関連画像

写真拡大

立花孝志氏が党首を務める政治団体「NHKから国民を守る党(NHK党)」が3月3日、党の「休眠」を公式サイトで発表しました。

NHK党は公式HPで「党首・立花孝志より、先週2月27日(金)に『党の休眠』方針が示されました」と発表。勾留中の立花氏との連絡については、「弁護士を通じて書面により現状を可能な範囲で伝達し、その内容を踏まえた上での判断」としています。

「党としての活動は休眠となり、現時点では再開の目途は立っておりません」としていますが、「休眠」とはいったい何を意味するのでしょうか。また、「休眠」によってどのような法的な効果が発生するのでしょうか。簡単に解説します。

●政党や政治団体の「休眠」という法的な制度は特に存在しない

まず、「政治団体の休眠」という制度は、法律上は特に存在しません。

会社法には「休眠会社」という概念があります。長期間登記の変更などがない会社を整理するための制度です。しかし政党や政治団体については、そういった法的な制度は、少なくとも筆者の調べた限りでは存在しないようです。

つまり「休眠を宣言した」ということは、特に何の法的効果も持つわけではないといえます。「対外的に活動を停止する意思を示した」ということだと思われます。

●なぜ「休眠」を宣言することになったのか

党の公式サイトには「党首は現在拘置所に勾留中であるため、直接の意思疎通が取れず、弁護士を通じて書面により現状を可能な範囲で伝達し、その内容を踏まえた上での判断です」と記されています。

この背景ですが、まず、党首・立花孝志氏は2025年11月に逮捕され、現在も身柄拘束が続いています。

立花氏に対しては2023年3月に懲役2年6カ月・執行猶予4年の有罪判決が確定しています。 執行猶予期間中(2027年3月まで)の再逮捕であるため、有罪となれば前の執行猶予が取り消される可能性があります(刑法26条)。

そうすると、身柄拘束が長期間続く事態も考えられます。

また、唯一の国会議員だった齊藤健一郎氏が2025年11月に離党し、立花氏と党の「私的整理」(裁判所を通じない任意の債務整理)も発表されています。

資金面でも厳しい状況です。

NHK党は立花氏という個人の強烈な存在感で動いてきた党といえるでしょう。その党首が不在の状況では、実質的な活動が難しくなるのは当然ともいえます。

NHK党の法的な位置づけは?「政党」と「政治団体」の違い

法律の話に戻りますが、法的には、「政党」と「政治団体」とは異なるものとして扱われます。

両者の区別は、政党助成法と政治資金規正法で微妙に異なるのですが、たとえば政治資金規正法上は以下のように区別されます。

政治活動を行う団体は「政治団体」と呼ばれます(政治資金規正法3条1項)。そのうち、 1)「国会議員が5人以上いる」か、2)「直近の国政選挙で有効投票数の2%以上を獲得した」ものだけが、政治資金規正法上の「政党」と定義されます(同条2項)。

NHK党は齊藤氏の離党により現在は国会議員ゼロ。得票率も2%には届いていないようですので、現在は政治資金規正法上の「政党」の要件を満たさず、「政治団体」といえます。

「政党」でなくなると、企業や労働組合などの団体からの政治献金を受け取ることができなくなります(同法21条1項)。なお、個人からの献金は同一団体に年150万円が上限です(同法22条2項)。

次に、政党助成法に規定されている「政党交付金」(税金による助成金)も受け取れなくなります。

政党交付金を受けられる「政党」とは、1)「所属国会議員が5人以上」か、2)「所属国会議員が1人以上かつ直近の国政選挙で得票率2%以上」のいずれかを満たすものです。NHK党は現在この要件も満たしていません。

●「休眠」しても法律上の義務は続く

「休眠」を宣言しても、政治資金規正法上の義務がなくなるわけではありません。

たとえば、政治団体には、毎年12月31日現在の収支状況をまとめた報告書を翌年3月末までに提出する義務があります(同法12条1項)。「活動実績がゼロだから不要」とはなりません。

収入も支出もなかった年でも「ゼロです」という報告書を提出しなければなりません。

そして、同法17条2項は、2年連続で収支報告書を期限までに提出しなかった政治団体は、届出をしていないものとみなすと定めています。

届出なしとみなされると、政治活動のために寄附を受けることも支出をすることも禁止されます(同法8条)。

これに違反して寄附を受けたりすると、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という刑事罰の対象にもなります(同法23条)。

「休眠中だから後回しでいい」と放置していると、2年後に取り返しのつかない法的効果が自動的に発生します。

●正式に「解散」するには別の手続きが必要

完全に活動を終わらせるには、「休眠宣言」ではなく正式な届出が必要です。政治団体が解散するときは30日以内に解散の届出をし、その時点の収支報告書も提出しなければなりません(同法17条1項)。

NHK党の今後については、刑事裁判の行方次第という面が大きいといえます。立花氏が身柄拘束されたままだと、事実上動きが取れないでしょう。

裁判が進み保釈が認められるようであれば、そのときに何らかの動きがあると思われます。

いずれにせよ、「休眠を宣言した」というだけでは法律上の義務を免れることにはなりません。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士