事故物件メリットとは?賃貸や投資で積極活用する人が増加する背景|テレ東プラス
事件や自殺、孤独死が起きた住居は事故物件と呼ばれ、住むのを回避する人が多い。そのため販売価格や賃貸料が安く、最近では積極的に活用する人が増えているという。
「テレ東プラス」は、事故物件を専門に取り扱う「成仏不動産」事業を手掛ける「マークス不動産」の有馬まどかさんを取材。事故物件において発生しがちなトラブルや、あえて選んで住むのはどんな人かなど、話を聞いた。
※前編はこちら!
▲「マークス不動産」の有馬まどかさん不動産会社が隠したことでトラブルに
――「事故物件だと知らずに入居してしまった」というケースは、多いのでしょうね。
「一般的に事故物件とされる要素は、ある程度は共通認識があるものの、定義や線引きが曖昧な点があるなど、以前は告知義務の基準も明確ではありませんでした。2021年10月に策定された国土交通省のガイドライン(以下、ガイドライン)によって、賃貸の場合は事案の発生から概ね3年。売買契約では経過期間に関係なく、買主に告知しなければならないと明文化されたので、今後はそうしたトラブルが減っていけばいいですね」
――やはり隠していたことが発覚して、トラブルになるのですね。
「現在は売買物件に特化している上、『成仏不動産』は事故物件を専門に扱うため、当社で問題が起きることはないですが、一般的にはそうですね。『知っていたら、契約しなかった』となるのが、ほとんどだと思います。
仲介業者などが告知せず、事故物件であるのを隠して契約しても、かなりの確率で発覚するのではないでしょうか。特に近隣住民の方は近所で起きたことで、事情をご存知です。ご契約者様が入居されて、ご近所付き合いをするようになる中で、『あんなことがあった物件に...』という話から、知るケースが多いと聞きます」
――物理的な不具合がなくても、精神的な問題で簡単に割り切れないでしょうし、係争事案などのトラブルになるのでは?
「情報を隠され、知らずに契約したことから、『知ってしまった以上は、住めない』と、引っ越しにかかる費用などを損害賠償請求するケースは、少なくないようですね。
知らずに契約してしまう場合に加え、事故物件であることを気にせず、むしろ積極的に探している人が見つけにくい状況があり、『成仏不動産』はそうした問題を解決することも目指しています。そのため昨年、一般の方と不動産業に従事する方それぞれに、事故物件とガイドラインに関する意識調査を実施しました」
事故物件と告知しないスタンスの事業者も
――どういった調査結果が出たのでしょう?
「まず不動産業の従事者では、ガイドラインを『詳しく知っている』と回答したのは8.2%。『ある程度は知っている』『聞いたことはある』が合わせて47.2%で、『知らない』が44.6%でした。知らない人が多い印象かと思いますが、別の質問で事故物件を取り扱った経験を聞いたところ『ない』が77.5%で、そもそも事故物件に関わらない不動産関係者が多いです。
事故物件を『扱わない』と決めている事業者に限らず、『成仏不動産』事業を本格的に始める前は、当社も年に1件あるかないか...といった状況でした。勉強不足ではなく、関わる機会がないというのがほとんどだと思います。だから、同業者に『これは事故物件になるのか?』という相談や確認のご連絡をいただくこともありますね」
――事故物件に関する告知については、皆さんどう考えているのですか?
「『事故物件の告知についてどのようにすることが望ましいか?』という質問には、『丁寧に告知すべき』が60.1%で最も多く、次いで『必要最低限の情報のみ』が30.0%。『告知しない』『聞かれたら答える』がいずれも4.9%で、合わせると9.8%。
売買物件に関しては、告知内容を聞いた質問で『告知しない』と回答した人が9.7%で、ほぼ一致。残念ながら『隠していた』と言われても仕方ないスタンスの方が、1割近くいるとわかりました。
ただし、『丁寧に告知すべき』と考えている人が過半数で、告知方法や告知内容もしっかりした形を想定している結果が出ており、きちんとした事業者であれば、事故物件にありがちなトラブルは起きないと感じます」
―― 一般の方は、事故物件をどう感じているのでしょう?
