小林虎之介、下積み生活で唯一の挫折とは デビューからの足跡を辿る1万字インタビュー
今後の活躍に期待が高まる俳優の1人として、今パワープッシュしたいのが小林虎之介だ。
2023年、『下剋上球児』(TBS系)でその存在を見出されると、2024年も立て続けにドラマに出演。『ひだまりが聴こえる』(テレビ東京系)で初のW主演を務め、『宙わたる教室』(NHK総合)では定時制高校に通うディスレクシア(読み書きに困難を抱える学習障害のこと)の青年・柳田岳人を演じ、反響を集めた。
小林にとって、2024年はどんな年になったのか。「基本的には前を向いていた」という下積み生活で唯一の挫折とは。大ボリュームの1万字インタビューを通じて、“役者・小林虎之介”に迫る。
■役づくりでは、まず役の生い立ちを0歳から考える
――2024年が始まるとき、どんなことを考えていたか覚えていますか?
小林虎之介(以下、小林):何を考えてただろうな……。『下剋上球児』のあとが大事だということは意識していました。でも、そのときはまだ『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』(フジテレビ系)しかお仕事が決まっていなかったんですよ。『下剋上球児』でいろいろ取り上げていただいていたので、ここから始まるぞという気持ちでいたんですが、いざ終わってみたら、「あれ? 意外とお仕事の話が来ない。どうしよう」みたいな。ちょっと焦りはあったんですけど、とにかく『PICU』があったので、まずはここを一生懸命頑張るしかないって。そこから何か次につながってほしいな、と思っていました。
――実際、『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)、『ダブルチート 偽りの警官 Season1』(テレビ東京系)、『約束 ~16年目の真実~』(読売テレビ・日本テレビ系)と出演作が続きました。
小林:ありがたいことに作品を観た方からお仕事をいただいて、という連鎖がどんどん起きていって、すごく充実した1年になったと思います。やっぱり年に1本は代表作と呼ばれるものを作りたいし、自分が面白いと胸を張って言える作品に関わり続けていきたい。その意識を忘れずに、この1年は取り組んできました。
――中でも大きかったのが、初のW主演となった『ひだまりが聴こえる』と、高い評価を得た『宙わたる教室』だったと思います。まずは『ひだまりが聴こえる』についてですが、小林さんの演じた佐川太一はともするとキャラクターっぽくなりそうな役柄で、生身の人間がやるのはすごく難しかったと思うんですけど、それを絶妙なバランスで体現されていることに唸らされました。
小林:僕は役を演じているときは、役に自分を寄せるところがあって。太一についても、自分にない要素ではなかったので、まずは普段から自分の中の太一っぽさを強めに出すようにして生活していました。太一は、親に捨てられたという傷を心の奥に抱えている男の子。それだけに人から嫌われたくないという思いがあって。そういう背景を踏まえれば、あんなふうに明るく振る舞うのは人間心理として十分考えられると思ったんですね。だから、前半はあえて太一がどういう人かを観ている人にわかってもらうためにも、あえてちょっとキャラクターっぽさを強めに出すようにしました。逆に、後半になるにつれて、航平との関係性が強くなっていくので、太一のキャラクターっぽいところを省いても人間ストーリーとしてまとまるんじゃないかなと。そういう計算をしながらお芝居を組み立てていきました。
――小林さんの演じた太一には、無邪気な明るさの中に一貫して寂しさが垣間見えるところがありました。捨てられる恐怖を内在化していることを表現するために、見せ方の面で特に力点を置いた部分はありますか?
小林:中学時代の回想シーンが、太一の陰の部分が見える最初のシーンで。あそこで根っこにこういうことがあったんだよというのが伝わらないと、太一というキャラクターが薄く見えちゃう気がしたので、大事にしたいなと思いました。ただ、見え方の部分に関して言えば、正直、撮照さん(撮影部・照明部のスタッフのこと)がいろいろとしてくださるんですよね。だから、僕はとにかく芝居に集中して、自分が捨てられたらどういう気持ちになるだろうって、そのことだけを考えて本番に臨みました。
――立ち方とか身振り手振りにも工夫を感じました。ちょっと軸が通っていない感じが、すごく小学生っぽかったというか。
小林:本当ですか。実を言うと、お芝居に関しては隅々まで計算していたわけではないんです。それよりも、太一が愛されてくれればいいなという一心でした。それでも、台本通りにやっちゃうと、ちょっとがめつい感じに見えちゃうかもしれないなと思って。原作の文乃(ゆき)先生とお話ししたときに「太一は子犬っぽい感じがいいですよ」という言葉はいただいていたので、太一のかわいらしさ、子どもっぽさが出ればというイメージはありました。
――隅々まで計算しているわけではないとありましたが、これまでのインタビュー記事を読んでいても、お芝居に関しては計算よりも、その場に立って生まれるものを大事にしたい方という印象があります。
小林:もちろん。そこしかないです。
――でもきっとその場に立って生まれるものに行き着くには、相応の準備が大事だと思うんです。そのプロセスというか、役の準備をする上で大事にしていることを聞いてもいいですか?
