「大谷選手は比較できない」“偉才”に憧れるからこそ…韓国代表主将が漏らす代表での葛藤と本音「涙を流したこともある」【WBC】

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このWBCはキャプテンとして参戦するイ・ジョンフ(C)Getty Images

どうしても憧れしまう大谷翔平の姿

「自分が見てきた韓国野球は、いつだって良い成績を残していた。北京五輪(金メダル)や、2009年のWBC(準優勝)を見てきたんです。でも、プロ入りして代表に入ってからは、いつも惨事の主役になっている」

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 来る3月5日に東京ドームで開幕を迎えるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を前に、『OSEN』など多くの母国メディアの前で、そう複雑な胸の内を明かしたのは、韓国代表のイ・ジョンフだ。元中日のイ・ジョンボム氏を父に持つサラブレットも、いまや立派なメジャーリーガーとなり、「韓国球界の顔」と言ってもいい存在となった。だからこそ、煮え湯を飲まされ続けてきた代表での苦闘がしこりとなっている。

 どうしても憧れてしまうスターがいる。イ・ジョンフが初めて出場した前回大会のWBCで日本のヒーローとなった大谷翔平だ。

 一挙手一投足に世界が注目していた。投打二刀流で異彩を放った大谷は、「憧れるのを止めましょう」や「日本だけじゃなくて韓国や台湾も中国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できて良かった」など数多の名言を残しながら、世界一となった侍ジャパンをけん引。決勝で迎えた強打者マイク・トラウト(米国)との対戦が生んだドラマは、米国内でも「伝説」として昇華された。

 そんな大谷の姿がイ・ジョンフの脳裏から消えたことはない。前回大会終了後に『聯合ニュース』の番組で「大谷選手は僕ら野球選手から見ても本当に素晴らしい。試合後のインタビューでの言葉は、それだけの実力と人格があるからこそ言えるものだったと思う。感じるところがあった」と吐露。さらに自身がジャイアンツに6年1億1300万ドル(約163億8500万円)の大型契約で移籍し、メジャーリーガーとしての1年目を迎えた24年の4月には、日刊紙『朝鮮日報』などに対して、自身と大谷の比較を問われ、こう切り返してもいた。

「なんでも僕が比較されるかがわからないし、大谷選手が知ったら気分を悪くすると思う。契約規模だけを見ても、僕と大谷選手は比較できない。マスコミやメディアが煽る空気がある……。僕は正直に言って、彼を見るたびに、少し憧れの対象を見る感じというか、試合をしていてもライバルという感じは全くありません」

 メジャーリーガーとしての苦悩を知ったからこそ大谷への憧れはより強くなった。それと同時にさまざまな経験を積んだイ・ジョンフの中で、代表で勝ちたいという想いも明確になった。

「韓国野球はどん底に落ちた」

 韓国が主な国際大会で決勝まで勝ち上がったのは、2012年のプレミア12が最後。ことWBCに絞れば、直近では3大会連続の1次ラウンド敗退の憂き目に遭っている。

 ゆえに代表選手たちの責任を追及する国内の“逆風”は強まっているのも事実。時に数多の成功を収め、大谷のような偉大な野球人を輩出した日本と比較され、非難されることさえある。

 だからこそ、大谷に憧れを抱き、「韓国野球はどん底に落ちた」とも口にするイ・ジョンフには、現状打破への並々ならぬ思いがある。「大会途中に泣いてしまって、涙を流したこともある」と赤裸々に打ち明ける27歳は、雪辱を期する今WBCへの本音も漏らしている。

「前までは、こういう大会はいつもワクワクして迎えていたんですけど、ある時から『ダメだったらどうしよう』という不安がよぎっていました。それは紛れもない事実です。でも、今は違う。むしろ、ここまで負け続けてきて、『あぁ、もうこれ以上落ちる場所はないな』と開き直った気持ちでいます。それに今のチームは、僕だけじゃない。

 今のチームには本当に野球の上手い後輩たちもいるし、頼もしい先輩もたくさんいる。だから中堅である僕が後輩たちをしっかり面倒見て、先輩たちをしっかりサポートできれば、自ずと良い結果が生まれると思う」

 代表として戦う不安と葛藤してきた。それでも「これ以上落ちる場所はない」と不退転の覚悟を抱き、主将となってWBCに帰ってきたイ・ジョンフは、“憧れのスーパースター”といかに対峙するのか。日本への敬意を持つスラッガーの存在も、今大会の注目ポイントのひとつと言えよう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]