仕事効率を高めるためのカフェインの活用法は何か。広島大学大学院 医系科学研究科 公衆衛生学 准教授の田原優さんは「カフェインは摂取してから30〜60分後に血中濃度がピークに達する。ただ、その『立ち上がり』と『持続時間』が、飲料の種類や飲み方によって異なる」という――。

※本稿は、田原優『集中力を爆上げするカフェインの教科書』(日本能率協会)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/V_Sot

■清涼飲料水やプロテインバーにも含まれるカフェイン

みなさんは日々、どのくらいのカフェインを摂っていますか?

コーヒー、緑茶、紅茶、エナジードリンクなど、飲料の種類までは答えられても、それらにどのくらいの量のカフェインが含まれているのかは、おそらくほとんどの方が把握していないのではないでしょうか。

『集中力を爆上げするカフェインの教科書』より

図表1にカフェインを含む代表的な飲み物のカフェイン含有量を示しました。

注意してほしいのは、この値は一般的なカフェイン含有量だということです。抽出法や抽出時間によりカフェイン量は変わりますので、あくまで目安と考えてください。たとえばティーバッグをお湯に浸す時間が長ければ、その分、カフェイン含有量は増えるのです。

またエナジードリンクのカフェイン量は商品ごとにも差があります。エナジードリンクには何か基準や定義があるわけではありません。エナジードリンクは、各社がさまざまな商品を販売し、カフェイン量の多さを売りにするものもあれば、逆にカフェインゼロをうたう商品もあります。

さらに1本あたりの容量も異なるため「エナジードリンク1本あたりのカフェイン量」には注意が必要です。

エナジードリンクなどカフェインを多く添加した清涼飲料水では、100mlあたりのカフェインは32〜300mgと差があります。

図表1には一つの目安を載せていますが、もしいつも飲んでいるものがあるのなら、商品のホームページなどから調べることをお勧めします。

ここに挙げた以外にも、清涼飲料水やプロテインバーにもカフェインが入っている場合があり、知らず知らずのうちに多量摂取していることもありえます。

■「カフェインレス」はカフェインゼロではない

さらに「カフェインレス」と表示されている飲料でも、カフェインがゼロとは限らないことにも注意が必要でしょう。これはカフェインレスとうたえるものが、全日本コーヒー公正取引協議会により「カフェインを90%以上除去したコーヒー」と定められていることによります。

お茶についてもカフェインが少ないイメージがあるかもしれませんが、やはり差はあります。

たとえばペットボトルの緑茶飲料で「濃い」ものを展開している場合、基本的には通常のものよりもカフェインは多くなっています。

お茶に関しては、原料にカフェインの含まれるチャノキを使っているかどうかが一つの判断基準ですが、チャノキを主な原料としていなくてもカフェインが含まれる場合もあります。

また、ジャスミン茶は、チャノキの葉に、マツリカ(茉莉花、アラビアジャスミン)の花の香りをつけたものです。チャノキにカフェインが含まれるため、カフェイン入りの飲料ということになります。

2019年に日本で行われたカフェイン含有飲料摂取実態調査では、大学生を対象としてお茶とカフェインに対するアンケートをとったところ、玉露、抹茶、煎茶、ほうじ茶、玄米茶、ジャスミン茶に対して「カフェインを含むとは思わない」との回答が半数を超えました。

図表1のとおり、抹茶はカフェインを含まないどころか、比較的、カフェイン含有量の多い飲み物です。

■同じカフェインでも「お茶」はリラックス効果

お茶にカフェインが入っているといっても、コーヒーとは違うのではと思った方もいるかもしれません。

「どちらかというとお茶はリラックスのために飲んでいます」

そんな方が少なくないのではと思います。

写真=iStock.com/kuppa_rock
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では、本当にお茶とコーヒーのカフェインは違っているところがあるのでしょうか?

まずカフェインは摂取してから30〜60分後に血中濃度がピークに達します。これまで挙げてきた、さまざまな作用もこのときに強く表れます。

ただその「立ち上がり」と「持続時間」が、飲料の種類や飲み方によって異なります。たとえば空腹時だと吸収は早まりますが、食後は逆にややゆるやかに吸収されます。

ではお茶はどうなのでしょうか。

プーアル茶などを作る際には、チャノキの葉を発酵させます。このときチャノキに含まれるポリフェノールが、酸化ポリフェノールへと変わります。酸化ポリフェノールはカフェインとくっつきます。すると、カフェインは体にゆっくりと吸収されることになります。

中国の研究者らは発酵させたプーアル茶(熟茶)のカフェインがマウスにどのように吸収されるかを調べています。これによると、やはり吸収されるカフェインが少なく、また排泄物になって体外に出ていきました。

■飲料の選び方一つで仕事の効率が変わる

一方で緑茶の場合、摘んだ茶葉をすぐに加熱することで発酵をさせないようにして作ります。発酵させて作る紅茶やプーアル茶とは異なり、ポリフェノール(カテキン)が酸化せずそのまま残ります。

田原優『集中力を爆上げするカフェインの教科書』(日本能率協会)

ただ、緑茶にはテアニンというアミノ酸が多く含まれます。テアニンにはリラックス効果があり、睡眠サプリメントなどにも用いられています。テアニンがあることで、カフェインの効果が弱まるのですね。

海外では、集中力、パフォーマンス、認知機能を上げる物質をヌートロピック(nootropic)と呼びます。ギリシャ語で知性や精神を意味する「ヌー」と、向上や変化を意味する「トロプ」による造語です。

そのヌートロピックとしても、カフェインとテアニンの組み合わせは注目されています。ただし、海外で販売されているヌートロピックは健康被害が確認され、日本では禁止薬物に指定されているものもあります。

効果が信用できないサプリメントに手を出すよりもコーヒーとお茶のような長年多くの人に飲まれてきているもので解決するほうがずっと安全で賢い解決策だと私は思います。

こうして見ていくと「即効性」を求めるならカフェイン量が多く短時間で飲み切れるエスプレッソやエナジードリンク、サプリメント、「持続性」を求めるならゆっくり飲むようなドリップコーヒー、「ゆっくりゆるやかに」を求めるなら紅茶や緑茶が適していると考えられます。

飲料の選び方一つでも仕事の効率は変わっていきます。

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田原 優(たはら・ゆう)
広島大学大学院 医系科学研究科 公衆衛生学 准教授
1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学研究科修了。博士(理学)。2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部助教、19年より早稲田大学理工学術院准教授を経て、22年より現職。研究開始当時より体内時計の研究を継続。発光イメージングによるマウス体内時計測定、食・運動・ストレスによる体内時計の調節などの成果を発表。新しい研究分野として時間栄養学の立ち上げに関わる。現在は、時間健康科学として、個人に合わせた健康管理システムの創出を目指し、企業と連携しながら日常行動の最適なタイミングについて研究を進めている。著書に『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法』(共著、杏林書院)などがある。
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(広島大学大学院 医系科学研究科 公衆衛生学 准教授 田原 優)