元子役・東京育ち・36歳の私が“地縁”に憧れて始めたこと「東京に実家があるありがたみを噛みしめろと言われるけれど…」
 橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(36歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。

 そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けするエッセイ連載。今回は宇野さんが横須賀の副業プロジェクトに参加した際のエピソードを綴ります(以下、宇野さんによる寄稿)。

◆地縁を求めて副業プロジェクトに参加

 里帰りという概念がほぼないまま生きてきた人生です。

 皆さま、ご機嫌よう、宇野なおみです。梅に河津桜、桃の花、あちこちが春めいてきましたね。

 サクラ咲くのをお待ちの方も多いのではないでしょうか。そして、何やらくしゃみの声もあちこちから聞こえてまいります。ハクション。

 実は2月末まで、神奈川県は三浦半島の「副業プロジェクト」なるものに参加し、横須賀の地元メディアの記事制作に関わっておりました。冒頭に書きました通り、わたくし、生まれこそ岡山県倉敷市ですが、ほぼ里帰りという経験がありません。赤子の頃に東京に引っ越し、祖父母が東京に来ていたためです。

 人様からは東京に実家があるありがたみを嚙み締めろと言われる一方で、お盆や年末年始の帰省なるものに憧れがありました。新幹線や飛行機のチケットが高い、お子さんを連れていたら長時間の移動は大変。そんなことを思いつつ、憧れとは無責任なものです。浅はかで申し訳ない。

◆里帰りという単語に憧れ

「地縁」という言葉がありますよね。土地を媒介とした社会的な関係を指す言葉ですが、土地そのものの縁というものもあるなと思っています。私は港区に行く機会が多いんですが(高校・港区、TBSの所在地・港区、今までのバイト先全部が港区)ご縁があるかというと、さてな……。という感じでして。

 港区って振り向いてくれなさそうじゃないですか。いえいいエリアですよ! 図書館がめちゃくちゃ充実していて。よく行く場所では図書カード作るタイプの人間です。

 副業プロジェクトに応募したのも、地元密着のメディアで取材し、記事を作るという内容の面白さと同時に、「自分なりの地縁」を作ってみたかったからでした。

 副業の募集って経営企画とかWebサイトの制作や広報・PR領域での募集が多くて、私には手が出なかったんですよね。書き手の募集があったのもうれしかったです。

 かなり応募があったようですが、幸い採用していただき、月に1回以上、横須賀に通う日々が始まりました。

◆地縁がなければ作ればいいじゃない!

 最初は横須賀に行くための京急線になじみもなく(笑)、どこに連れていかれるのか、ちゃんと目的地で降りられるのか不安になりながら乗っていました。電車を間違えると、戻るのに時間が想像以上にかかるし、乗りはぐったら数十分違いが出てしまうし……おろおろし通し。はじめてのおつかいかな?

 いろいろなプロジェクトがあるため、初日に交流を深める意図もあるフィールドワークであちこちまわりました。その時、ちょっと車で移動するだけで、まったく雰囲気が違うことにも驚きましたね。三崎、三浦海岸、葉山、横須賀……「三浦半島」というエリアは一緒なのに、まるで違う!

 考えてみれば東京も同じで、同じ23区でも歌舞伎座のある中央区と親戚の家がある練馬区では、まったく違います。練馬区には「練馬大根引っこ抜き競技大会」なるものがあるんですよ。いつか参加したい。

 中でも、「谷戸」というエリアには驚きました。横須賀のあちこちにある集落なんですが、急こう配の山の上にあるんですよ。崖かな!? と思うようなところに家があったりします。谷戸で民泊を行うプロジェクトの取材もしたのですが、駅からほど近く、交通量の多い車道のすぐ上だというのに、とても静かで、森の香りがする場所でした。