「『事故物件に住めますか?』という質問に、『いいえ(住めない)』と答えた人は62.9%。『事故の内容次第』が23.8%、『物件の条件次第』22.2%で、内容や条件による方が計46.0%。複数回答なので、『住めないけど、内容や条件次第かな』と考える方も、一定数いるとわかる結果です。また、『はい(住める)』と回答した人も3.9%いらっしゃいました」
▲「成仏不動産」では事故物件のご供養も実施している 画像提供:成仏不動産
――「内容や条件による」は、死因や物件の現在の状態の他、一般的な条件と同じ、築浅、駅近や周辺施設、家賃などかと思いますが、他に大きな要素はありますか?
「経過年数です。『事件や事故の発生から、どれくらい経てば住めると思うか?』に対する主な回答は、『3年』が11.1%、『5年』が38.9%、『10年』が42.6%でした。時間が経過することで、抵抗感は薄れるようです」
事故物件のメリットとは?
――経過年数で抵抗感が薄れるのはわかります。そもそも狭い日本で、「過去に人が死んでいない土地が存在するのか?」ということも。宅地になるような人が集まる場所では考えにくいですよね。マンション建設で遺跡が出てくるケース、歴史をさかのぼると「古戦場だった」、「首塚だった」という土地もあります。
「事故物件と呼ばれる状況が過去に起きたかどうかは不明でも、実際問題として、『誰も亡くなった方がいない土地』というのは、相当難しいでしょうね。
病気や不慮の事故によってご自宅で亡くなられた際、看取った方がいる、すぐに発見された場合は、事故物件にはなりません。そうした線引きが曖昧になる要素もありますから、普通の物件と同様に事故物件も選択肢の一つとして考えていただけるようになればと思っています」
▲特殊清掃や片づけが完了した状態(左)。リノベーションを終え、おしゃれな空間に(右) 画像提供:成仏不動産
――複数回答で一部重複する人も含まれると思いますが、「住める」と回答した人が3.9%で、「内容や条件による」が46.0%。合計するとほぼ半数の人が、“事故物件を選択肢の一つとして、考えられる”ことになります。これは意外と多い印象ですよね。
「元々、『気にしない』方は一定数いて、価格の安さから積極的に事故物件を探される人もいます。以前ですと20〜30代の若い方か、年齢が高めの方が多かったのですが、最近は年齢や性別に関係なく、通常の物件と横並びに、事故物件を選択肢の一つとして検討する方が増えています」
――やはり、価格のメリットが大きいのでしょうか。
「同じ条件の場合、一般的には2〜3割ほど安い。しっかり対応して、完全に生まれ変わった物件でも、多少は相場より安い価格になりますね。当社は元々、内装や物件に合ったリノベーションにこだわりがあり、『成仏不動産』でもそのノウハウは活かされています。そのため、価格が通常の相場に近くても、選ばれることが少なくありません。
投資目的で不動産を取得される方の場合、調査でもわかる通り経過年数によって、抵抗感が薄れることから、確実に価値が上がる物件として、事故物件を購入される方もいます」
――経過年数で生じる築年数分を差し引いても、「底値買い」できるメリットは大きそうです。逆に、“事故物件を選ばない方がいい人の条件”はありますか?
「購入者ご本人は気にしなくても、一緒に住まれるご家族に一人でも気にされる方がいたら、選ばない方がいいです。普通の物音を心霊現象と想像してしまうなど、精神的な負担が生じる可能性が少しでもあれば、おやめになるべきかと思います。
『周囲にどう思われるか?』など、人目を気にする方も避けられた方がいいかと。マンションですと、事故物件が発生したことで『物件価値が下がった』と感じる住人の方もいますし、近隣に『よく住めるね』などと言う方がいる場合もあります。
もちろん、これまでの物件で心霊現象が起きたことはないですし、トラブルもありません。しかし、売主としては、無理や我慢をして買っていただくのは、メリットがないと考えます。通常の物件同様、安心して住めることを条件に選んでいただくことが大切ですね」
【取材協力 マークス不動産】
2016年創業の総合不動産会社。「世のために。人のために。」「不動産の可能性を追求し 世の中の困りごとを解決する」の理念を掲げ、事故物件の売買を専門に取り扱う「成仏不動産」以外にも、再建築不可物件の相談ができる「再建築不可救急隊」、離婚後の不動産売却を中立な立場で査定する「中立不動産」ほか、個性的な事業を展開している。
(取材・撮影・文/鍬田美穂)
