ハワイは今や“高嶺の花で論外…「国内で満足」「海外は台湾や韓国」変わる日本人の家族旅行
今の時期、5月のゴールデンウィークの予定をどうするか考えている人も多いでしょう。かつては家族旅行といえばハワイやグアムといった海外も身近な選択肢でした。しかし円安と物価高のいま、海外旅行は気軽に行けるものではなくなりつつあります。日本人の旅のスタイルは、いまどのように変わっているのでしょうか。
ハワイは贅沢すぎて「そもそも選択肢にない」
「海外旅行って、庶民でも手が届くイベントでしたよね。うちの父もごく普通の会社員でしたけど、家族でハワイやグアム、サイパンに連れて行ってくれましたから」
そう話すのは、神奈川県で暮らす会社員・山本健一さん(仮名、46歳)。妻と中学生、小学生の子ども2人の4人家族です。世帯年収は900万円台後半。日本では平均より高めの水準ですが、それでも海外旅行は“背伸びをしていく場所”だといいます。
「今は国内旅行が基本。海外は台湾や韓国なんかの近場にLCCで行ければ満足です。子育てにお金がかかるし、自分たちの老後資金も必要。ハワイは『朝食だけで1人5,000円かかる』と聞くし、夢のまた夢ですかね。そもそも候補に入れていません。」
航空券も現地の物価も大幅に上昇しており、家族4人でゴールデンウィークに4泊6日、ハワイに行くとなれば、予算は100万円では収まらず、150万〜200万円というケースも珍しくありません。
1980年代に始まった海外旅行ブーム
日本人の海外旅行が本格的に広がったのは1980年代。1980年に約390万人だった日本人の出国者数(実際に出国したすべての人・回数の合計)は、1990年には約1100万人へと急増します。背景には、1978年の成田空港開港や1985年のプラザ合意後に進んだ急激な円高、そしてバブル景気による消費拡大がありました。
海外旅行は「一部の人の特別な体験」から「多くの人が楽しむレジャー」へと変わっていきます。その後も海外旅行は日本人の娯楽として定着し、出国者数はゆるやかに増加。コロナ禍直前の2019年には、ついに約2000万人に達しました(日本政府観光局の統計データより)。
しかし、コロナ禍に入ると国境は閉ざされ、日本人の出国者数は激減。2021年には約51万人で底を打ち、2023年には約960万人、2024年には約1,300万人、2025年(推計値)は約1,473万人。回復はしているものの、2019年の水準には遠く及びません。
インフレ・円安の影響で「安い日本」「高い海外」に
その背景には世界的なインフレと円安があります。2022年ごろから本格的な円安傾向となり、海外での支出は日本人にとって割高になりました。さらに日本では賃金の伸びが鈍く、実質賃金は減少傾向が続いています。
一方で、2025年の訪日外国人数は約4,268万人と過去最高を記録。日本人の出国者数は約1,473万人にとどまり、「外国人が日本に来る数」のほうが、「日本人が海外へ行く数」を大きく上回る状況です。
散々言われてはいますが、海外から見ると日本は円安によって「安い観光地」に。日本人にとっては、海外が「高すぎる旅行先」になってしまったのです。
さらに、日本人のパスポート保有率は約18%(2025年時点)。つまり国民の8割はパスポートを持っていません。2010年代には22〜25%程度で推移しており、将来的にはさらに増えると予想されていましたが、実際には減少。今年7月からの申請手数料の大幅値下げの効果が注目されています。
国内旅行のレベルアップも背景に
中東情勢の緊迫化を受けて原油価格が高騰しており、燃油サーチャージや航空券価格の上昇は避けられそうにありません。海外旅行は一部の人のものになりつつあります。ただし、海外ではなく国内旅行を「あえて選ぶ」という人もいます。
温泉や四季の自然、地域ごとの食文化など、日本はもともと観光資源が豊富な国。個性ある宿泊施設やリノベーションされた古民家宿、地域色を打ち出した観光コンテンツなども増え、国内でも十分に非日常を味わえる環境が整ってきました。
移動時間が短く、短い休みでも楽しめる点も国内旅行の大きな利点です。治安や文化の違いへの不安も少ない。いくら“安い”といっても魅力がなければ外国人観光客は集まりません。遠くからわざわざ来たがる国なのですから、日本人が国内旅行を選ぶのも、ある意味当然といえます。
海外旅行が特別なものになりつつある一方で、国内旅行の満足度は高まり続けています。かつては「海外か国内か」で語られていた旅行の選択肢も、その価値観自体が少しずつ変わり始めているのかもしれません。
