Photo: Sonsedska Yuliia/ Shutterstock.com

およそ50年ぶりに月へ有人飛行を行う我々、地球人。月探査ミッションのアルテミス IIは3月に延期されてしまいましたが、宇宙探索は確実に前進しています。いつか、火星に移住する日がくるかもしれません。そしていつかは、火星生まれの人類が誕生するかもしれません。

…まぁ、そのいつかは当分やってこないそうですが。

今は不可能でも今から準備しておくこと

宇宙での生殖活動を研究、論じているのは、Reproductive BioMedicine Onlineにて公開されたあるレポート。

結論からいうと、宇宙での妊娠・出産実現はまだまだ遠い話です。が、研究チームは、今から宇宙空間での生殖活動の総合的フレームワークを考えておくことの必要性を力説しています。

人類の宇宙探査・開拓がすすむにつれ、宇宙空間での滞在時間、移動距離は長くなります。となれば、それが人類の生殖能力、配偶子の状態、受精卵の成長にどう影響するのかを、今から見極め、準備しておかねばならないからです。

インターナショナルIVFイニチアシブのディレクターを務める臨床胚培養士で、論文の主たる執筆者であるGiles Palmer氏は、米Gizmodoのメール取材にて、今現在の話ではないにしろ、起こりうる健康リスクや倫理面での問題を予測し、事前に計画しておくことが大切だと語っています。

宇宙生殖におけるリスク

我々人間は地球人です。地球で生まれ、地球で進化してきた生き物です。ゆえに、私たちの体は地球環境向け、地球で暮らすことを前提に作られています。

宇宙での暮らしなんて、本来は生物学的にも生理学的にも予定外のお話。体からしたら「それは聞いてなかったもん」って話です。

てことで、地球人の体が宇宙で暮らすにあたって最大の壁は2つ、宇宙放射線と微小重力という環境の壁です。「宇宙放射線はDNAにダメージを与え、配偶子形成を妨害し、ガンのリスクを高めます。一方微小重力環境はホルモンに作用し、配偶子の質や受精卵の成長に影響します」と、Palmerは解説してくれました。

月や火星、未知なる惑星の砂や塵もまた未知。これらには地球人の体に有害な物質が含まれている可能性もあり、それが妊婦や胎児に影響する可能性もあります。その他、宇宙空間にいることで、地球人の概日リズムが狂ってホルモンバランスに影響、生殖能力を低下させる可能性もあります。

つまり、宇宙空間は生殖機能にはストレスが多い状況なわけですね。

Palmer氏は、人類が長期的にこの環境にさらされることで、生殖機能へのダメージが蓄積し、遺伝子変異を引き起こす可能性やリスクもありえるといいます。

生殖機能を保護するために

さまざまなリスクを検討するにはまずデータから。実は、NASAのスペースシャトルミッションで飛行した女性飛行士の、地球帰還後の妊娠・出産率に大きな変化は見られないといいます。ただし、当然データの絶対数が少ないので、こればっかりはなんともいえず。

今から研究を進めることで、生殖に関するさまざまな段階で、いろいろな方向から体を守る術を理解、開発する必要があるというPalmer氏。例えば、放射線から体を守るシールドや、精子や卵子の保存技術などですね。また、AIを活用し自動化を進めることで、体を傷つけることなく宇宙空間でも使える(まだ見ぬ)安全ツールなどの開発にも期待しているのだとか。

そして、これらの開発と同時に倫理的な課題もクリアしていく必要があります。

宇宙での生殖は、まだ宇宙研究においては新しい分野です。が、人類が宇宙にでていくには避けては通れない問題でもあるのです。

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