「ゲームは1日1時間まで」と決めるより明快…「子供がずっとスマホを触ってる」を防止する"シンプルなルール"

■スマホはこの十数年で急速に普及した
アメリカで初代iPhoneが発売されたのは2007年6月で、日本では翌年の2008年7月にiPhone3Gが発売された。最初は、ガジェット好きなイノベーターが使っている特殊な機器というイメージだったが、今では誰もが持つ「スマホ」になっている。
総務省の通信利用動向調査によれば、スマホの保有率は、80.5%、携帯電話の保有率は16.8%、いずれも保有していないのが5.7%となっている(携帯電話とスマホの両方を保有している人がいるため合計は100%を超える)。
通信利用動向調査の世帯構成員編でスマホ利用率が最初に出てくるのは、2012年とiPhone発売の4年後なので、NTTドコモのモバイル社会研究所のデータを参照すると、「最もよく利用する携帯電話(1台目)」の比率は、2010年にはわずか3.6%に過ぎなかったが、2年後の2012年には20.9%と急激に増え、その3年後の2015年には49.6%と半数近くになった。
最新の2024年のデータでは、96.8%となっており、スマホはもはや社会のほぼ全員が持つインフラツールとなっている。
そして、言うまでもなく、スマホはインターネットを通して世界中と繋がっていて、人類が蓄積してきた膨大な情報へのアクセスが可能で、写真、録画、録音、決済まで行える、なくてはならない存在になっている。
■子どもにどこまでスマホを使わせるか
スマホは便利なツールだが、ずっとスマホを使い続けたりゲームにはまったりして生活に支障が出るケースや、場合によっては違法なオンラインカジノでトラブルになることもある。
大人でもそうした問題が起きるが、「スマホ脳になる」「依存症になる」といった言説に心配になって、子どもにどこまでスマホを使わせるかに悩んでいる保護者も多いだろう。
ただし、スマホ脳やスマホ依存症についての学術的な評価は必ずしも定まっているとは言えないようだ。
例えば、睡眠との相関は強い(スマホを無制限に使っていると就寝時間が遅くなり睡眠時間が足りなくなるなど)。だが、スマホに依存的、脅迫的な使い方をしている場合に不安・抑うつとの関連(相関)が示唆されていることについては、その相関が因果関係なのか(不安・抑うつ傾向があるためスマホに頼るという関係も考えられる)は必ずしも確定していないようだ。
そして、こうしたことは子どもに限った話ではないが、子どものスマホ利用について考える前に、まず実態を見てみよう。
前述の2024年の総務省の通信利用動向調査には、年齢別のスマホ保有率があり以下のようになっている(図表1)。

■小学生全体では約半数がスマホを持つ
子どもにいつからスマホを使わせるかは、もちろんそれぞれの家庭の自由だが、総務省のデータをみると、6〜12歳でスマホを保有しているのは49.9%と半数で、保有無しが34.5%、無回答が10.7%、携帯が10.5%なので、小学生全体ではスマホを保有しているのは約半数、ということになる。
ただし、これは6〜12歳の合計なので、小学校の高学年になるとスマホ保有率はもう少し高い可能性がある。
学年別にみると、NTTドコモのモバイル社会研究所の2024年11月調査では、小学校4〜6年生は52%、学研教育総合研究所の2024年11月調査では、小学校6年生が60%となっている。
ただし、学研の調査では5年生の保有率は42.5%とやや低く、モバイル社会研究所の調査では2020年時点では20%と低かったことから、小学校6年生でも半数がスマホを持つようになったのはごく最近のことだと言って良さそうだ。
ここからは定量的なデータに基づいた話ではなく、筆者の経験や人に聞いた話になるが、小学校でスマホを持たせるかどうかは、地域や家庭による違いが大きい。

■「中学受験が終わるまでおあずけ」のケースも
一般的には、なんとなくまわりを見ていると中学になってからスマホを使わせていることが多いという共通の認識があると思われるが、たとえば、首都圏などの中学受験をする子どもが多い地域では、中学受験が終わるまではスマホは持たせず、塾に行かせる際の連絡用にキッズ携帯を持たせることが多いと聞く。
それは当然、勉強を優先させるためで、場所にもよるが周りに中学受験する子どもが多い場合には、周りもスマホを持っていないケースも多いためか、「みんなスマホを持っている! 持ってないのは自分だけ!」と子どもが主張するとはあまり聞かない。
その代わり、気晴らしもかねてゲーム機を親の管理のもと使わせるケースはよく聞く。
そして、中学受験が終わって小学校の卒業式までの間にスマホを買い与えることが多い。
それは、多くの家庭がスマホを子どもに持たせるタイミングであると同時に、卒業後に通う中学が違うこともあるため、小学校の卒業式前後に子ども同士がLINEの連絡先交換を行うことが多い、ということも関係しているようだ。
■テレビ番組との決定的違い
数十年前には、スマホは当然なく、子ども達の共通の話題はテレビが中心だった。みんなが見ているテレビ番組が学校での話題になるため、「ザ・ベストテン」や「8時だョ! 全員集合」(懐かしい!)が見られないことは、子どもにとって大きな問題だった。
ただし、昔もテレビ番組が見られないことで、子どもの人間関係に多少の影響はあったとは思うが、今のスマホの影響力は昔のテレビ番組と比べて桁違いに大きい。
それは、テレビ番組が単なるコンテンツであったことに比べて、スマホは人間関係そのものだからだ。
スマホを使っていればわかると思うが、アプリやブラウザも重要な機能だが、スマホの機能で最も重要なのはコミュニケーション機能だ。
大人でも、パソコンを使っていなければスマホがコミュニケーションの主要な手段で、スマホが無ければ仕事がままならない場合も多い。
それは子どもにとっても同じで、クラスやサークル・部活動など様々なコミュニケーションがスマホを通じて行われる。この時、スマホを持っていなければ、“ぼっち”になってしまい、人間関係から排除されかねないのだ。
■「みんなスマホを持っている!」の意味
中学生のスマホ所有率が9割に近い状況(前述のNTTドコモのモバイル社会研究所の調査結果より)では、スマホを持っていないことは子どもの人間関係にとって致命的なものであり、「みんなスマホを持っている!」は、中学生の場合には本人にとっては死活問題だろう。昨日のザ・ベストテンを見逃したのとはワケが違うのだ。