小林:プロセスとしては、役の生い立ちを、0歳から現在まで台本に書かれていないことも含めて、まず自分の中でイメージします。で、その役の思い出と自分の思い出を合体させる。そうやって、頭の中で俺はこういう名前で生まれて、こういう人生を生きてきたんだっていうのを膨らませる感じです。両親についても、お話の中で出てこない場合は、架空のお父さんとお母さんをイメージします。たとえばですけど、お母さんは田中裕子さんでとか、お父さんは柄本明さんでとか、そうやって実際にいらっしゃる俳優さんをイメージして、自分はこの人から生まれてきたんだって感じられるように、勝手にその人の写真を用意して役を作ったりしますね。
――ちなみに、田中裕子さんと柄本明さんがご両親なのは、どの役のときですか?
小林:『ダブルチート』です。
――奨学金支援詐欺で借金を背負う役ですね。そうした背景はノートに書き出すというより、頭の中で思い起こす感じですか。
小林:僕、昔から書いても全然頭に入ってこないんです。授業でもノートをとっても頭に入らないんで、学校ではノートをとりませんでした。見て覚えるか、聞いて覚えるほうが得意だったんで、今でも準備の段階で書くことは絶対しないですね。だから、役者の中で台本がいちばん綺麗だと思います。
――そんな小林さんが、『ひだまりが聴こえる』は台本がいちばんボロボロになったとおっしゃっていましたね。
小林:『ひだまりが聴こえる』はとにかく読み込む回数が多かったんです。というのも、順撮りではなかったので、撮影中に時系列が行ったり来たりするんですよ。次に撮るシーンの前はこういうことがあって……というのを忘れないためにも、休憩中はひたすら台本を読み込んでいました。撮るシーンの台本だけ読んでると、 どうしてもそこの表現だけ強くなっちゃったり、逆に引きすぎちゃったりするので。全体のイメージをしっかり持っておかないと、ドラマとしての波が不自然になる。そこは今でもまだできていないところで、現場でよく監督が調整してくださるんですけど、やっぱり演じる以上、自分が説明できないといけないので、前後を把握するためにも、頭から台本を読むというのは大事にしています。
■窪田さんが背中を押してくれたおかげで、壁が崩れた
――小林さんの2024年を語る上でもう一つ欠かせない作品が、『宙わたる教室』です。第1話で、小林さん演じる岳人がディスレクシアだと知るシーンは強烈なインパクトがありました。
小林:あそこで岳人はこれまでの悔しかった過去を思い出すんですけど、僕にも同じように悔しかった過去はあって。自分の過去と岳人の過去を結びつけることで、出てくる台詞に嘘がないようにしました。そういう“自分を騙す”作業をしっかりしないと、泣きの芝居ができないんです。僕はテクニックで涙を流せないので。特に第1話はまだ岳人として生きた時間が自分の中でそんなにないので、いちばん難しかったですね。
――あのディスレクシアだと知るシーンは、いつ頃撮ったのですか?
小林:僕がクランクインして3日目でした。監督が言うにはまだチーム全体としても撮影が始まって間もなかったから、どこか浮ついたところがあったそうなんです。でも、あのシーンを撮って現場の意識が引き締まったって監督やプロデューサーが言ってくれて、それはすごくうれしかったですね。
――小林さんとしても、最初の山場だという意識はありましたか。
小林:もちろん。やっぱり連ドラにとって第1話っていちばん大事なので、視聴者を引き込むという意味でも、ここが山場だと思っていました。何より窪田(正孝)さんの久々の主演ドラマだったので。窪田さんは、尊敬している俳優さんの1人。窪田さんが久々にやろうと決めたドラマで、世間的に無名な僕が下手な芝居をして失望させたらダメだと思って、窪田さんをがっかりさせたくないという気持ちで一生懸命頑張りました。
――一緒にやってみて、窪田さんから受け取るものは多かったですか?
