「触るのが怖い」「LEDと誤解」…国内67万台でも認知度がこんなに低いワケ。AEDおもちゃ開発者の思いとは
おもちゃではありながら「AEDの再現」にはこだわったという、坂野さん。製品では「体から離れてね」「心臓マッサージしてみよう」などの音声が流れ、ぬいぐるみなどに本物さながらの電極パッドを張り付けて、AEDの操作方法を学べます。約2年ぶりの再販製品では「より使いやすいものに」との思いで、改良を加えたといいます。
「まず、音量調整の機能を付けたんです。当初の製品ではご家庭での利用をイメージして、音量を70dB(デシベル)に設定していたんです。ただ、幼稚園や防災イベントで使っていただく中では『音が小さい』という意見が寄せられて、周囲の騒音が目立つ場所でも使えるように、音量の大小を切り替えられるようにしました。
◆世代を超えてAEDの「認知サイクル」を作りたい
AEDによって、いわゆる「電気ショック」での応急処置が一般にも解放されたのは2004年7月でした。そこから20年以上が経ち、日本国内での現在の設置数は約67万台といわれます。学校やショッピングモールなどでみかけるようになった一方、その正しい扱い方などの「認知をより広めたい」と、坂野さんは意欲を示します。
「いまだに『LEDですか?』と聞いてくる方もいますし、電気ショックを扱う医療機器なので『怖い』という方もいます。実際に倒れた人を前にして使おうとしても『音声ガイドが流れると知らず、パニックになってしまった』という経験者の方もいました。
一般への解放から20年以上が経ち、設置台数が約67万台に達しても『人の知識が追いついていない』のが、社会的な課題だと思うんです。AEDの講習会などを開催している事例もありますが、集まっているのは『知りたい』と考える人たちなので、興味のある方の知識が高まっている一方、興味のない方々は構造として置いていかれてしまう。
僕らが今やっているのは興味から学びにつなげる『AEDに対する認知サイクル』を作ることです。近い将来『トイこころ』でAEDを知った子たちが大人になって、さらに、下の世代へ広めてくれるような社会になるのが理想です」
◆10年先、20年先に「誰かを助ける大人」になってくれたら
AEDの認知を広めるためのペーパークラフト、おもちゃの先には「絵本」の構想も。
「子ども向けの製品をきっかけとして『この機械は何をするためのモノなんだろう?』と興味を持ってくれるなら」と、坂野さんは語ります。そして、そう思い描く背景には「学び」への熱意もありました。
「何かを学ぶ究極形は『自分から学ぶこと』だと思うんです。僕が広めたいAEDへの認知も例外ではなく『学びたい』と思う人たちを増やすのが、近道だと思って活動しています。『トイこころ』で遊んだ子たちが10年先、20年先で『誰かを助ける大人』になってくれるのならうれしいし、僕らのたどり着きたいゴールです。今日明日で実現できるものでありませんし、どれほど長い道のりであっても、一歩一歩を着実に踏んでいきたいと覚悟しています」
<取材・文/カネコシュウヘイ>

