横浜FCで4年目を迎えた伊藤。高いシュート技術はもちろん、前線からの献身的な守備も魅力だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 ある種の違和感を覚えた。その練習で、そこまでタイトに守備をする必要があるのか、と。

 開幕を数日後に控えた横浜FCのトレーニング。人数とスペースを限定したミニゲーム形式のメニューで、攻撃側と守備側に分かれ、ビルドアップから縦パスが入ると、攻撃側が流動的に動いてゴールを目ざす。

 どちらかと言えば、攻撃側がいかに相手の守備を崩すかに主眼を置いた練習ではないか。実際、FWの伊藤翔は「守備がめちゃめちゃ頑張っちゃうと、攻撃にならない。ある程度、攻撃でやらせようか、みたいなのはあったと思う」と話す。

 縦パスが入ってからが本番。ビルドアップに対しては、そこまで“本気”の守備はいらないはず。だが、伊藤は高い強度で相手に寄せた。最初のパスを遮断する場面もあったし、身体を投げ出して縦パスを止めようとする姿もあった。その時はボールが足の間をすり抜けて、ピッチを叩いて悔しがった。

 このメニューの意図を理解していないわけではない。それでも伊藤は「別にそこは関係なく、とりあえずちょっと行こうかなっていうのはあった」と明かす。

 なぜ、“守備をめちゃめちゃ頑張った”のか。少なからず危機感を募らせていたのかもしれない。もっと引き締めたほうがいい。テンションが緩いままではダメ。降格の憂き目に遭った昨季を思い出す。「散々、J1で痛い目を見て、その教訓を活かしているのかな」と不安にもなる。
 
「あとは、今週から始まるんだよ、というのもあった。キャンプの最初のほうならみんな、そんなに身体もできていないからいいかもしれないけど、今はもう、やらなきゃいけないよ、やるよっていうのを、一応メッセージを込めた」

 攻撃でも守備でも、高いインテンシティを保つのは楽ではない。守備に回った時に、伊藤がある程度、相手に自由を与えても、誰も文句は言わないだろう。だが、35歳のベテランは手を抜かなかった。一生懸命に守備をした。

「なんかおっさん、やっているな、みたいな(笑)」とおどける伊藤は、「でも、そういう時のためのベテランだと思うから」と自身の立場を考えている。

「言葉でみんなを助けるのはもちろん大事だし、あとはプレーで示さなければいけない。そこは別にサッカーが上手い・下手とかじゃなくて、意識の問題というか、気持ちの問題じゃないですか。あれを1回1回やると、けっこう疲れるけど、ちゃんとサボらず、やっていくんだよっていう。で、今年はちゃんと勝つんだよっていうのを示したかった」

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 今に始まったことではないが、ベテランとして、様々な経験をしてきた者として、チームのために何ができるかを模索し、実践している。

「良い意識の人たちといると、良い空気が流れていく。オフの時のトレーニングで、サッカーはもちろん、他の競技の代表クラスの選手もたくさんいて、そういう人たちは意識も高いし、自分のやることに集中しているというか、本当に良いトレーニングを自分もできたと思った。もちろんキツいこともやっているんだけど、すごく良いトレーニングをしたなっていう充実感。同じトレーニングでも、一緒にやる人でだいぶ違うから」
 
 だから、何気ないプレー1つにもこだわる。

「チームが充実感を得られるように。俺が厳しくやって、それがチームに伝染して、良い空気で、良い職場になっていけばいい。そうしたら成果も上がっていくだろうし。そういう良い環境を作りたい。それができるだけのコンディションに俺もなったし」

 2月24日、ホームで迎えるレノファ山口FC戦で、横浜FCの24シーズンは幕を開ける。J1復帰が最大のミッション。伊藤は「本当に自分は、マジで今年は勝ちたいから。なんとしても勝ちたい。だからもう、やれることはやる。あの時、やるべきことがあったでしょってならないために。今からやらなければいけない」と表情を引き締めた。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)