小林:自分が出ていないシーンでも、モニターにかじりついて窪田さんの芝居を見ていました。窪田さんは、今の僕では手の届かない場所にいる人。動きを見ていても、本当にそこに生きてるんですよ。僕も生きてるつもりでやっていますけど、まだまだその確率は全然低くて。窪田さんはいつやっても藤竹(窪田の役名)がすぐに降りてくる。その様子を間近で見ていて、どうやったらこんなにすぐに役に入れるんだろうって、ずっと圧倒されていました。でも、見ていてわかったことが、窪田さんも準備をたくさんされるんです。監督とも何度も話し合いをされていて、それを僕も片耳で聞いていました。全然ついていけないなと思いつつですけど(笑)。
――ディスレクシアと知るシーンを撮る前に現場で何か話したことはありますか?
小林:基本的には思った通りにやっていけという感じだったんですけど、感情が荒ぶるところは僕もまだどこまでやっていいかわからなくて。そしたら窪田さんが「ぶん投げればいいんだよ」って、そのへんにあった紙をバーンと投げて「ここまでやっていいから、好きにやりな」と背中を押してくれました。そのやりとりで、僕の中にあった壁が崩れたというか。あとは、涙を流すタイミングについて監督と話して調整するという感じでした。
――涙を流すタイミングまで。
小林:でも、カット数が多かったので、5回目くらいまでは「いつでも涙のタイミングを操ります」ぐらいの集中力で、自分でも天才かと思ったんですけど(笑)。まあ、そんなことはなくて、後半はヤバいなと思いながらも怒りのバロメーターをバーッと上げられるよう頑張っていました。
――同じシーンをカメラ位置を変えながら何回も繰り返して撮影するときに、芝居の鮮度を保つことに対して課題感を持っていらっしゃるのかなというのは、これまでのインタビューを読んでいても感じます。
小林:そうですね。だから監督には基本的に「最初に撮ってください」ってお願いします(笑)。最近は5回目くらいまではいけるような気がするんですけど、それを超えると特に感情を吐露するシーンはなかなか難しくて。「すみません、まだ下手くそなんで先に撮ってください」って甘えています。
――2024年に出会った人の中で、特に自分に大きな学びをくれた出会いを挙げるとしたら誰ですか?
小林:やっぱり窪田さんですね。現場の居方もそうですし、台本の読み解き方もそうだし、作品をいい方向に修正する力もそうだし。窪田さんは撮りながら「ここはこれでいいのかな?」と疑問に感じることがあったら、すぐに監督と共有して話し合うんです。その結果、作品がより良い方向に向かっていく瞬間を現場で何度も目にしてきました。それってきっと台本を相当読み込んでいないとできないこと。芝居って1人で作っているわけではなくて、全体を通して見ることで、このシーンにはこういう意味がある、というのがわかる。だから、俳優は自分のやりやすさだけを考えていちゃダメで、ちゃんとそれぞれのシーンの意味を考えていかなきゃいけない。窪田さんにそれができるのは、これまでやってこられた経験があってのことだと思うんですけど、僕自身ももっとそういう力を身につけていきたいです。
――経験を積むことで、もっとこういうことができるようになりたい、もっとこういう役者になりたいというものはどんどん明確になってきましたか?
小林:自分のことはすごくレベルの低い役者だと思っているので、できるようになりたいということはたくさんありすぎて挙げられないです。ただ、あんまりこういう役者になりたいということはイメージしないようにしていて。まずは目先のことに一生懸命取り組む。自分が次に撮るシーンを良くすることだけ考えてやっていったその先に、ステップアップした自分がいればいいのかなと思っています。
■初めて「頑張っても意味ないのかな」って泣きました
――では、ここからは小林さんの歩みにふれさせてください。小林さんはお父さんと映画館で『ボヘミアン・ラプソディ』を観たことがきっかけで、俳優の道を目指しました。地元の岡山から上京して、これまでの日々の中で心が折れそうになった時期はありましたか?