昔のゲーム機の場合は、「みんなゲーム機を持っている」と主張する子どもに、「うちは違います」と言っても、子どもの人間関係にそこまで大きな影響はなかった。子ども達が集まってゲームをするときに、ゲーム機を持っていない子どもは借りなければならないから、気が引けたとしても、人間関係から排除されるまではいかないことのほうが多かっただろう。
しかし、リアルタイムでスマホを通じてコミュニケーションが行われる、すなわちリアルタイムで人間関係が進行していく現代において、スマホを持たないことは人間関係から排除されることにつながる。
そうした状況を理解しつつ、夜は22時までといった制限を設けている家庭も多いと思う。そのくらいの制限であれば人間関係から排除されるというところまではいかないだろうが、スマホがあるかないかは、子どもの人間関係構築に決定的な影響を及ぼす。
逆にいえば、小学校の間は、スマホを持たせるか持たせないかで、子どもの人間関係を一定程度コントロールできる、ということでもある。
小学校でスマホを持たせれば、小学校でスマホを持っている子ども達同士で仲良くなり、スマホを持っていなければ、スマホを持っている子どもとは一定の距離が生まれる、というふうになる。
■意外と難しい利用制限のやり方
スマホは既に重要な社会インフラであり、使わないわけにはいかない。それでも過度に依存することは避ける必要がある。
よく子どものスマホを規制したい、という声を聞くが、子どもに規制するなら、そのルールは親子共通にすべきだろう。
スマホは単なるツールではなく、人間関係を支える社会インフラでもあり、過度な規制は子どもの人間関係にも影響を及ぼす可能性がある。
子どものスマホ利用の規制、ルールには主に、1)利用できるサイトやインストールできるアプリを制限するフィルタリング、アプリ制御、2)1日あたり利用時間の制限(ゲームは60分など)、3)スマホを使わない時間帯や状況の設定、のようなものがある。
1)については意外に管理が面倒で、イベントチケットのためのアプリインストールなどに手間取って困ることもある。例えば、多くの人が訪れた大阪万博でもチケットが電子化されており、その分配にスマホへのアプリインストールが必要で、かなり面倒でトラブルも発生していたようだ。
2)については、みなさんのスマホを調べてみてほしいが、例えばiPhoneであれば設定>スクリーンタイムで1日の利用時間が確認できるが、自分で思っている以上の利用時間になっていることが多い。これは実際の画面の操作時間ではなくアプリの起動時間で計算されているためで、実際に規制してみればわかるが使っていると意外にストレスが大きい。
■大人にできない制限は子どもも受け入れられない
一番大事なのは、3)のスマホを使わない時間帯や状況の設定、だろう。
中高生であれば、例えば夜22時から朝7時まではスマホは寝室や子ども部屋に持ち込まない、食事中はスマホを触らない、というのが基本ルールになる。

一般的には子どものスマホ利用で問題になるのは、その利用総時間ではない。大人も仕事中にずっとスマホを使っているわけではないのと同様に、授業中にはさすがにスマホは使えないし、お友達と遊びにいっている間もずっとスマホを使っているわけではない。
それよりも、夜遅くまでスマホを使っていることで、睡眠時間が短くなり生活リズムが崩れること、寝室にスマホを持ち込むことで十分な睡眠がとれないことのほうが問題だろう。
そして、それは子どもだけでなく、大人も同じだ。
子どものスマホを制限するなら、保護者も同じ制限にすべきで、自分が制限できないことは子どもも受け入れないだろう。
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宗 健(そう・たけし)
麗澤大学工学部教授
博士(社会工学・筑波大学)・ITストラテジスト。1965年北九州市生まれ。九州工業大学機械工学科卒業後、リクルート入社。通信事業のエンジニア・マネジャ、ISIZE住宅情報・FoRent.jp編集長等を経て、リクルートフォレントインシュアを設立し代表取締役社長に就任。リクルート住まい研究所長、大東建託賃貸未来研究所長・AI-DXラボ所長を経て、23年4月より麗澤大学教授、AI・ビジネス研究センター長。専門分野は都市計画・組織マネジメント・システム開発。
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(麗澤大学工学部教授 宗 健)
