任天堂、伝説のゲーム機が復刻版で登場
レトロブームの最終形態、かも。
2月17日に発売された復刻版バーチャルボーイ。これは、任天堂の新時代を象徴する商品かもしれません。少なくとも、過去の失敗作を大事にしよう、とする同社の姿勢のあらわれかも。
オリジナルは約31年前のVRゲーム機で、このたび9,980円で復刻販売されるこちらの機種、単なるおもちゃのノスタルジックなSwitch 2用アクセサリではありません。
今回、任天堂はオリジナルのバーチャルボーイに限りなく近い体験を提供しつつ、現代的使い勝手の良さも盛り込もうと尽力。オリジナル版を知らない世代にとっては古くさく、王者任天堂にとって汚点なのでは…と感じるかもしれません。
しかし、若い頃にバーチャルボーイで遊んだことのあるベテランプレイヤーにとっては、甘酸っぱい懐かしさがこみあげてくるに違いありません。ゲームボーイとバーチャルボーイのデザイナー、横井軍平氏が抱く、古き良きゲーム機への思いを知りたい方には、非常に魅力的なアイテムです。
任天堂のご厚意でバーチャルボーイと2月17日に発売される全七種のソフトを体験してみましたが、その感想を一言でいうと、これはタイムカプセルです。私は机に身を乗り出し、ゴーグルを装着して、「発見の世界」に没頭しました。
ゴーグル装着して赤と黒の画面をじっと見つめる
バーチャルボーイ自体に、画面はありません。というか、ほとんど電子部品は搭載されていません。Joy-Con 2を取り外したNintendo Switch 2を上部のハッチに設置、カバーを閉じ、赤いフィルターと2つのレンズでオリジナルの機械の視差効果を再現します。
任天堂によると、アダプターを使えばSwitch 2だけでなく、初代SwitchやSwitch OLEDでも使えるとのこと。このレトロゲームをプレイするためだけにSwitch 2を買う必要はありません。
バーチャルボーイをプレイするには、「Nintendo Switch Online+追加パック」(月額4,900円〜)への加入が必須。新たに追加されたバーチャルボーイ専用メニューからゲームにアクセスします。
リリース時点で『ギャラクティック・ピンボール』、『テレロボクサー』、『レッドアラーム』、『ワリオランド』、『3Dテトリス』、『T&Eヴァーチャルゴルフ』、『インスマウスの館』の7つのゲームが収録。いずれのアイコンも、ゴーグル越しに見た際、スクロールしやすい大きさで表示されます。
従来のバーチャルボーイは、片目384×224の解像度で動作。現在のSwitch 2の画面は1080pなので、バーチャルボーイのソフトも現代版の解像度で動作しているはず。各ゲームの表示サイズは非公表ですが、実際に試してみた限り、ある程度アップスケールされていることは明らかでした。画像は鮮明で、目を細めなくても文字が読めます。
バーチャルボーイを再現したこちらのデバイスは、顔の両側に柔らかいプラッシュ素材のサイドパネルを装備。ユーザーが机に身を乗り出し、ボタンを見ずにコントローラーでプレイすることになりますが、使用感は意外に快適。
操作は、従来の有線バーチャルボーイコントローラーではく、Joy-Con 2やSwitch 2 Pro、あるいはお気に入りのコントローラーなど、一般的なSwitchコントローラーを使用することが前提。オリジナルのコントローラーがないので、「いかにも30年以上前のデバイス」という感覚はやや薄れてしまいますが、使い勝手は快適です(その分、価格もアップしますが)。
ちょいダサ、ちょい不便、でもそこがいい。
長時間遊んだわけではないので、背中を丸めてプレイする姿勢にも負担はなく、顔から5センチの距離で映像を見続けても目の疲れを感じることもありませんでした。
ソフトのラインナップは少々異色。『ギャラクティック・ピンボール』は集中力を維持するのが難しく、オリジナル版をちょっと複雑にひねった『3Dテトリス』は、フィールドの視野に制限があるあるので、少々イライラします。
おすすめソフトがあるとしたら、『ワリオランド』。昔ながらの『スーパーマリオブラザーズ』を彷彿とさせるゲームですが、前景と背景のセクションを巧みに使い分け、各ステージがよりダイナミックに感じられます。
バーチャルボーイが誕生したのは1995年のこと。1995年は、ゲーム機が32ビットから64ビットへと徐々に移行しつつある時代で、任天堂はバーチャルボーイのわずか1年後にNinendo 64を発売。2つの世代のちょうど中間にあるゲーム、という感じ。
『レッドアラーム』は高度なベクターグラフィックゲームで、『スターフォックス』とMS-DOSゲーム『スターグライダー』を混ぜたようなプレイ感覚。『インスマウスの館』は、昔ながらの一人称視点のシューティングゲーム。今もラブクラフト風の作品に愛着のある私としては、1995年時点ですでに「あまり面白くない…」というゲームだったとしても、ついつい敵を打ち続けてしまうでしょう。
従来のバーチャルボーイは、振動するミラーの背後に1ピクセル幅のLEDストリップが2本配置され、これが基盤となっていました。これらが高速で点滅することで、約50Hzで画像を認識可能に。片方のレンズからもう一方のレンズにわずかにずれた画像を映し出すことで、3D効果を生み出していました。脳は両方の画像を同時に見ることで、それらを統合して2次元平面上に立体感を持つ1つの画像として認識しました。
Switch 2は一般的なIPS液晶を採用。立体感を生むために画面は二分割され、わずかにずれた2つの画像を表示します。バーチャルボーイは専用ゴーグルでのみ動作するとのことで、これがないと3D画像にならないからなのか、それとも自社製ハードを守るためのものなのか、任天堂は明言を避けています。
ただし、段ボール製の純正は利用可能。手で顔の近くまで持ち上げて使います。試したことがないので発売されるまで比較できませんが、考えただけで肩が疲れそうです。
結局、みんな好きになるかも
ネット上での反応を見る限り、ゲーマーから見てバーチャルボーイは「失敗作」という扱いです。たしかにそれは共通の感想。実はバーチャルボーイは任天堂史上最も売れなかったゲーム機で、世界でわずか77万台しか売れませんでした。ちなみに次に売れなかったのはWii Uで、生涯販売数は1350万台。
バーチャルボーイで遊んでも、『マリオメーカー』で素人が作った名作のほうが優秀じゃん…と不満に感じる人もいるでしょう。『ワリオランド』は昔ながらの任天堂プラットフォームゲームの傑作ですが、現代最高峰の2Dゲームの精巧なテーマ設定やメカニカルデザインには遠く及びません。何時間も楽しめるような体験は期待できないと思っていた方がいいです。3Dテトリスで最高得点を更新し続ける、ストイックというかマニアックな方なら別ですが。
今年後半には『マリオテニス』や『ジャックブラザーズ』など、新作がリリース予定。中でも注目はオリジナルでは未発売だった『ZERO RACERS』と『ドラゴンホッパー』です。この2本は当時も発売予定でしたが、本体の売上が低迷したため、リリースが見送られた伝説のお蔵入り作品。こういう日の目を見なかったモノたちのために、バーチャルボーイは今に転生したわけですね…。
今回リリースされたのは、任天堂歴代最低売り上げを記録したハード機を褒め称えるものでも、首や目の疲れなんてどうでもいいじゃないか、という言うものでもありません。これは平成からのタイムカプセル。面白いかどうかじゃない、バーチャルボーイは存在するだけで価値があるのです。
Source: 任天堂