小林:下積みと言われる期間が3~4年あって、その間も基本的に前を向いてはいました。ただ、今思い出したのが、『下剋上球児』の1年くらい前に、ゴールデンタイムのドラマのオーディションがあって。出番も結構あるいい役だったし、監督もすごく有名な方。これを取れたら人生が変わるっていうやつで、これは絶対に取るぞって、すごい気合を入れて臨んだんです。オーディションを受けると決めた日から、日々の過ごし方も全部変えて。木村拓哉さんの『未来への10カウント』(テレビ朝日系)というドラマで、木村さんが学生たちにリング上から「誰にも負けてないと思えるくらい努力しろ」ということを言うんですけど、それを観て、僕もスイッチが入っちゃって。同じような売れていない役者の中で、自分がいちばん頑張っていると思えるくらい努力しようと、とにかく24時間ずっと芝居のことだけを考えて、時間があったらいろんな作品を観て。オーディションの当日も、僕を含めて8人くらいいたのかな、他の人がやっているのも見られる環境だったので、自分以外の人のも全部見て。「大丈夫だ、絶対俺がいちばんだ」ってすごい自信満々で、「これはもう取った」と思って控え室に戻ったら、すぐにその場で合格者が発表されて。そしたら、違う人が呼ばれたんです。
――それはショックですね……。
小林:違う子が選ばれたということに頭が真っ白になって、お芝居の神様っていないんだなと思いました。悲しいというより、本当、頭が真っ白ってこういうことを言うんだなって感じで。トボトボと帰っていたら、ちょうど会場の門のところでマネージャーから電話が来て。どうやら、うちのマネージャーにプロデューサーの方から電話がいったみたいで。「芝居は本当に良かったけど、今回は役との見た目のイメージが大事だから残念ながらご縁がなかった。いつか機会があれば一緒に仕事がしたいです、と監督が言っていた」というようなことを伝えてくれたそうなんです。それを聞いて、「そうですか。本当に今回は取れなくてすみませんでした」ってマネージャーに言った途端、滝のように涙が出て。もうその場で崩れ落ちるくらい泣きました。僕、マネージャーの前で泣いたことないんですよ。でも本当に悔しくて。「頑張っても意味ないのかな」ってマネージャーに言って。あのときは本当にくじけちゃって、もうお芝居も何も見たくないって時期がちょっとありました。
■孤独に芝居と向き合った経験が、武器になっている
――それまでの日々はどんなふうに過ごしていたんですか?
小林:週1でレッスンがあって、あとはバイトと、ひたすら作品を観ていました。まず朝4時に起きて、肉体労働のバイトに行って。早朝だと時給がいいんです。で、定時は8時なんですけど、大体終わらないんで、いつも9時くらいまで残業して、家に帰るのが10時くらい。そこからドラマや映画を2~3本観て、午後5時から夜の10時半までスーパーのバイト。終わったら、家に帰って速攻で寝て、また朝の4時に起きてバイトに行くっていう生活でした。
――めちゃくちゃハードじゃないですか。
小林:そのとき、歯の矯正をしてたんですよ。ローンがヤバくて、とにかく稼がないといけないけど、時間はとられたくないから、高時給で大変なやつを選んでやっていました。正直、その頃は孤独でしたね。レッスンに行っても、余裕がないから、周りにいる人はみんな敵だと思っていたし。普段は人とわりとしゃべるほうなんですけど、そのときは誰ともしゃべらずって感じで。友達はみんな岡山だから、東京に友達もいなくて、ずっと孤独を感じていました。でも、その経験が活きているのかなと最近は感じてもいます。
――孤独だったことが活きている?
小林:自分で自分の芝居を映像で見ていて、陰があるなと感じることがあって。たぶんそれは孤独だった時間が陰の深さに関わっているのかなと思うんです。とにかく自分を追い込んで孤独に芝居と向き合った経験が、今の自分の俳優としての一つの武器になっているのかなというのは思いますね。
――ちょっと話の腰を折りますが、歯の矯正をしたって隠さず言っちゃうところが小林さんらしいというか。記事にしづらいですけど(笑)。
小林:ああ、いいですよ、全然記事にしてもらって(笑)。
――それ以外にも、いずれタバコを吸う役が来たときのために、売れていない時期に喫煙をしてタバコを吸う仕草を自分のものにしたとか、『下剋上球児』の前にICL手術を受けたとか。いつか花開く日のために、何者でもない頃から努力をしていた姿勢が、今の小林さんをつくっているのだと感じます。
小林:売れるためにできることはなんでもやっていました。お金は全然なかったので、なんとか捻出してって感じでしたけど。だから、食費を月1万円に抑えたりとか普通にやっていましたね(笑)。何かのタイミングでブレイクしたとして、そこからすぐに歯の矯正も目の手術も難しいだろうなと思って、売れていない今しかできないことだから、とにかく自力で整えられるものは整えようと。そういう意味では、いい下積み生活を送れたと思っています。
――一度心が大きく折れて、それでもやっぱり芝居をやろうと思えたのは何があったからですか?
