◆スカジャンと着物の思いがけない繋がり

 もうひとつカルチャーショックだったのは、「スカジャン」。文字通り横須賀発祥と言われる、主に男性が着用するサテン生地のアウター。

 コンピューター刺繍が主流となった中、「横振り刺繍」という刺繍技術を使い製作する職人・アーティストさんの取材もいたしました。わたくしはあまりそういった文化に詳しくなく、『王様の仕立て屋』(集英社)という漫画で読んだ程度の知識しかなかったです。

 しかし、「横振り刺繍」は着物の刺繍と深い関係があるとのこと。思わぬ繋がりにびっくりしました。考えてみれば当たり前ですよね、日本の刺繍文化の中でスカジャンが生まれてきたわけですから、根源には着物がある。

 工場にお邪魔した時に「へ〜なんか打掛みたいな刺繍、歌舞伎の舞台でよく見るや〜つ」とか思っていたのはあながち間違いではなかったのです。

 職人さんの手仕事を間近で見られたのも感動でした。横振り刺繍では「木枠」を使うのですが、型を作れる職人さんがいないそうで……。どこか作れるところがあればいいのに、とか考えておりました。

 他にも築100年を超える古民家のカフェについて取材して、コーヒーの奥深さを聞いたことも。エッセイのほかには歌舞伎、アニメ・漫画、芸能人の方のインタビューなどが最近多かった私にとって、新鮮なお話ばかりで、原稿を書くのも楽しかったです!

◆自分はここにかかわりがある人間、と思ってめぐる街の面白さ

 副業プロジェクトでは受け入れ先の方々のお話を聞く機会もあったんですが、皆さんとてもオープンマインドでパワフル。自分の地元を、移住した場所を良くしたい、という思いがあふれていました。

 通ううちに、「自分は半分地元民」みたいな感覚も生まれてくるんですね。ヴェルニー公園でぼけ〜っとしたり、三笠のショップに行ってみたり。護衛艦「かが」の姿を見かけたり。やたら安い八百屋さんでみかんを買って、抱えて帰ったこともあります。

『あおざくら』(防衛大学を舞台にしている漫画)を読んでいたので、防衛大の制服姿を見かけてあっ!てなっていました。宇野さんって漫画の知識しかないのかしら(艦これもわかりますよ!)。

 ただ観光や遊びに来るのではない来訪は、ちょっと面映ゆく、また、うきうきするものでした。

◆挑戦する人を目の当たりにして

 今回の副業プロジェクトは、自分にとって大きな経験となりました。まず、見知らぬ土地に飛び込んで、チームを組んで活動したこと。大変ですが楽しかったです。また、その中でたくさんの方を見て、挑戦する姿勢を間近に見られたことも貴重な経験でした。

 高校中退早稲田卒とか、いきなりフリーでライターをやるとか、リスクを取るタイプだと言われがちな私、実は相当なビビりです。いつだって失敗は怖いし、覚悟を決めるのに時間がかかります。

 今回、副業人材の受け入れ先は、スタートさせたばかりの方、形態を変えたばかりの方、さらなるブラッシュアップを望む方など、状況も職種もさまざま。また、三浦半島で開業に挑戦する方々ともご一緒しました。

 人間は失敗を改善しながら、前に進んでいく。横で取材をしながら強く感じました。

 そうそう、来年の大河ドラマでは、この横須賀の立役者、小栗上野介忠順(おぐり こうずけのすけ ただまさ)が主人公です。松坂桃李さんが主演の『逆賊の幕臣』。ヴェルニー公園にはこの小栗さんの胸像がありますよ。

 せっかくできた地縁を、今後も活かしていきたいです。「地縁」も、まだまだ増やしていきますよ〜!

 ……などと書いていたところ、母からパーカッショニストだった亡き祖父の血縁が横須賀に住んでおり、母や伯母は幼少期、横須賀中央の文房具屋さんに連れていってもらった、などという話がまろび出てきました。

 おそらく、私が「半分地元民」感覚で買い物に寄ったところだと思います(創業が明治の文房具屋さんでしたので)。

 なんとまあ、びっくりです。3月生まれで、可愛がってくれた祖父からの「逆誕生日プレゼント」だったのかもしれません。

<文/宇野なおみ>

【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中