今季からプロとしてプレーしている高吉。北九州の勝利に貢献したい。写真:©︎GIRAVANZ

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 苦悩と希望の狭間で、先天性多合趾症と戦うフットボーラーにスポットを当てた企画だ。身体的なハンデをものともせず、逞しく生きて、Jリーガーになるという夢を叶えた高吉正真(ギラヴァンツ北九州)の心情に迫る。今回は前編だ。

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 大事に、大事にお腹の中で育ててきた命がついに誕生する。大きな泣き声とともに姿を現わした赤ちゃんを見た瞬間、自然と涙が込み上げてきた。これ以上ない感動。しかし、それからしばらくしてある事実に気付く。赤ちゃんの片方の足を見ると指が6本ある。なぜ、五体満足の子に産んでやれなかったのか。娘の二つにわかれている小指を見ると、いつもそう思ってしまう自分がいる。これは、ある友人の体験談だ。

 先天性多合趾症とは、手足の先天異常のことで、簡単に言うと足の指が2本以上にわかれている症状を指す。原因不明で、1000人から2000人にひとりの割合でなるとされており、手術をすれば治るが(1歳以上から)、そう単純な話ではない。

 我が子にメスを入れるのだ。親にとっては難しい決断になる。何かあったらどうしよう、この年齢で体力的に手術に耐えられるのか、大きな不安に襲われるなかで、先天性多合趾症と向き合わなければならないのはひと言でしんどい。

 ただ、そうした困難を乗り越えてJリーガーになった選手がいる。ギラヴァンツ北九州の高吉正真だ。  

 今季大卒1年目のMFは開幕前、「私は先天性多合趾症(センテイセイタゴウシショウ)という生まれつき、足の指が6本ありました。私が今悩んでいることは、スパイクが合わず痛みを抱えながらプレイをしていることです。どなたか、足の幅が広くても履けるスパイクを知っている人がいれば、教えていただきたいです」と、SNSでそう発信して注目されたプレーヤーである。

 どんな想いで、このメッセージを送ったのか?

「正直、そういうことをやるつもりはありませんでした。ただ、本当にスパイクに困っていて、『こういうもの(SNSでの呼びかけ)をやってみても良いですかね?』と先輩に相談したら『まあ、良いんじゃないか』と後押しされて。それで決意しました」
 
 高吉本人に抵抗がなかったと言えば、嘘になる。

「SNSで発信したところで、『だから、何?』と反応される恐れもあります。嫌な言葉を投げかけられるかもしれないなとも思っていました」

 ただ、それは杞憂に終わる。「いいスパイクを紹介します」など温かいメッセージが届き、高吉は感動した。

「日本人の温かさ、SNSの拡散力の凄さを改めて感じました。それで今、自分は救われて、スパイクも見つかりましたし、関わってくれた皆さんにとても感謝しています」
 
 今こそJリーグでプレーしているが、プロになるまでの道のりは決して平坦ではなかった。先天性多合趾症と付き合いながらプロを目指すわけだから、そこには間違いなく困難があった。

「この症状を理解したのは小学生ぐらいです。当時は(どんな靴を履いても)そこまで気になりませんでしたが、中学生になると普通のスパイクも靴もサイズが合わなくなって」

 好きなスパイクも履けない。高吉はそんな不満を両親にぶつける時もあった。

「当時憧れていた選手がクリスチアーノ・ロナウドで、ロナウド・モデルのスパイクを履きたかったんです。両親に『サイズが合わないから、これにしなさい』と言われても駄々をこねて…」
 
 両親は両親で苦悩を抱えていた。高吉の証言によればこうなる。

「サッカーの試合に出ている時も自分だけスパイクの形が違うわけです。だから、両親は『これを見て他の人はどう思うだろう、他の保護者の方はどう感じているのだろう』と心配しながら見ていました」

 ただ、高吉には“心強い味方”がいた。

<後編に続く>

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

<選手プロフィール>
高吉正真(たかよし・しょうま)
2000年8月25日生まれ、神奈川県出身。176センチ、70キロ。川崎U-18育ちで、2023年に北九州に加入。地上戦、空中戦ともに強い屈強なボランチ。守備的なポジションならどこでもこなす器用さも魅力のひとつだ。

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