小林:やっぱりお芝居がしたいと思ったからですね。オーディションが終わって2週間くらいは本当に何もする気が起きなくて、空っぽでした。でもずっとお芝居が中心の生活だったから、それがなくなるとやることがなくて。他にやりたいことが見つからなかったんですよね。徐々にお芝居への熱が上がってきて、1カ月くらいしてレッスンを再開しました。そもそも役者になりたいと思ったから、今の自分があるわけで。その想いがある限り、僕はお芝居をするんだろうなと今は思っています。
■期待されることが怖いなって思う弱い自分もいます
――取材前にこれまでの小林さんの出演作を観てきましたが、『警視庁強行犯係 樋口顕』(テレビ東京系)とかまだ活動して間もない頃なのに、結構台詞がある役で驚きました。
小林:『警視庁強行犯係 樋口顕』は、僕の初めてのドラマでした。あれはオーディションでゾーンに入ったんですよ(笑)。たまにゾーンに入るときがあって、それがオーディションで来たので、決まってすごくうれしかったんですけど、地力がないから現場でゾーンに入らない。とりあえず一生懸命台詞言って、監督に「こう見えたらいいんですよね」って一丁前に言っちゃったりして、本当にバカだったなと思いますけど(笑)。
――その一方で、『駐在刑事 Season3』(テレビ東京系)だったり『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)だったり、いわゆる役名のない役もあります。こういう役のとき、どんな気持ちで現場に臨んでいましたか?
小林:悔しい気持ちももちろんありました。でも、それ以上にこれが次の現場につながればという思いで必死でした。正直、たった一言の台詞で注目を浴びることなんて、よっぽど有名な俳優さんじゃない限り難しいと思うんんですよ。それでも、もらえたたった一言の台詞で何かが変わることに希望を持って、一生懸命お芝居をしていました。当時は事務所にお芝居系のオーディションってそんなに多くなくて。現状を変えたくても、まずそのチャンスを掴めない。だからどんな小さな役でも、現場に呼んでもらったら、プロデューサーさんに名前を覚えてもらいたくて、もう1回使いたいと思ってもらいたくて、とにかく元気良く頑張っていましたね。ADさんとかAPさんとか関係なく、というか正直どの人がどういう権力を持っているとか、当時の僕には全然わからなかったので、手当たり次第にペコペコいい顔していました(笑)。
――そんな現状を変えたのは、やっぱり『下剋上球児』ですか?
小林:もちろんです。その前からちょっとずつ波が来ている感じはあったんですけど、あそこまで大きく世間からの見られ方が変わるとは思っていなかった。『下剋上球児』は今でも僕の中で大きな作品です。
――『下剋上球児』が終わって間もない頃に一度取材をさせていただいたことがあって。そのときは「有名になっても“芸能人”になりたくない」とおっしゃっていました。その思いは今も変わりませんか?
小林:そこで今、すごく迷ってて(笑)。プライベートでは今でも芸能人をしようとはまったく思っていないですよ。なんなら普通の人でいたい。下積みの頃と変わらないように誠実に生活していますけど。でも表に出ると、やっぱり“見られる”って何も意識しないわけにはいかないなって。こういう取材もそうですけど、多少なりとも影響力がちょっとついてきている自覚はあるので、発言も気をつけないと迷惑のかかる人が出てきちゃうから。周囲から芸能人だと思われることに関しては今でも好きじゃないですけど、芸能人は芸能人なので、言動とかちゃんとするべきかなとか、最近は考えるようになりました。
――『下剋上球児』の頃のインスタライブとか、ちょっとドキドキしていましたよ、この人自由だなって(笑)。
小林:当時はあんまり気にしてなかったですね(笑)。ただ、基本的にはそんなに作らずにいたいです。庶民的でいたいですね。
――期待されていることに対するプレッシャーは感じていますか?
