どれだけの人が世界へ目を向けているのか。どの世代が、どれくらい外に出ようとしているのか。その現在地が、数値として可視化される日なのです。

 今年の注目ポイントのひとつは、2025年3月から全国で可能になったスマートフォンでのオンライン新規発行申請。「面倒だから作らない」と言っていた層を、どれだけ動かせたのか。利便性の向上が、実際の行動変容につながったのか。

 その答えが、今回の統計で見えてくるはずです。これにより、パスポート取得のハードルは確実に下がりました。

 そして、コロナ禍以降たびたび指摘されてきた「若者の海外離れ」。この日に世代別の発行数も出るので、若年層の経済状況や内向志向の実態も浮き彫りになるでしょう。世界へ向かう余力があるのか、それとも余裕を失っているのか。

 結果次第では、政治の動きにも影響を与えるはずです。

 実際、2026年7月1日からはパスポート手数料を最大7000円引き下げる案が国会であがっています。現在1万6000円かかる10年用パスポートは、1万円以下になる見込みと報じられています。

 この方針は、年度末の予算成立を待って、正式に具体化される見通しとなっています。

 これは単なる安売りではありません。

 機会の平等化・標準化。経済的な理由で「世界を見る機会」を得られない若者を減らすための、未来への投資だと思っています。

◆世界最強レベルの信用を、どう使うか

 海外旅行は、日本政府の視点で見れば「輸出」ではなく、むしろ「輸入」に近い行為です。

 日本のモノやサービスを売るのではなく、日本人が海外でお金を使う。短期的な経済収支だけを考えれば、優先順位が高い政策とは言いにくいかもしれません。

 それでも、パスポート手数料を最大7000円引き下げるという議論に至っている。

 これは単なる家計支援策ではないはずです。

 日本人が世界を見ることに、国家として意味を見出している。国境を越える経験が、長い目で見れば日本社会の力になる――そう考えているからこその政策ではないでしょうか。

 パスポートという、日本の赤い手帳。

 それは、単なる渡航書類ではありません。日本という国の信用が凝縮された一冊であり、188の国と地域への扉を静かに開けてくれる鍵でもあります。

「たかがパスポート。されどパスポート。」

 世界が羨むほど強いパスポートを持ちながら、その価値を意識する機会は、実はあまり多くありません。

 2月20日、旅券の日。

 ぜひこの機会に、日本のパスポートが持つ本当の意味を、少しだけ立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
<文/大木優紀

大木優紀
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母