで娘の麻衣子は医大合格を目指す受験生だ。菊乃は抜擢ともいえる異動で検察担当になったものの、同僚の男性記者とうまくいかない。そんな時、菊乃が偶然つかんだのが、統和医大の入試の採点過程で女子学生が一律減点されているという噂だった。

松本若菜さん
関係者を取材すると、噂について否定する人はおらず、むしろ暗黙の了解として業界で共有されていたことが分かる。出産や子育てでキャリアが中断してしまう女性が減点されるのは医療現場の厳しい現状を考えるとやむを得ないという意見が大半だった。女性医師までもが「悔しいけれど仕方ない」と話す。菊乃は複雑な思いを抱きながら取材を進めていく。
人間味あふれる記者に
初めての新聞記者役。撮影前に、制作側からは新聞社や取材先である大学の組織図など大量の資料を渡された。池田千尋監督からは、「ステレオタイプな新聞記者にしないでほしい」というリクエストがあり、人間味のあふれる女性記者を意識して演じた。
「菊乃は記者として、社会に理不尽なことをどうやって伝えていくか、使命にも似た熱い思いを持っている女性です。物語が進むなかでいろいろな出会いがあり、女子一律減点という理不尽な問題に立ち向かっている自分は正しいはずなのに、不安になる。自分の弱さを再確認してしまいます。短い間に感情が揺れ動く経験をしました」

松本若菜さん
印象に残っているのが、第1回の終盤、菊乃が「戦うために書きたい」と決意する場面だという。
「菊乃が何と戦っているのかというと、過去の自分だと思いました。菊乃がずっと我慢してきたものは、見る人によっては我慢ではなくて身を守るための勝手な行動だったのかもしれない。仕事の第一線で働くためには、常に疑問を持つよりも、どうやってその場を乗り越えるかを考えてきたことが多かったと思うんです。でも、そのままだと娘の世代の未来が明るいものにならないと思って、自分は戦いますと宣言したんだと思います」
菊乃は、鈴木保奈美さん演じる統和医大の理事・神林晴海が事件のカギを握ると感じ、取材を試みる。神林は男社会の医大で出世しているものの、事務畑出身。部下からの人望はあり、大学内にはびこる差別やハラスメントに憤りを感じてはいるが、スキャンダル報道による混乱は防がなければならない難しい立ち場だ。
入試での女子差別を報道したい菊乃と、問題を外に知られないようにしなければならない神林。言葉少ないながらも大学を守ろうとする神林の迫力と、必死に言葉を紡ぐ菊乃が対決するシーンはドラマのみどころの一つだ。

(『対決』/(c)NHK)
「監督から新鮮な気持ちで演じてほしいと言われていました。撮影に入る前に、本読みで保奈美さんとご一緒させていただいたんです。でも、撮影現場での保奈美さんは本読みの時とは全く違うお芝居で、新鮮な気持ちになりましたし、動きが加わるからかすごく説得力があったり、台本を越えて、お芝居を越えて松本若菜として感じる部分がたくさんありました。保奈美さんからいただいたパワーがきっと映像に出ていると思っています」
グレーでいいじゃない
直情的な菊乃はうまく神林の心を開くことができないが、ある事件から物語は思わぬ方向に展開し…。
「菊乃はどちらかというと、話し合いをちゃんとした上で白黒つけたいタイプ。私も同じようなタイプだと思っています。でも、撮影を通じて私の考えが変わった部分があって。白黒つけたほうがみんなで一つの方向に走りやすいかもしれないけれど、だからといって幸せになるとも限らない。今は、時と場合によりますがグレーでいいんじゃないかなと思うようになりました」

松本若菜さん
2022年にドラマ『やんごとなき一族』のヒロインのエキセントリックな義姉役で注目を集めて以降、話題作への出演が続いた。2024年から3クール連続民放のGP帯ドラマで主演。俳優としての存在感を増している。「体力的にきついときもあります。でも、役をいただけるのはありがたいこと」と語る。「あの時こう演じたらよかった」という後悔もあるが、「いきいきと役を演じられた」という達成感が芝居を続ける原動力になっている。
プライベートでは、手芸やDIYなどの手仕事を楽しむ。インスタグラムなどSNSで作品を投稿し、注目されている。最近では、消しゴムハンコを作って、出演作品を宣伝することも多い。
「消しゴムハンコは、文章だけで告知するよりも、何かあったほうがみなさんのお目に留まるかなと思い始めました。最近では、何を作るのか楽しみにしてくれている同業の方もいらっしゃるので、ちょっと義務化していますが、やっぱり次はどうしようかな、何を作ろうかなって考えることが好き。『対決』も作りました。ドラマと一緒に楽しんでいただければ嬉しいです」