小林:最近感じるようになりました。レッスンの講師の方ともお話ししていたんですけど、今までお仕事を受けるときにあったのは、挑戦と責任だったんですよ。でも最近はありがたいことに記事もいろいろと出していただいて、Filmarksとか読んでいても注目してると言ってくれる人が増えて、期待されている感じがどんどん伝わってきて。挑戦と責任に期待が加わるだけで全然違うんだっていうのを、今肌で感じています。新しい現場に入ったときも、『宙わたる教室』の評価があるから、「これくらいはできるんでしょ」みたいに思われてるのかなって、意識しすぎかもしれないですけど、感じちゃって。でも、そんな毎回上手くできないし、怖いなって思う弱い自分がいます。
――正直ですね。
小林:そういうプレッシャーに目を背ける生き方もあると思うんです。ネットも見なければいいし。そうやっていこうかなって最近までギリギリ迷っていたんですけど。でも僕がこれまでご一緒してきてカッコいいと思った先輩は、(鈴木)亮平さんも窪田さんも吉沢亮さんも絶対に期待から目を背けずにやってきた。僕もその人たちみたいにカッコよくなりたいから、期待を背負ってお仕事に向き合っていこうって決めました。まあ、怖いですけど(笑)。
――みなさん主演として作品を背負ってきた人たちですからね。小林さんもそういうポジションに早く就きたいですか?
小林:できるならなりたいですけど、でも今はそれより先輩の下について学ぶことのほうに興味があります。もちろん『ひだまりが聴こえる』みたいに主演をやらせてもらうことで得るものもあるんですけど、下にいることで学べることのほうが今の自分には多いのかなって。ゆくゆくは亮平さんや窪田さんみたいになりたいと思っているので、その成長段階として今は学びを大事にしたいです。
■“うまい役者”にはなりたくない
――余談ですけど、『ぐるっと関西おひるまえ』(NHK総合・関西)みたいな素の自分で出る場のときはわりと大人しい感じですよね。Instagram Liveではあんなに自由なのに(笑)。
小林:『ぐるっと関西おひるまえ』は緊張していたのもあります(笑)。あと役のイメージもあるので、変なこと言わないようにしようと気をつけていたら、オンエア観た人から「別人みたいだった」って言われてびっくりしました(笑)。
――お調子者っぽいのに、シャイっていう。たぶんキャーキャーされるのもあまり得意ではないような。
小林:得意ではないです(笑)。人前に出るのが得意ではないので、たぶんキャーとなってる場に出ていったらニヤニヤしちゃうというか、恥ずかしくてカッコよく振る舞えないんですよ。ありがたいことなんですけどね。そんなふうに高い熱量を持ってくださる方がいるから、作品を観てもらえるし、盛り上がるし。だから、応援してもらえることにはめちゃくちゃ感謝しています。
――小林さんのお人柄を読者に知ってもらうためにぜひ出したいエピソードがあって。コンビニにお酒を買いに行ったら年齢確認を求められて、身分証明書を持ってなかったから、Wikipediaで年確をクリアしたっていう(笑)。
小林:そうそう。お酒は買って帰りたいから、どうしようってなって。あのときはちょっと有名人になって得したなと思いました(笑)。
――お芝居だけじゃなく、そういう人柄含めて魅力的だなと思っています。
小林:周りからはよく子どもだって言われています(笑)。でも、僕がこれまで現場でお会いしてきて、尊敬する方ってみんな少年っぽさを持ってるんですよね。お芝居に対しては真面目だけど、普段はちょっと抜けてて愛されやすいっていう。だから僕も変に大人になるより、今のまま少年心を持って、正直に生きていったほうが周りも楽しいし僕も楽しいのかなって。少年心を忘れずにいたほうが、役にもスッと入っていきやすいですしね。なので、このスタイルを忘れず貫き通して、どこかでガツンとゲンコツを喰らったら改めようかなと思います(笑)。
――そんな小林さんが考える“いい役者”とは?
小林:僕が目指す“いい役者”は、簡単に言うと魅力的な人。お芝居の面で言えば、ずっと見ていたくなる、ずっと聞いていたくなる、その人の醸し出す雰囲気にずっとふれたくなる人が“いい役者”かなって。“うまい役者”と“いい役者”は別だと思っていて。“うまい役者”にはなりたくない。“うまい役者”のほうが外さない芝居をする確率は高いと思います。でも、確率は低くても、強烈に“いい芝居”をする役者もいて、僕はそういう役者になりたい。絶対に小手先で芝居をやらないように。ちゃんと役を生きられる役者でいたいです。
――では最後に。2025年はどんな年にしたいですか?
小林:ありがたいことにたくさんお話をいただいているので、その一つ一つを全力で頑張って、観ている人に「いいドラマだった」と言ってもらえる作品を作っていきたいです。あまり遠いことは考えず、とにかく目先のことを一生懸命頑張っていけたら。
(文=横川良明)
